卒業式を目前に控えた三月 草津宅にて
「い、今からここは、セッ
…セッ
……性行
…為
…をしないと出られない部屋です
……」
「えっ
…?!いっ、いきなりどうしたの、きんちゃん。毒キノコでも食べた
…?」
「
………」
「きんちゃんがそんな冗談言うなんて、意外だなぁ
…」
「
………」
「
…………本当に
…?」
「
………本気だって言ったらどうする?」
「
…俺と、きんちゃんが
……?」
「
………」
「えっ
…と、そんなこと考えたことなかったから、今ものすごく動揺してる
……。ほら、こういうのって普通恋人同士でするものでしょ?」
「
…恋人じゃなくたって出来る」
「うーん
……俺はやっぱり手順を踏むべきというか、もっと大事にしたい
…かな
…」
「
…あっちゃんは真面目だなぁ」
「そ、そうかなぁ
…?」
「あっちゃんは
…僕のことどう思ってる?」
「えっ
…きんちゃんは俺にとって大切な友達で、家族みたいな存在でもあって
…」
「僕は
……あっちゃんが好きだ。友達としてではなく、恋人として、あっちゃんの隣にいたい。誰かにあっちゃんを取られるんじゃないかって、毎日不安に怯えるのはもう嫌なんだ」
「きんちゃん
…」
「やっと昔みたいに戻れたのに、引かれるんじゃないかって怖くて
…ずっと隠してきたけど、もう限界なんだ」
「
………」
「
……ふっ、困るよな。いきなりこんなこと言われても」
「いや、そんなこと
…」
「わかってた。きっとあっちゃんは否定せずに話を聞いてくれるって。君は優しいから、僕を傷つけないように、頭を悩ませて言葉を選ぶんだろうなって」
「
………ごめん、上手く答えられなくて」
「こうでもしなきゃ、前に進めないと思ったんだ。
だから、伝えられてよかった」
「ごめん
………」
「あ
………もうこんな時間だ」
「
……ほんとだ。そろそろ、帰ろうかな」
「うん。
……じゃあまた明日、学校で」
「お邪魔しました。じゃあね、きんちゃん」
「あっ、ごめん。鍵
……」
「あ
……うん。それじゃ」
ガチャ
………パタン
あっちゃん、「またね」って言わなかった。僕の気にしすぎかもしれないけど。どうせ苦しい思いをするなら、これでよかったんだ。何でも思い通りに行くわけじゃないって、わかってたじゃないか。
卒業したらもう顔を合わせることはないからちょうどよかった。これからあっちゃんが誰を好きになったって、僕には関係ない。
この胸の痛みも色褪せて、いつかきっと忘れられる日が来る。
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