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紫呉葛
2024-03-12 00:46:51
2418文字
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【オキラス】藤袴は置いてきた【超捏造設定・ネタバレ含む】
何でも許せる人向け。 オキラス風味のラスティ視点。ラスティが弱音を見せるちょっとした話。
何度も同胞をこの手で屠ってきた
聞き覚えのある声を幾度もかき消した
成すべきことの為に
故に
今更何を躊躇うことがある?
狙いを外す資格も無いのに
受け取った指示をなぞれば排除対象に載る『解放戦線』の文字。
瞳孔を揺らすことなく読み進める。
出撃の時間、場所、任務内容を頭に入れながら計画を組み立てる。
ヴェスパー部隊の1人として。
「『V.IV ラスティ』
…
か」
この番号を与えられて随分経つのに、時々違うモノのように感じる。
偽り方がまだ未熟なのだろうと今は一旦区切りをつけて、資料を読み進める。
ある項目で視線が止まる。
珍しいこともあるものだ、と。
だから出撃前に、直接会い行った。
「貴方が僚機とは心強い」
愛想の良い笑顔でラスティは言った。
「それは何よりだ」
無愛想な無表情でオキーフは言った。
「だが珍しいな。貴方が直接出るなんて」
率直な感想を投げる。真っ直ぐ相手を見ながら。
「他に出られる奴が居なかっただけだ。お前一人でも充分だろうが
…
」
「私はありがたいと思っているさ。第三隊長殿の戦いを間近で見られるチャンスだからな」
勝手に言っていろ、とオキーフが僅かに細めた目で訴えていた。
これ以上のお喋りはお断りらしい。
一定距離以上を踏み込ませてくれないのはもどかしいが、お互いの立場を考えれば仕方の無いことだ。
出撃準備の時間でもある。
「後で集合地で」
と、ラスティが言うよりも先に。
「隠すならもう少し自然にやれ」
と、オキーフが先に釘を刺す。
針先のように鋭い視線が嘘のほつれを告げている。
諜報を担う彼の観察眼には敵わない。
探った所で何も掴ませてはくれない。
ラスティは両手を上げて降参を示す。
「すまない。疑うつもりはなかったんだが、警戒は怠りたくなくてね。例え貴方には容易くバレるとわかっていても繋がりは見られたくないんだ」
見つめ返す瞳孔は僅かに引き絞られている。
「
……
関わるつもりはない」
一つ間を置いたオキーフの声には呆れも嫌悪も含まれていない。
「助かるよ」
お互いの立ち位置を崩さないで居てくれることに素直に感謝する。
「しかし敵わないな。貴方の前では隠し事が出来ない」
「お前は粗が目立つ」
「独学でね。努力はしているがなかなか難しい。貴方が指導してくれないか?」
誘うように強請るも、
「断る」
バッサリと切り捨てられた。
期待を裏切らない返答にラスティは笑った。
築き上げる。鉄くずと炎の塊を。
響き渡る。摩擦と破裂と終わりの音が。
氷上を滑るように敵の合間を駆け抜け、銃弾を叩き込む。
誰よりも速く駆け抜ける。
止まる訳にはいかない、と。
地上から爆煙を次々と登らせるスティールへイズ。
中距離を保ち射撃で追い詰め、不用意に近づく者をスライサーで叩き斬る。
スピードに翻弄され、体勢を立て直す為にと退いて固まる解放戦線の兵器達。
目の前に気を取られている相手に、上空で滞空しているバレンフラワーが散開するミサイルで広域攻撃を放つ。
複数の爆炎が上がった。
煙で周囲が覆われる中、スティールへイズの背後から狙いを定める一機のMTが居た。
銃弾は空からの一閃。
「助かったよ、オキーフ」
ラスティの軽快さのある音声がバレンフラワーの搭乗者に届く。
「そうか」
オキーフの無骨な音声がスティールへイズの搭乗者に送られた。
前線が押し広げられる。
順調ではあるが、相手も必死だ。
死を顧みず突撃する者、破損しても銃を向ける者、限界を振り絞り立ちはだかってくる。
それでも容赦なくスティールへイズは撃ち抜いた。
漸く経って静かになった戦場。
地に降りたバレンフラワーの元に駆けつける、スティールへイズ。
土埃を巻き上げ着地し、話しかけようとしたその時、一機MTが火花を散らしながら軋む音を掻き鳴らしながら立ち上がった。
ゆっくりと持ち上げられる銃は、スティールへイズを狙っている。
回線から響き渡る、解放戦線の者の叫び。
《くたばれ
……
略奪者め!》
その一言は、確かにラスティを撃った。
ずっと抱えていた『V.IV ラスティ』に対するささやかな違和感。
理解していたはずだ、今の私はそちら側だと言うことを。
わかっていたのに、いざ直接言われると、堪えた。
スティールへイズは動かず、ラスティは操縦桿を握ったまま。
MTの狙いはとうとうスティールへイズのコアに定められた。
静観していたバレンフラワーが右腕をMTに向ける。
銃声が響く。
硝煙を上げるのはスティールへイズの左手の銃。
爆炎が搭乗者の声をかき消す。
いつもの事だ。もう慣れた。
同じ志しを持ちながら、同じ道を歩めずに排除することになるのも。
守りたいモノから憎しみを向けられる事も。
『V.IV ラスティ』として甘んじて受け入れられる。
だが、時々思う。
「なぁ、オキーフ。私は、上手くやれているだろうか?」
遠くを見ながらラスティは問う。
「
………
」
前方を見ながらオキーフは何も言わなかった。
「
……
すまない。今のは忘れてくれ」
肯定も否定もしない相手だとわかっている。
だからこそ、つい零してしまったのだが。
「作戦時間に遅れが出てしまったな。早く戻って報告を上げないと上官殿の小言が増えてしまう」
少しだけ明るさの褪せた笑い声で、スティールへイズの向きを変える。
「
……
ラスティ」
オキーフが呼び止める。
その声は、彼がとてもうんざりしている時に聞く声音に似ている。
「報告が終わったら来い」
「フィーカのお誘いか?」
「特別授業だ。指導して欲しいのだろう?基礎を叩きこんでやる」
ラスティの瞳孔にゆっくりと光が差す。
「あぁ、よろしく頼む」
音声通信を切り、オキーフは一つ息を吐く。
「お前は失くすなよ、ラスティ」
『人間らしさ』を持ったままの彼を想いながら。
END
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