宿敵デスアモルとの戦いが終わった後、一行はいつもの黒玉湯でゆったりと語り合い、傷ついた身体を癒していた。
風呂から上がり着替えを済ませ、脱衣所の椅子に腰掛けていると「隣いい?」と声を掛けられた。
「きんちゃん、なんだかすごく大人っぽくなったよね」
「そりゃあ、まぁ、もういい歳した大人だし
…」
「そうだよね。俺たち、出会ってから20年以上経つもんね」
「あっちゃんも雰囲気は少し変わったけど、勤勉で真面目なところは変わりないようで安心した」
「変わらないってのも面白み無いけどね。俺にとってはそれが一番だから」
高校を卒業してからしばらくはメールのやり取りを続けていたが、お互いに忙しくなり、やがてぱったりと無くなった。
あっちゃんが公務員を目指しているのは知っていたけれど、こちらから詮索するのは憚られ、タイミングを完全に失ってしまった。理由が無くてもメールは送っていい、とかつて友に言われたがそんな勇気は出なかった。
第一向こうから連絡が来ないということは、僕はもう飽きられてしまったのではないか
……
あぁ、あっちゃんに会いたい
………
そんな辛さを紛らわせるように執筆業に没頭していたら、随分と時が経っていた。
自分の職業に触れられたくないことを察してか、その辺りの話は追求してこなかった。ありがたいと思いつつも、隠し事をするというのはなんとも心苦しい。
ごめんあっちゃん
…でも言えない
…
「さっきも言ったけど、きんちゃんに会えて本当に嬉しいよ。このまま一生会えないんじゃないかと思ってた
…」
「えっ?!なんでそんなこと
…!」
なんて寂しいことを言うんだと思ったが、実際自分もそうだったし、あっちゃんにそう思わせてしまったことがひどく悲しい。
「
…いや、僕も何度かあっちゃんに連絡しようと思ってたんだけど、タイミングを逃してしまって
…すまない」
「いやいや、俺が忙しさにかまけてなあなあにしてたのが悪い。ごめん」
お互いに気を遣ってしまって歩み寄れないのは、大人になってしまったからだろうか?僕の願いは、あの日から何も変わっていないのに
……
「あのさ、きんちゃん。もしよかったらなんだけど、今日俺の家来ない
…?色々話したいなと思って
…」
周りに聞こえないようにあっちゃんが小声で囁く。
「えっ、これから
…?」
「ああー!あの、いきなりだし都合悪かったら全然断ってもらって大丈夫だよ!気にしないで!」
「迷惑じゃなければ、行きたい
……です」
「ほっ、ほんと?迷惑なんかじゃないよ!」
急な誘いに風呂上がりの体がさらに熱を帯びていく。あっちゃんがそんな大胆なことを言うとは思わなかったから、正直驚いた。
主任という立場に上り詰めたのも、社会人としての責務を全うしているのに加え、人望が厚いからなのだろう。それはあっちゃんの人間性であり、この数年間で培った計り知れない努力の賜物でもある。これも、人間関係を大切にする、大人の付き合いというやつなのかもな。
「じゃあコンビニ寄ってつまみとか買ってこう!あと朝食用にパンも買わなきゃか」
朝食?
……えっ、もしかしてあっちゃんの家に泊まるのか?酒でも飲みながら他愛もない会話をして、さくっとおいとまするつもりだったのだが。
いや、このシチュエーションでそんな想定をする自分が間違っていた。それなら居酒屋なりバーに行くだろう。職業柄一番よくわかっているはずなのに、自分の事になるとこんなにも鈍いとは
…
……これは期待していいのか?それとも、汚い僕の妄想なのだろうか。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.