おから
2026-01-07 19:48:59
1263文字
Public いかがわしい
 

本当の事を知っていると、教えてはいけない。

二人で山盛りチャーハンを食べる🐇🐢。仲良し後。

 目覚めたら夜だった。
 十亀は起き上がり、流石に寝すぎたと反省した。
「亀ちゃん?」
「ちょーじぃ、起こしてくれればよかったのにぃ」
「でも気持ちよさそうだったからさ」
 寝たのが深夜の三時頃だった事だけは覚えている。夜食を食べたから。
 起きたら二人で服を買いに行く約束をしていたのに現在時刻は夜の六時。
 いくら何でも寝すぎだ。
 最近ずっと寝ている気がする。一時期寝不足だった反動だろうか。
「亀ちゃんお風呂入る?」
「昨日いっぱい入ったからいぃ」
「そう?じゃあご飯食べる?」
「んーちょーじが作ったの?」
「チャーハン作った!」
 じゃあ食べようかなぁ……
 十亀はボクサーパンツの上にスウェットを履き、作務衣を羽織った。
 暖房が効いているから寒くない。いや、寒いかもしれない。
「ちゃんと着ないと風邪ひいちゃうよ」
「でもぉ、面倒くさくてぇ」
「そんな亀ちゃんにはチャーハンあげない!」
「えぇ」
 元はいとえば昨晩あれだけ食い散らかしてきたのが悪いのでは?
 明日出かけるんだからダメ!と言っても聞かなかった兎耳山にそれはそれは丁寧にいただかれた十亀は案の定こんな時間まですやすや寝入ってしまったのだが、今更責任転換したくてもそれに応えてしまったのも十亀。
 風呂に入った事だけは褒めて欲しい。本当に眠かったのだ。
 兎耳山は簡易テーブルに、チャーハンが盛られたフライパンごと鍋敷きと一緒に持ってくると、真ん中にドカンと置いた。
「はい、亀ちゃんのお皿」
「ありがとぉ」
「じゃあ、いただきます!」
「いただきまぁす」
 お玉でフライパンに山盛りのチャーハンを掬い、皿に盛る。
 兎耳山の作るチャーハンは大味だ。基本調味料は味の素と醤油。あとコショウ。
 卵は固く、ねぎは大振りだけどシャキシャキして美味しい。
 ハムはちょっと焦げているけれど、ご愛嬌。お米は油をすっているけれど、ギトギト感はない。
 ここにちょっと塩が欲しいなぁと思う十亀は料理ができる人間の発想であると知っている。
「亀ちゃん、怒ってる?」
「今はそうでもないよぉ」
「ごめんね、デートだったのに」
「また今度行けばいいよぉ」
「そっか」
 兎耳山はおかわりのお玉をチャーハンの山へ向けると山を崩してゆく。
 十亀が作ったチャーハンの方が美味しいのは分かっているけれど、十亀が笑顔になるのは自分が作った料理だと兎耳山は知っている。
 昨晩も見よう見まねでおでんを作ってみたら、お花かと思う位ほころんだ笑顔を見せたから、そのままいただいてしまった。
 でもこれを言うと、十亀は兎耳山に作らせようとしてくれなくなるので、言わない。
 本当の事を知っていると、教えてはいけない。
「亀ちゃん」
「なぁに?」
「なんでもない」
「なにそれぇ」
 これから何度一緒にご飯を食べるのだろう。
 何十回、何百回、数えきれないほどご飯を食べるに違いない。
 そんな時は寄り添って。傍に居てくれれば、それでいい。
 今日の様に、二人だけの世界で。