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紫呉葛
2024-03-28 00:32:33
2229文字
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【オキラス】ワーレンベルギアをお前に送る【ネタバレ含む】
意味不も含めて何でも許せる人向け。 オキラス。オキーフ視点。最期の言葉を言うに至るオキーフのちょっとした話。
色抜け地を向く寂れた花を
お前は知る必要は無い
在り来りな葉はくれてやる
埋もれた根も使えばいい
お前に贈る芽は無い
贈るつもりは無い
だが、枯れた花でも火は着くものだ
「今から出撃か?」
背後からの声にオキーフはゆるりと視線を向ける。
扉に手をかけているラスティが声をかけてきた。
「あぁ」
とオキーフは手短な返事をする。
ラスティは歩み寄り、人の顔に数秒視線を落とす。
「仮眠を取ると言っていたが
……
どうやら足りていなさそうだな」
「いつものことだ」
「それでも、無茶はしないでくれ」
「
……
その言葉、そっくりそのまま返すぞ」
「第三隊長殿から激励の言葉をいただけるとは」
茶化すラスティにオキーフは呆れた視線を送る。
進める深度が増えるに比例して番号付きの出撃も多くなった。
競合企業に追いつかれまいと慌ただしさが増している。
「戦友が道を切り開いてくれたんだ。負けていられないさ」
競い合う相手のことを思い楽しそうに笑っているラスティ。
そんな彼を見るのは嫌いじゃなかった。
次に彼の赴く任務を知っている。
強さは知っている。
だが、それでも生きて帰れないかもしれない。
「戻ったら共にフィーカでも楽しまないか?」
ラスティはいつものように気軽さを含んだ言葉を贈ってくる。
「お前の奢りならな」
オキーフもいつものように気怠げな物言いで返す。
「そう言いながらも貴方は奢らせてくれないじゃないか」
ラスティは大袈裟に肩をすくめる。
もう時間のようだ。
片手を上げて、彼は踵を返し退室した。
人間らしさを持って生きている、そんなラスティから目が離せなかった。
大義理想をひた隠し、時折本音を出してきて、付かず離れず懐いてくる。
他愛の無い会話をする為だけにわざわざ部屋にやって来る。
いつしかそれが、自分にとって憩いになるとは思いもしなかった。
気付いた時には遅かった。
少し懐を大きめに開けすぎて、立ち寄る狼が身を預けることが当たり前にすらなっていた。
わかっている。
俺は彼奴に好意を抱いている。
残っていないと思っていた、感情だった 。
枯れた男に好かれるなぞ、相手にとっては嬉しくないものだろう。
いや、ラスティのことだ。
好意を素直に受け取るだろう。
恋愛ではなく、友愛として。
それでも良いと思えれば良かったのだが。
それすらも切り捨てる必要がある。
諜報を担う者として、あの計画に関わる者として。
しがらみを作る訳にはいかない。
失いたくないモノほど遠ざけなければならない。
距離を保ち本心を隠すことは苦にならない。
「背を預けられる同僚」の立ち位置に徹するだけで充分だ。
だから
今此処に、彼が居なくて良かったと心底思う。
レーダーに表示されたのは独立傭兵の名前。
あれが狼を唸らせる「レイヴン」か。
遭遇してしまった以上、相対することを選ぶしかない。
死ぬつもりは無い
――
殺せば彼は悲しむだろう。
生きて帰すつもりもない
――
こちらの事を、オールマインドの計画を知ってる以上、止める為にも殺すしかない。
操縦桿を握る指に力を込める。
「お前は何をしようとしているのか 分かっているのか?」
撃破対象の戯言など面白くないだろう。
敵の忠告なぞ煩わしいだけだろう。
だが、『人間』である『お前』に、どうか聴き入れて欲しいとさえ願った。
聴こえる声を自分の意思と誤認しているのなら尚のこと。
もう殺すしかないとしても。
それにどちらにせよ最初から、渡鴉が此処で終わりを迎えても生きてリリースを成しても、狼を悲しませる結果には変わりないじゃあないか。
ならば、お前を殺すという汚れ役を買ってでも生きる方を選ぶ。
悪いが、そう簡単に譲れない。
「ルビコンには
…
うんざりすることが多すぎる」
幾度となく『戦友』とやらの話を聞かされた。
その強さを、楽しそうな声で。
その曖昧さを、思い詰めた声で。
抱いた感情がどれだけ些細で、しかしどれだけ必要なものだったか。
「お前も そうは思わないか」
何処かで期待していたのかもしれない。
死ぬつもりは無い、などと言いながら。
このまま鴉に食い殺されて、うんざりする世界を、伝えられない想いを、全て手放してしまいたい、と。
だからだろうか。
僅かに意識に綻びが出たようで、避けられなかった。
コアの損傷は内部にまで及んだ。
機体が動かない、腕も足も感覚が無い。
今すぐ脱出したとして、禄に逃げられない。
独立傭兵は確実にトドメを刺しに来る。
ならば、コアを棺桶に、いや、寝台にする方が良く眠れそうじゃないか。
要するにこれは
別に残すほどでもないログだ
漸く終わる
弔いに手向ける花にもならない徒花の
もういいだろう
二度とゴメンだ
遅かれ早かれこうなっただろう
違う道を選ぶことができなかったんだ
手は尽くした尽くしたはずだ
やはり
ルビコンはうんざりすることばかりだ
火花が散る。音が飛ぶ。
いよいよ黒い帳が下りてくる。
いつだったか、ラスティと話した事を思い出した。
俺の答えは、先に出してやる。
届かなくていい。受け止めなくていい。
高く跳ぶ為に踏み潰していけばいい。
これはただの未練、人間としての欲でしかない。
赤色を削ぎ落とし並べた花に火の手が上がる。
口にすることのなかった言葉の代わりに。
お前に送る。
『先に行くぞ、ラスティ』
END
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