紫呉葛
2024-10-07 00:17:41
3594文字
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【オキラス】同じ武器を使うに至った小話

捏造の時間軸:アーキバスがルビコン3にやって来て基地を作り出し、ラスが第4隊長になって間無し。スティール・ヘイズが違う武装をしていた前提の話。オキ視点

助け合いの精神、というやつだ
其奴は笑顔で言いのけた
その言葉は本心なのだろう
その明るさに目が追ってしまう


帰投したオキーフがバレンフラワーのコックピットから出てきた。
周りの整備士達が走り回る中、一人流れに逆らうようにその場を離れる。
今回はとんだ痛手を被った。
交戦中にバレンフラワーのブースターの一つが破壊された。
幸い他のパーツには影響は無く取り替えれば直る状態だった。だが、取り替える為の物が無い。
輸送船の経路が封鎖機構に押さえられているらしく、届くまで時間がかかる。
他のブースターすらも無い。最前線には予備どころか必要な物すら揃っていない。
次の出撃は何時になるやら。
歓迎しない状況だ。別企業の進出と解放戦線の抵抗が日に日に激しくなっているともなれば。
戦場に直接赴かなくとも支援は出来る。かの計画の準備も出来る。だが、基地自体が維持出来なくなれば意味がない。
(うんざりするが、無い物を嘆いても状況は変わらん)
上からの嫌味が付属するであろう報告に向かおうとして、
「第3隊長殿」
一人の青年の声がオキーフを呼び止めた。
「なんだ、第4隊長」
第4隊長‐ラスティがオキーフの前で足を止め、敬礼をする。
ヴェスパー部隊の隊長になって日が浅い彼とは顔合わせ以来数度しか言葉を交わしたことがない。
真っ直ぐ向けてくる視線は、僅かに獲物を見定める鋭さが浮かんでいる。
「先の戦闘でブースターを破壊されたとお聞きしました。代替品も無いとも。そこで私から提案があります」
ラスティの言葉にオキーフは僅かに目を細める。
やはり耳が早い。ブースターの破壊は周囲にも話が入っているだろうが、代替品の事は帰投後の検査中に明らかになった話だ。
「聞こう。だが、そのわざとらしい物言いはやめておけ。前線では必要だが、お前の場合状況によっては士気を下げかねん」
ラスティは「どうやら不評のようだ」とふっと口角を上げて笑顔をみせる。
まるで気の合う友のように友好的に接してくる彼に、オキーフは冷徹な眼差しを向けたままだ。
「私からシュナイダーに頼もう」
バレンフラワーのブースターはシュナイダー製で、ラスティはシュナイダーと繋がりがある。
アーキバス経由だと申請から到着まで煩雑な手続きや検品の時間がかかる。だが、シュナイダーからの直送ならアーキバスとは違う経路を使用し最短で納品が可能だ。
しかもシュナイダーが支援するパイロットからのオーダーともなれば無理を押してくるだろう。
オキーフは口を噤んでいる。
まだラスティという男を掴みきれてはいない。
「お互いそれほどの付き合いは無いが」
有用性をアピールしに来たようには思えない。調べた限り、器用に物事をこなす奴だ。
「貴方に媚びなど通用しないだろう?」
こちらを探りつつではあるようだが、食らいつき方が甘い。本命は何処だ。
「私はただ、良き同僚の手助けをしたいだけさ」
オキーフが微かに目を細めた。
「良き同僚となった覚えは無いがな」
「貴方がそう思うなら、これからなるのはどうだ?私は、貴方という人間を知りたい」
ラスティがからからと楽しそうに笑う。
オキーフは頭が痛むように顔をしかめる。
彼の言葉に己でもはっきりと解る程に琴線が震えた。
彼に対して危機感さえ覚えた。
必要以上に関わりたくない。だが、きっとそうもいかなくなるのだろうと嬉しくない予測も浮かぶ。
「ラスティ」
これ以上返事を延ばすのも良くはない。
「領収書は俺宛にしろ」
オキーフの言葉にラスティは快諾の声を返す。


ラスティを目で追っていた。
戦い方を、基地での振る舞いを、隣にやってきた時を。
危なっかしい奴、というのが第一印象。戦い方も言動も、あえて踏み込むことで有利に立つ。
点を見定め、狙い、的確に当てる強さも持っている。
次第に目が離せなくなっていた。
意図の片鱗を、人となりを、在り方を知る程に彼の『人間らしさ』に少しずつだが惹かれていた。
そんな己に心底呆れる。
計画を反故にする気か?と。
根底がひっくり返りそうで、吐き気がする。
それでも、日を追って廻る花を誰が止められるだろうか?


一人、格納庫でモニターを睨むラスティを偶々オキーフは見かけた。
そのまま通り過ぎても良かったのだが、足は意に反して止まってしまった。
飄々と物事をこなし、出来ないことは出来る奴に手際よく割り振る手腕もあるのに、珍しくひとりで唸っている。
「何をしている」
「オキーフ戦い方を模索していてね」
半身を引いてラスティが画面上のアセンブルとステータスを見せる。
スティール・ヘイズと名付けられたACは、パイロットがシュナイダーの所属故に揃いも揃ってシュナイダー製の機体と武器構成。シュナイダーに無い分はアーキバスの製品だ。
「レーザーショットガンとパルス系のハンドミサイル・キャノン・シールドランチャー、ジェネレーターはアーキバスの還流型か
速度は出るがEN負荷が高いな、と、オキーフは口元に手を当てる。
(此奴には向いていない)
恐らく、ラスティ自身もこの構成にはしっくりきていないのだろう。
オキーフはちらりとラスティを見やる。
画面を睨みながらずっと戦っているのだろう。
(どうしようも無いな。このままで行くのならば)
オキーフはスティール・ヘイズに視線をやり、そして一つ息を吐いた。
放っておくのが立場上の最善。そして、提案するのが『人』としての最善。
「次の出撃でバレンフラワーのバーストライフルを持って行け」
オキーフの申し出にラスティは瞳孔を引き絞る。
「バーストライフルを?」
画面上でアセンブルを変更すると全体的にステータスが下がると表示される。
それにBAWSの実弾銃だ。
それをいきなり実践で使えと言われてラスティは困惑を隠しきれない。
「上官命令だ。試して来い」


武器を貸して出撃をしたラスティが帰投して、真っ先にオキーフの元にやって来た。
「オキーフ!」
「戻ったか」
傍まで寄ってくるラスティは、いつもより一歩近い。
「貴方に借りたあのライフル、あれは確かに使いやすかった」
努めて冷静を保とうとしているが、目の輝きも声の抑揚も興奮を滲ませている。
「そうか」
やはり見立ては間違いなかったようだ。
「感謝するよ。オキーフ。スティール・ヘイズもいつもより軽快に走ってくれていた。可能ならずっと使い続けたいくらいだ」
余程快適だったのだろう。ラスティは感触を思い出すように己の手のひらに視線を落としている。
彼にはしがらみが多い。
「そもそもお前にあの武器構成は向いていない」
オキーフの指摘にラスティは目を丸くする。
「相性の問題だ。シュナイダー構成でもお前は充分な実力を出している。だが、スティール・ヘイズの性能とお前の腕の良さを考えれば別の武器を使う方が良い。首席隊長にも言われていたんじゃないか?」
身に覚えがあるらしく、ラスティは苦笑いになる。
そう簡単に替えられないのは想像に容易い。ヴェスパー部隊の隊長になったからと言っても単独では通せない意見もある。
「あの武器に替えておけ。Baws製なら俺も使っている。申請も通るはずだ。アーキバスの決定ならばシュナイダーも口は出さんだろう」
「オキーフ?」
「手続きはこちらでやっておく。いい機会だ、アセン一式見直しをしろ。他人の拘りで首を絞められるのはお前の方なんだ」
テキパキと端末操作で購入・使用の申請とアセンブル候補を用意していく。
「ま、待ってくれオキーフ!幾ら何でもやり過ぎだ!」
ラスティがオキーフの腕を掴んで操作を止めさせる。
オキーフ自身も、手を出しすぎている自覚はあるし、世話を焼いてしまう己に呆れているし、だからといって引っ込むつもりもなかった。
彼の灯火を途絶えさせたくない、と、思ってしまったから。
「何故そこまでしてくれるんだ?貴方は気付いているはずだ。私の背景を」
ラスティが絞り出すような声で問う。
オキーフは言ってのける。
「『良き同僚の手助けをするだけだ』」
弾かれるように、ラスティは瞳を引き絞る。
そんな彼に、オキーフは僅かに口の端を吊り上げる。
「口枷を嵌められたまま死ぬつもりはないのだろう?」

日を追って廻るのが花の常ならば。
日の光を見守るの役も大差ない。

「フィーカに付き合え、アセンブル構成の指導をしてやる」

エンド

スティールヘイズのシュナイダー構成。
【フレーム】
NACHTREIHER一式
【腕武器】
WUERGER/66E
PFAU/66D
【肩武器】
EULE/60D
KRANICH/60Z
【ブースター】
ALULA/21E
【FCS】
VE-21A
【ジェネレーター】
VP-20D