ガチャッ
鍵が開く音に反応して目が覚めた。風呂から出た後、ソファに座って読書をしていたらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「あっちゃん、おかえり」
「ただいま、きんちゃん」
あっちゃんは鞄をラックに掛けると僕の隣に腰掛けて、肩にもたれかかってきた。あっちゃんが甘えたモードになる時は、かなり疲れている証拠だ。傾向は掴めてきたけれどいまだにドキドキして慣れない。
あっちゃんは僕の腕を探るように辿って、指先を絡めてくる。
「きんちゃんの手あったかい」
指と指の隙間を埋めるように手繰り合い、指の付け根まで深く絡めて握る。
「あっちゃんも。眠いんでしょ」
「んー。もうこのまま寝ちゃおっか」
「ちょっ
…せめてスーツだけは着替えて
……ん
…」
顔を覗き込まれるようにして唇が重なる。
「ん
………」
額、瞼、頬に、優しく触れるだけのキスが落とされると、そのまま繋いでいない方の手で耳をなぞるように髪を掛けられて、肩がびくりと震えた。
「きんちゃん、かわいい」
あっちゃんに耳元で囁かれ、恥ずかしさのあまり顔を背けようとするも肩をぐいっと引き寄せられて、お構いなしにちゅっと口付けられる。
「あ
……っ」
耳たぶをそっと甘く噛まれて思わず声を漏らすと、わずかに開いた口に舌を捩じ込まれ、先ほどよりも深く唇を塞がれた。
「
…ん
…っ
…ふ
……っ
…ん
……」
角度を変えて何度も舌を絡め取られる。
「
…ん
……っ
…ふぁ
…っ」
されるがままのキスに頭が蕩けそうになっているとソファの上に押し倒されて、あっちゃんに至近距離で見つめられる。視線を完全に捉えられ、逸らすことができない。息が詰まって、心臓がもたない。
おもむろにあっちゃんが上体を起こし、離れていくのを少し残念に思っていると、僕の顔を見てふっと笑った。
「きんちゃん、そんな物欲しそうな顔で見ないでよ」
「ちがっ
…!」
僕は恥ずかしくなって慌ててソファの背もたれに顔を埋めるように逸らした。
あっちゃんは片方の手で僕の頬を包むように触り、親指でなぞりながら「きんちゃん、こっち向いて」と困ったような、はたまたちっとも困ってなどいないような声色で求めてくる。
おずおずとあっちゃんの方に顔を向け直すと、僕が掛けている眼鏡を取り上げてテーブルの上に置いた。
「あっちゃん
…」
「危ないからね」
そう言って、あっちゃんも自分が掛けている眼鏡を外した。この先の展開を想像してごくりと息を呑む。期待をはらんだ体が熱を帯び、勝手に疼いてしまう。
胸、下腹部をぴったりと密着させ、太腿を絡み付けてあっちゃんが覆い被さる。もうどちらのものともわからない心拍がドクドクと打ち付ける。
「
……ん、
…ふ
…っ
……んう
…っ
…」
唇を強く押し付ける激しいキスに応えるように、必死で舌を絡める。
「かわいいね」
「なっ
…!またそんなこと
……あ
…っ」
首筋をべろっと舐められて思わず腰を反らしたが、体を固定されていて逃れることができない。もぞもぞと動けば肌と肌がにじりと擦れ、全てが快感に変わる。
「ん
…っはやく
……」
「早く、なに?」
「えっ
…?あっ、あー?!いや、なっ、何も言ってない!!!」
「きんちゃん顔真っ赤」
「ん
……っ」
触れるだけの軽いキスが唇を避けて何度か落とされる。あっちゃんはわざと焦らすからずるい。わかりきった挑発に乗っかるのは不本意だが、そんなことを気にしていられるほどの余裕は無かった。
「あ
…あっちゃんのが、その、ほしい
……」
恥ずかしくて、この場から消え去ってしまいたい。唾を呑み込むゴクリという音が開始の合図のように聞こえた。
******
「きんちゃん、腰大丈夫
…?」
「大丈夫じゃない
………」
あっちゃんが掛けてくれたタオルケットに顔を埋め、背中を丸めて横になっていた。あっちゃんはソファの脇にあぐらをかいて座り、心配そうに僕の顔を見つめている。
あれから、疲れていたはずのあっちゃんはなぜか変なスイッチが入ったのか、激しく何度も、何度も
……………
僕の体は悲鳴をあげていたけれど、あっちゃんが求めてくれるのが嬉しくて、全てを必死に受け入れた。その結果がこの有り様だ。
「きんちゃんもう一回風呂入る?」
「いい。めんどくさい
…」
「めんどくさいって。誰かさんみたいだなあ」
「ふっ、あいつなら喜んで入るだろ」
こんな時に引き合いに出されるあの男は、たまったもんじゃないだろうな。心の中で苦笑いしていると、こちらに伸ばされた手が寝かしつけるように、僕の頭を優しくたたいた。子供じゃないんだから。心地のよい体温に溶かされて、微睡みに沈んでいく。
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