紫呉葛
2024-02-14 00:36:24
1567文字
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【オキラス】蓮華升麻と言いますか

いつもながら、何でも許せる人向け
オキラス風味。超短いバレンタインねた。贈り物をするだけの話。

律儀に扉を叩いて、少し間を置いてラスティは扉を開けた。
モニターの明かりに照らされて人影が浮き上がるオキーフに「やぁ」と声を掛けながら近寄る。
「何の用だ?」
もう湯気の立っていないフィーカを1口喉に流し込み、オキーフは気怠げな声で問う。
目を離せない訳では無い。ただの挨拶代わりの言葉。
最も、オキーフとしては必要な用件以外はお断りしたい所だが。
「貴方に渡しておきたい物があってね」
ラスティがオキーフの座る椅子の背もたれに手を乗せて身を屈める。
モニターと彼の間に手のひらサイズの包を差し込む。
視線を妨害するそれは見慣れすぎているパッケージであり見慣れていない表記のレーション。
チョコレート風味。
日付から、彼の性格から、大体の事は予想していたオキーフは僅かに目を細める。
「どうにか1つ手に入ったんだ。今日は親しい同僚に贈り物を渡す日なのだろう?」
ラスティの言葉に、オキーフは肯定も否定もしない。
その代わり、ようやく視線を上げてラスティの顔を見た。
向けられる笑顔の下にある隠し事に、こちらが気付いていないと思っているのだろうか。
例えわかっていたとしても応えてやるつもりは無い。
「軽はずみな行動はするな。足元を掬われるぞ」
警告する声音には呆れを混じらせる。
何せ半分は自分に向けた言葉でもあるのだから。そしてそんなこと、相手は気付いていない。
「肝に銘じておくよ。だが、根を詰めすぎないでください、第三隊長殿」
ラスティがオキーフの手にレーションを乗せ、気を許している相手に向けるように柔らかい笑顔を見せる。
そして、するりと身を翻し退室した。
オキーフは受け取ったレーションのパッケージを眺め、一つ息を吐く。
「食えない狼だ」


硝煙が風でかき消され、銃身の熱も冷めた頃。
出撃していたラスティの元に通信が入る。
オキーフからのもので、しかも部隊とは別の経路からの通信だ。
《何処に居る?》
繋いだ瞬間に問われた。
座標と帰還に向かう途中だと告げると、考えている様な間を空けてオキーフは静かにさらに問う。
《部隊長を狙撃したのはお前だな?》
その言葉にラスティは目を見開いた。
何故彼がそれを知っている?
確かにオキーフなら情報を辿って暗殺を行った者を特定することは可能だろう。
だが、今回はあまりにも早すぎる。
何せ撃ったのはつい数時間前だ。
返事をしないラスティに、オキーフは沈黙の中に置かれた疑問に解答する。
《残骸を別部隊が見つけた。使用された弾丸もな。抜き打ちのチェックが入る。お前ならこの意味が分かるな?》
内部の者への疑いが出たという訳か」
見通しが甘かった。
予定よりも早く発見された為に、外部からの攻撃と見せかけが崩れてしまった。
このまま武器に残された弾丸を調べられれば確実に気付かれる。
だが、実弾を補給出来る場所は無い。
俯き黙り込むラスティに、何も言わないオキーフ。
先に口を開けたのは
まだ渡していなかったな》
オキーフだった。
いきなり何を言いだしたのかとラスティがゆっくり顔を上げる。
モニターに座標が送られてきた。
一緒に送られてきた画像が倉庫の内装、棚、そしてマガジンと拡大されていく。
《『親しい同僚』に贈り物をする日なのだろう?欲しければ持っていけ。後は出来るな?》
努めて落ち着いた調子の声音でオキーフは告げる。
意図を理解したラスティの瞳に光が差す。
通信回線は微かな吐息を拾い、そして返事を待たずに一方的に切られた。
ありがとう、オキーフ」
ラスティは示された座標を目指してスティールへイズを加速させる。

ギシッと椅子を軋ませた。
机の上の未開封のレーション。
苦味強めの1杯を入れようと、空のコップを手にオキーフは部屋を出た。

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