身長が高いフリンズさんと友人を見上げる話

※一つ前の話とリンクしてます。友人目線。

 私の直感は正しかったな、と後々気付いた。

 先日、友達とご飯に行く約束があるので、少し早めに出かけてフラフラとナシャタウンを歩いていたところ、ライトキーパーの同僚であるフリンズさんとばったり出会った。
「今日はお休みでしたよね?すみません、先日の出動時の件でお聞きしたいことがありまして」
「いいですよ、まだ予定まで時間ありますので」
「おや、待ち合わせでしたか。では急ぎで、この件の――
 二、三質問を受け、その場で回答できる内容だったので対応させて頂いた。フリンズさんは真面目ですね。
 
 ――ふと、フリンズさんの向こう側に待ち合わせしていた友人の姿が見えた。彼女は上背のある美人さんで、目立つから分かりやすい。……あぁ、フリンズさんが居るから、近寄るか迷っているのかも。フリンズさんとの用事もほぼ終わっていたので、手を振って彼女の名前を呼ぶと、ゆっくりと近寄ってきてくれた。
 フリンズさんも後ろを振り返って、「――ぁっ」と小さく呟いた。ん?実は知り合いだったのかな、と思ったがこれは杞憂だったようだ。
「ごめんなさい、話途中だったんですよね?」
「ううん、ちょうど用事は終わったところだから平気だよ。んで、こちらはライトキーパーの同僚さんです」
 フリンズさんに手のひらを差し出しながら、簡単な紹介をした。
「初めまして、僕はキリル・チュードミロヴィッチ・フリンズと申します。フリンズ、の方が呼びやすいので、そう呼んでくださいね」
 彼はそのように名乗り、片手を胸元に置いて軽い会釈をした。丁寧な名乗りに、私は少し驚いた。こんなフリンズさん、職場では見たことないんだけど……?職場での彼は、何と言うか……何事にも無関心なことが多いからので。
 
 流れで友人も名乗ることになった……というかフリンズさんが促してきた。仕方ないか、と乗り気ではない感じで名乗る彼女の姿は少し面白かった。隣を見ると、フリンズさんは声に出ない、息だけで彼女の名前を反芻していたように見える。……ん?
 それにしても、……なんか圧迫感?がある……。あっそうか、ほんの少しだけど、フリンズさんとの距離が近い。いつものパーソナルスペースはどうしたんだろうか。彼女とフリンズさんも、二人揃って背が高いので、平均サイズの私が囲まれると、ね。
「この空間は首が疲れるんですけど……
一人ならまだしも、二人も近距離で見上げなくちゃならないのは、ちょっと疲れるとボヤいたところ、二人して私を見下ろしてから、自分達の高さの目線を合わせてクスクス笑っている。

「用事が終わってるなら、そろそろお店向かおうか?」
 そうだった。楽しそうな美男美女を見ていたら、時間を忘れかけていた。
「お約束されていたのですよね?お邪魔してしまい、すみませんでした。それでは、僕はこれで」
 そう言ってフリンズさんは、優雅に一礼してからニコっと笑った。私のことには目もくれず、彼女に目配せしてから去って行った。
 ――あぁ、そう言うこと……
「フリンズさんって、私より背が高かったねぇ」
手の甲を上にしながら「このぐらいだった」と、彼の居た場所の高さを測っていた。……こっちは脈なし、かな?
「あと、すっごい綺麗な顔の男性だね。ちょっとびっくりしちゃった」
 そうだった。忘れていたけれど、この子は面食いだった。頑張れフリンズさん、押せばいけそうだぞ?


 ***

 
 そして、今日の出来事。
 ナシャタウンでの買い物帰り、視界の隅に友人の彼女を見かけたので声をかけようかと思った――が、やめておいた。隣には笑顔のフリンズさんが居たからだ。
 ――これは、うまくいきそうかもね。頑張れフリンズさん。
 馬に蹴られるのはごめんなので、また次の機会にでも彼女から話を聞くことにしよう。そう思って、私はその場を後にした。
 


『美男美女を眺めるのは、とても健康に良いからね』