紫呉葛
2023-12-19 01:00:29
1150文字
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【オキラス】赤 薔薇を添えるようじゃないか

意味不も含めて何でも許せる人向け。
オキラス。ラスティ視点。オキーフの最期の言葉を聞いたラスティのちょっとした話。

『先に行くぞ、ラスティ』

「ずるいな、貴方は」
ラスティは顔の左半分を片手で覆った。

―――

お互い目的の為に利用し合う。
それだけの関係だ。
いつ誰に首を取られるかわからない場所だ。
しがらみは少ない方が良い。
我々はただ、偽りの立場のまま、通り過ぎるべきなのだ。


いつだったか、その話をしたのは。

「最後の時に名を呼ぶ誰かはいるか?」
唐突にラスティが尋ねる。
「いると思うか?」
呆れ混じりの声でオキーフが返す。
予想通りの反応にラスティは笑い声を零す。
戯言に付き合いきれないと言いたげに視線を明後日に向けるオキーフに、構わず会話を続ける。
「今日の殲滅対象に誰かの名前を呼んで事切れた者が居てね。恐らく恋人の名だろう。回線が開いていて聞こえてきた。それで、貴方なら誰を呼ぶのか気になった、という訳さ」
軽い世間話をするような声音と笑顔。
覚悟は揺るがない、だが、守りたいモノ達を手にかけることに心が痛まないわけではない。
それが同じ目的を持ち、同じ苦しみを知った、肩を並べる未来があったかも知れない者達が相手ともなれば。
普段なら笑みの下に隠せるそれを、ようやく二人きりになれた安堵からか、和らげたくて最初の質問を口にしていた。
「貴方のことだ。もし居たとしてもフィーカの1杯程度では教えてくれないだろう」
「分かっているのなら諦めろ。狼にくれてやる腹は無い」
「それは残念だ」
何度会話を交わそうと、どれだけ肌を重ねようと、利害の一致でしかない関係だ。
必要の無いモノは、くれやしないし受け取りもしない。
私は、誰かの名を呼んだ彼が少し羨ましい。そう思ってしまったんだ」
否、本当に羨ましいのは、呼ばれた相手の方だ。
ラスティは少し瞼を下げる。
「最期の言葉が残ったログを誰が取るかわからない。聴かれれば探られ辿り着かれてしまうだろう。漏れなく地獄に落ちる者に名を呼ばれたともなれば、相手も共に地獄行きさ。私はそれを望まない」
オキーフは何も言わない。
彼は共感も唾棄もしない。
それでも此処に居て静かに聴いている。
「私は、誰の名も呼べない」
偽りの無い己の答えを吐く。
「行先が同じなら構わんだろう」
オキーフのその言葉に、ラスティが目を見開く。
一歩遅れた思考から言葉を紡ぐより先に、オキーフが「寝ろ」と告げる。
「しばらくここに居る。休め」
彼はタバコを一本、箱から取り出した。
どうやら煙に巻いてくれるらしい。
あぁ、そうさせてもらうよ」
ラスティは珍しく眉根を下げた笑顔を見せた。

―――

ログを再生した。
感情で歪みそうな顔を隠そうと手で覆う。
努めて冷静に、仲間を悼む、フリをする。


ずるいな。
貴方が最期に私の名を呼ぶなんて。

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