剣 隼兎(つるぎ はやと)
2026-01-08 14:44:51
2377文字
Public ルカトレ
 

黎明のフーガルカ×紙心トレイシー ルカトレネタ帳7

記憶喪失な紙心トレイシーが森でフーガルカに拾われて……というネタ素材をDMで貰って自分好みに調理したお題。ちょっと青髭っぽい内容だったのでこれは設定上乗せしたろ♪とうきうきでした。

トレイシーが目を開けると、森の中にいる。白樺の木々に澄んだ空気、小川が流れて小鳥の囀る声がする。お話に出てくる様な綺麗な森だったが、トレイシーは何故自分がここにいるのか分からない。
なにがあったか思い出そうとするも何も思い浮かばない。自分の事も分からない。ただ、こんな外の空気は久々だと感じる。見下ろせば白いドレス。包帯に覆われた脚。小川を覗き込めば自身が女性である事が分かる。
そこで頭痛がして、目を閉じると誰かに「トレイシー」と呼ばれていた様な記憶が蘇る。それは確かに自分の名前だ。ただ呼んでいる相手が誰なのかは分からない。
よく分からないがどこかに行かなくてはという気持ちが湧き起こる。とにかく進まなくてはとトレイシーは歩き始めるが、少し歩いただけで息切れを起こしてしまう。体力が全くないし、とても体が重い。重い体を引きずって進もうとするトレイシーだったが、いくらも行かないうちにへたり込んでしまう。
一度膝をつくともう立ち上がれない。そのまま倒れ込むとトレイシーは意識を失ってしまう。

次にトレイシーが目を覚ますと、体が揺れている。見上げるとカラスを2匹連れた、知らない男に抱えられている。男は人形のように綺麗な顔だが顔の半分にヒビのようなものが入っている。
男はトレイシーが目覚めたことに気付くと人形の様な無機質で冷たい顔を向けるが、トレイシーが「誰?」と問うと人間味のある表情に変わる。
彼はルカと名乗り、日課の散策中にトレイシーを見つけた事を告げる。無事で良かったが獣に襲われてしまうかもしれないので自宅に連れて行く途中であるとも。
目は覚めたが体力がないトレイシーは疲れ切っていて動けないので、ルカに抱えられたまま彼の棲家である、廃墟寸前の古城へと案内される。
外から見ると廃墟同然だったが、内部はそれなりに綺麗な城。助けてもらった礼を伝え、自分も名乗るトレイシー。しかし名前以外はなにも思い出せず、自分がどこから来たのかも分からない事をルカに告げる。ルカはそんなトレイシーに思い出すまでここで過ごすといいと滞在用の部屋を用意してくれる。
「保護したのは私の責任」と甲斐甲斐しくトレイシーの世話をしてくれるルカ。とても優しいが、何故か見張られている様な心地も覚える。
体力が戻ったトレイシーの為に、ルカは城の内部を案内してくれる。中庭や図書館、宝物庫や執務室、娯楽室と見せてもらう中、三階にある「獅子の間」だけは閉ざされたままになっている。
気になったトレイシーが「あそこは?」と尋ねると「開かずの間だよ。あの部屋には決して入ってはいけないよ」とルカに釘を刺される。分かった、とトレイシーも答える。
体は健康になったけれど、相変わらず何も思い出せないトレイシー。塞ぎ込むトレイシーの為に温室に連れ出したり城の景色のいい場所に連れて行ったりとしてくれるルカ。優しいルカに惹かれるトレイシーだが、どこかでまだ見張られている様な観察されいてる様な感覚を覚える。完全に信用されていない気がする。でもとても大事にされているのは分かる。
ルカの言う通りにいつまでもここで二人で居たい気持ちと、全てを思い出して元の場所に戻りたい気持ちで悩むトレイシー。

ある日、ルカが森の外に用事で出かける事になった。
トレイシーは何かを思い出す切っ掛けになるかもしれないのでついて行きたがったが、ルカはのらりくらりとその話題を躱すので結局留守番をすることになる。
置いて行かれたトレイシーは面白くない。不機嫌に城を彷徨いていると、三階の獅子の間が目に入る。
鬼の居ぬ間に入ってやれ、と普段ならやらない事だがルカへの意趣返しをしてやろうとトレイシーは目論む。

そうして侵入した獅子の間で、トレイシーは棺に入った荊に侵蝕されてしまった人間のルカの遺体とガラスケースに入った心臓を見てしまう。城の心臓部。見たら生きては出られないこの城の秘密。
そこでフラッシュバック。前にも同じことがあった。へたり込むトレイシーの背後に、いつ戻ったのかルカの姿がある。
ルカは楽しげに「君は本当に悪い子だなぁ」と呟く。

トレイシーは森で迷ってこの城に辿り着いた。一目見てトレイシーを気に入ったルカは滞在を許可する。
しかし一回目のトレイシーも好奇心に勝てず、入ってはいけないと言われた部屋に入ってしまう。
城の秘密を知られたら殺すしかないが、ルカはここから出さなければいいとトレイシーを小鳥のように秘密の部屋にしまって大事に大事に可愛がる。しかし、一瞬の隙をついて小鳥が逃げ出した。
捕まえて二度と逃げられないように羽根を毟ってやろうと思っていたルカだったが、迷いの森の影響でトレイシーは記憶を失っていた。
ここ最近はずっと怯えて恐怖に身を縮こまらせているトレイシーしか見ていなかったので、何も知らずにいる姿が新鮮でか可愛らしく、これはこれでいいかもしれないと思っていた。
今度は慎重に、怖がらせないようにゆっくり可愛がろうとルカは決めた。何も知らずにルカに懐く小鳥はとても可愛らしい。これがいつか崩壊するのは分かっていたが、だからこそ愛おしい時間だとルカは思っていた。

「あ、あ、あ……」と全てを思い出し、カタカタ震え出すトレイシー。
結局元通りになってしまったが、小鳥が戻ってきたのでルカは満足。力が抜けてしまったトレイシーを抱えて、以前の定位置へ。
寝台の上、金色の足枷をトレイシーに嵌める。
こうしてずっと閉じ込めていたから体力が落ちていたトレイシーは脱出には成功したが大した距離を逃げられなかった。
「大丈夫、久しぶりだから、ゆっくり思い出させてあげるよ」とうっそりと笑うルカ。

ルカはハッピートレイシーにはバッド。可愛いものはいじめたいという欲が……