三毛田
2026-01-07 21:59:02
1085文字
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30 ほ. 解れた糸

30日目
君のお陰で

 ピンと張り詰めていた糸が解れて、柔らかくなるように。
 俺の心も、意識も、いつの間にか解れていた。
「丹恒。どうしたんだ?」
「具合が悪い? それなら、姫子に言ってヨウおじちゃんと交代してもらうけど」
「そんなに顔色が悪いか?」
 心配そうにこちらを見ている二人に問いかけるけれど、彼らは顔を見合わせた後同時に首を横に振る。
「なんていうか、丹恒がリラックスしてる?」
「あー……もしかしたら、そうかも」
 俺がリラックスしている? 外で?
 唖然とするが、なんとなくだが理解した。
 彼と、穹と一緒に居るからだろう。
「無駄な力が入っていないということだ」
「いいこと?」
「いいことだろう。何かあった時に、すぐに対応できる」
「護衛だもんね。ウチらのこと、ちゃんと守ってよ?」
 三月の言い方に、ちょっと呆れてしまう。しかし、これでも護衛なのだから彼らのことも守らないと。
「そうだな」
「えー。丹恒に一方的に守られるんじゃなくて、俺も守りたいな」
「それなら、朝の鍛錬に付き合ってもらおうか」
「え~。それは勘弁」
 なんだそれは。
 思わず笑ってしまう。
 と、二人はまた顔を見合わせ。
「丹恒が笑った!」
「なの、写真! カメラ!」
「こら。被写体の許可を得ずに写真を撮るのはやめろ」
「「え~。じゃあ、撮らせてよ」」
 二人の声が重なって。驚いていると、パシャリとシャッター音。
「こら」
 怒った声が出たけれど、二人とも笑うだけ。
 すると、穹が俺と三月の肩を寄せて。
「はい、チーズ」
 そんな掛け声とともに、三月がシャッターを切る。
 ああ。
 こんなやり取りが、たまらなく愛しいと感じる。
 そんな自分の変化に驚くが、表情には出さない。
「写真も撮れたし、買い物買い物~! まずは、パムに渡すもの」
「次に、姫子とヨウおじちゃんにだね!」
 キャッキャと楽しそうにはしゃぐ二人の後を、ゆっくりついていく。
 彼らと過ごすことで、己の行動の変化に気づいた。気づくことが出来た。
「丹恒。お前も選んでくれよ」
「ウチのセンスに文句が?」
 物を選びながら、振り返る穹。その隣では、三月が頬を膨らませ。
「俺よりも、三月の方がセンスがいいだろう」
 俺の言葉に、彼女はドヤ顔と呼ばれる表情に。
「俺は、丹恒と一緒に選びたいんだ」
 ちょっとだけドキッとした。
 ちょくちょく見かける、拗ねた表情なのに。
 気づいたのは、己の考え方変化のみ。だけだと思っていた。
 心情の方も、抱く感情も。
 気づかない内に、穹に惹かれていたことに。
 今、初めて。