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asahito
2026-01-07 21:03:14
4859文字
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Corpse Reviver⑤
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
喧嘩した時絶対阿梨夜さんが折れると思うんですけどね
「酒の在庫よし、冷蔵庫問題なし、アソートもある
……
問題なしだね」
いつも通り指さし確認の点検を行い、シャッターを開くボタンを押す。
酔客が開いてないドアを蹴っ飛ばして壊すのを防ぐために導入した設備は、ぱっと見このビルにバーがあることが分からなくさせる。
見た目は変哲もないビルで、一般客の入口は一つのドアだけ。店の存在に気付けるのは行こうという意志のある奴か、偶然夜この道を通りかかった奴だけ。
シャッターが開ききったところで、バーの営業中プレートを通りに向けさせる。
流石に混みやすい日とは言え、まだ一般的に定時の時間になって間もない時間帯のせいか開くのを待ってる客はいなかった。
まあいい。そのうち色んな奴が来るだろう。それまで店内でかける音楽や今後のメニューについて考えるのも悪くない。
久しぶりに私のダイスを使った掛けごっこをやりたいって奴も出て来るかもしれないからそれの練習もありか。
定休日にしっかりと、美味しいお酒と肴と、魅須丸を楽しんだ分。機嫌は良く体調も問題なし。この変化は良い方に向かっているだろう。
『新しい客が増えたら大事にするのもいいですが、従来の客も同じくらい大事にしないと潰れますよ』
まさか房事の後、腕枕してる時に説教をされるとは思わなかったが。なんやかんや私の店が大丈夫かは気にしてくれる辺りは。
魅須丸も私の経営がうまくいくことをちゃんと祈ってくれてはいるのだろう。
私が希望したアクセサリーのデザインについてもあーだこーだ色々聞かれたので答えてやったが。
している最中にいきなり色の組み合わせはこっちのほうがいい、とか言い出すのはムードのかけらもなかった。
この関係に慣れてきているというならそれまでではあるが。
もしも。もしも、私たちも一緒に暮らすような事になったなら。毎日魅須丸と顔を合わせて、あの甘いものばかりの偏食を諫めて。それでも冷蔵庫の中は、甘い物が占める面積が優勢で。
手作りの甘い物は食わせてやっても、煙草は外で吸えと叱られ。作業をするなら部屋に閉じこもりっきりになるし騒音も気にしなければならない。
それに、家を買うなんてまだ無理だから。家賃や光熱費はどうするんだと話し合うのだろうか。
というか、魅須丸が住んでいる場所もまだ分からないのに。一族の事は行っても親や兄弟のことなんざ一切知らないのに。
一緒に暮らすとなるとそういうことも知っておかないといけない。私は育ててくれた人は亡くなって、天涯孤独だからもう気にする必要はないが。あっちはどうだろう。
「
……
」
想像が、つかないし。こう言ってしまったら何だが魅須丸と暮らすってのは凄く厄介事が多くて気の進まない事だ。
勿論特別な相手だとは思っているが。一緒に暮らす、婚姻関係に近い契約を結ぶってのはーそれとはまったく別の話なのだろう。
それにもしも。魅須丸の家族が私の事を調べて色々と過去を聞かれれば。いずれ、あまり探られたくない過去もバレるかもしれない。
犯罪に手を染めていたり、反社会的な行為をしていたことは決してないが。魅須丸に知られるのは嫌だった。自分のしでかしたこととは言っても。
誰だって聞かれたくない過去のひとつやふたつ、あるだろう。
結婚で全てを曝け出されるくらいなら。つかず離れずが良い気もするが。それでも相手と一緒にいたいと思う気持ちってのは何なんだ?
最近うちに増えたあの客に尋ねて見たくもなるが。そんなことを尋ねたらきっと、私の何かを無意識に暴こうとする。
―
ただ、阿梨夜のことが。ユイマンのことが。好きだからです。
そう単純に答えて笑うだけだろう、あいつらは。聞くだけおめでたくて無駄だ。
結婚記念日で祝ってやって以来忙しいのかあいつらはやってこないが。阿梨夜が勤める博物館は相変わらず大掛かりな展示を継続しているし、説明のための動画も意欲的にアップロードしている。
SNSのアカウントで阿梨夜の職場のアカウントもあったから個人の方のアカウントでフォローしているが、無料で知識を得られるというのは。
ありがたい事だし、時折その展示に行った客との話も合わせられて便利な部分がある。
割と博物館は美術館よりも理解がしやすく。仏頂面の中年の客が、子供と恐竜の化石を見に行って来た話を嬉しそうにしてるのを見ると。
阿梨夜の職業である学芸員っていうのは大したものだと思わされるのである。
あいつが今度うちの店に来たら。近く煙草や酒に関する博物館がないか聞いてみてもいいだろう。
煙草は国で専売されていたと聞いた事があるから、もしかしたら資料も残っているかもしれない。
グラスを磨きながら今日の一人目は誰だろうと待っていると。ドアが開き若い会社員風の男が入って来た。
「こんばんは。今日は早いですね」
「直帰だったんですよ。あ、アイリッシュウイスキーのソーダ割ください」
昨年会社に入りたての頃に先輩に連れて来られた若手だが。どうやら仕事は続けているらしく、今はもう一人でうちのバーに来る存在となっている。
好きなものや趣味は動画を見たりアイドルを愛でる事らしいが。変に私に対し説教をしないあたり、若いヤツの方が気が楽である。
「少々お待ちくださいね」
アイドルはあまりに多すぎて覚えきれないが。私が知らない可愛い子を見せて貰えるのは助かる。
どうしても追うのは難しく。あちこちで国すら跨いでアイドルが結成され、デビューしたりしてると。もうどれがどれだか分からなくなってくる。
可愛い綺麗は皆そうなのだ。
おしぼりとコースターを彼の前に置き。最近カッコつけて飲み始めたアイリッシュウイスキーの瓶を棚から出す。
国産、海外産、さまざまな国のウイスキーはあるが。アイリッシュウイスキーはまた別だ。これを使った冬用のカクテルだってある。
「次の休みはまたライブですか?」
「はい。推しの生誕ライブなので楽しみです」
そう言って前にライブに行った時のツーショット写真を見せてくれる。この子はセンターではないが、その目立たなさが良いらしい。
満面の笑みでその子と写真が撮れてさぞかし幸せそうだ。写真を見せてくる奴はだいたい、その幸せを振りまきたいのだろう。
こいつは変にストーカーもしないと思うので大丈夫だろうが。金とか、ちゃんと貯めてるかは気にはなる。
「ちゃんとお祝いできるといいですね」
炭酸水でウイスキーを割り、コップを差し出す。幸せだと思う形はそれぞれで。自分の心が癒されるならそれでよいのだろう。
相手を想うあまり不幸な目に遭うのならばそれは進むべきではなくとも。
恋愛がばれたとか、そういう相手を知り過ぎて見たくない部分を見てしまった時。相手に幻滅し自棄にならなきゃいいが。私には関係ない事だ。
事件起こされて私も行きつけの店の店主として事情聴取とかされたりしたら、面倒だけどな。
ソーダ割を美味そうに飲みつつ、お気に入りのアイドルの動画を眺め仕事の疲れを癒す奴を。誰が責められようか。
この客は推しの動画を見始めたら後は静かに酒を飲み、数杯飲めば元気に帰っていくので特に警戒は必要ないだろう。
バーでパソコンを出されたり、撮影をしだしたら止めるが。動画を見たり、電子の本を読むくらいなら許す。ただし酒は頼め。
幸先いいな。グラスを磨きながらそいつの二杯目の頃合いを伺っていると、またドアが開いた。
「いらっしゃいませ、こんばんは」
顔を上げて挨拶をしたまでは良かったが。本能的に厄介事に対するセンサーのようなものが反応しグラスを磨く手が止まった。
「今晩は駒草さん」
見慣れた顔だから別にいいじゃないかと思うが。どうして、あんたは。その状態なんだ。たまたまか。
「
……
奥の席が空いてるのでそちらにおかけください」
客席に促すと同時にそいつの左手の薬指を盗み見するが、ちゃんと銀の指輪は嵌っていた。それを見て安堵する。まだ、最悪の事態にはなってないが。
バーカウンターを横切るそいつの雰囲気が。どこか刺さるような何かを纏っていて私の本能が警告を出す。
「ご無沙汰してますね。お仕事は落ち着いたんですか?」
「ええ。早速だけど注文いいかしら」
おしぼりを私から受け取ってにこにこと笑うそいつに。推しの動画に夢中になっている奴は全く気付いてないのに安堵した。
なまじ、女を口説こうとする阿呆が今来た客を見ると絶対にちょっかいを掛けようとしたり私に聞いて来たりするだろう。
「この前来た時に作ってくれたカクテル
……
作れますか?」
ユイマン。お前、阿梨夜も連れずに何を一体纏って持って来た?
ストレスを癒やすための薬として酒は存在してると思うが。飲ませすぎなら店主としてそれは止めるべきだろう。
泥酔して椅子から落ちたり。トイレで嘔吐しまくって汚したり。他の客に絡んだりして迷惑かけたり。とにかく酔っ払い過ぎの阿呆は面倒なのだ。
「
……
もう一杯同じお酒ください」
「構いませんが、水も飲んでくださいね?」
しかしいくら飲ませても酔わない阿呆の場合。お行儀よく飲んでる以上、これと言った理由もなく追い出すわけにもいかず。
客が増えれば気を遣って帰るだろうが。全然今夜に限って人が来ない。他の客もいるが、相変わらず推しのSNSを眺めてにこにこ笑っている。
この酒、度数30は行ってんだぞ。それを平気な顔で飲んで、色素の薄い肌は全く変化なく。
ただただ瞳だけは前見た時よりも鋭く。獲物を捕らえられず苛立つ捕食者のような、そんな片鱗が見えるのだ。
かなり抑え込んでるとは思うが。それでも私のようにいつも様々な人間と接している立場から言えば。
明らかにコイツは不機嫌で。その原因もだいたいは予想がつく。
身なりから金はありそうだし、前渡された紙幣も綺麗な状態だから多分払えない事はないだろうが。店主は言われたら作るまでだが。
この酒は癒しにもならず。酒漬けにされ過ぎてコイツ自身が酒になりそうな勢いだ。蠍酒とか、ハブ酒みたいに。
「前もこの酒飲んでましたけど気に入ったんで?」
コープスリバイバー。死者の蘇生と呼ばれる気付けの酒。死者どころか生者の中でも生命力のありそうなこの浮世離れが。蟒蛇のように飲み続ける。
「最初は変な匂いだと思ったけど、何度か飲むと本当美味しいのね」
駒草さんの教えてくれるお酒って美味しいから好き。
可愛らしいことを言ってくれる。そう言われてこの顔に微笑まれたら、惚れっぽい奴ならすぐ鼻の下伸ばすだろう。
本能的にぶっ飛んだ気配しか感じないため、私はこの警戒を絶対に解く気は無いが。
「
……
」
もう片方は今どこにいるんだ。それとなく聞いたら仕事だと浮世離れは言ってたが、そんな風には感じられなかった。
寧ろ阿梨夜の事を尋ねた時、一瞬躰がいやに反応したのを見逃さなかったからな。
一緒に暮らしてて結婚してれば喧嘩なんてよくあることだが。さっきからこの女のスマートフォンは全く鳴る気配もない。
「すいません、お勘定いいですか」
「あ、はい」
そうしているうちに推しに夢中だった客はお勘定をお願いして来たので、そちらの方へ向かって行った。
まずいな。ユイマンってやつと二人きりなんて。何もやましいことしてない筈なのに、凄い気まずい。
あの阿梨夜って奴は何やってんだ。お前、なにやらかしたんだ。
「ご馳走様でした」
帰っていく上機嫌な客を見送ってドアの外に出た後。店の中に戻ると、ユイマンの瞳は明らかに殺意と苛立ちのようなものに満ちていた。
その瞳は田舎で暮らしていた時に、山道で出会った蛇によく似ていて。
まるで、捕食者の目の蟒蛇だなと。変な望郷の念を抱く羽目になったのだ。
続く
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