紫呉葛
2024-05-04 23:44:52
1068文字
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【スティとラス】ラスティとスティールへイズと独り言

極薄なスティラス風味。ほんの少しの時間、ほんの少しだけラスティが独り言を言う話。
スティールへイズに自我有り。捏造設定増し増しの小話。

「行こうか、スティールへイズ」
ラスティは単機で出撃していた。
移動中の部隊が襲撃されたとの連絡が入ったらしい。
機動力のあるスティールへイズで先行しろとのお達しを受け、空を駆ける。
整備に抜けは無く、銃弾も満タン、機体のコンディションは万全。
一つ欠けていることがあるとすれば、パイロットであるラスティにほんの少しだけ心の曇りがあること。
解放戦線の一部の者達による無計画で無謀な行動とそれを諌める役割。
淡々と対処するだけの冷静さは持ち合わせているが、楽しいものでは無い。
さっさと済ませよう。
獲物を狙う猛獣のように鋭い眼差しで前方を見ていた。

「やってくれたようだな」
ラスティが言葉を零す。
目的地に動く者は居なかった。
立ち上る煙、荒れる火花、横たわる機体の残骸達。
レーダーに機影は確認できなかった。
仲間からの連絡もなかった。
考えられるのは、誰かが戦い立ち去った。それも、企業には関わっていない者。
脳裏に、高く飛ぶワタリガラスの姿が思い浮かんだ。
しかしそれ以上追求することは必要無いだろうと切り上げた。
襲撃者が倒されていることを知らせると、こちらもまた追求不要とのことで、即帰還を言い渡された。
通信を切り、ラスティはコックピットの天井を見上げる。
「ただの散歩になってしまったな、スティールへイズ」
独り言を、声にする。
何処かの言葉で、『時には最大の力を発揮しておくべき』とあるそうだ」
まるで悪くて楽しい事を思いついた用に、笑う。
「最速で帰ろうじゃないか。なぁ、スティールへイズ」

ルビコンの空を駆けるスティール。
いつもよりほんの少しだけブースト速度が高かった。






《良かったじゃないか、ラスティ》
スティールへイズは独り言を浮かべる。
《君が手を汚さずに済んだ》
中に乗せている人の顔を見ることは出来ない。だが、気持ちは伝わってくる。
乗り手の強さも、悲しさも、嬉しさも。
だから君がどんな人間なのかを知っている。
《君との散歩は悪くない、むしろ嬉しい》
戦いのための道具でしかない俺が、こんなことを言うのは滑稽かもしれない。
乗り手を想う気持ちは決して届かないと理解している。
だが、乗り手が機体を案じるように、機体が乗り手を案じることだってあるだろう。
《すぐの帰投は残念だが、君に俺の本気を見せようじゃないか》
滅多にない、引き金を引かない時間。
何にも縛られず、自由に飛ぶことが出来る幕間。
《楽しんでくれ、ラスティ》

伝わらない言葉は、数値に変換される。

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