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ぶ
2026-01-07 19:47:04
1214文字
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宵愁の手記
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宵愁の手記
アルケオーニス解体メモ
#宵愁の手記
アルケオーニスは甲鱗綱の生物だが、しばしば、ドラゴン族により操られ眷属化することがある。
そのドラゴンに近似した外見も相俟ってか、皇都の民にはこの血は好まれないのだと、雪原を染め上げるアルケオーニスの鮮血を眺めながら、露営地の騎士は言っていた。
革を鞣して身を包み、肉を好んで食べるくせに、血や内臓は嫌悪するというのも、不思議な価値観だとはいつも思う。すべてが在ってひとつの命だというのに。
辺り一帯の河川はすべて凍り付いている。降り積もった雪のおかげで肉を冷却する必要はないものの、水を調達するのは些か不便だ。雪を詰めたバケツを、焚火の傍へと置く。雪解け水を絞った布で、血の汚れを丹念にふき取った。
血抜きを終えたアルケオーニスの翼を肩から背中側に持ち上げるようにして肩関節を外す。関節が外れた部分にナイフを入れていき、両側の翼を切り離す。丈夫な翼は露営地の騎士が引き取り、テントの補強などに使うと言っていた。
肛門側から腹にかけて切れ込みを入れた後は、皮を引っ張りながら皮と肉の間に刃を入れていき、皮ごと頭部を切り落とせば、やがて一枚の綺麗な皮がとれる。
アルケオーニスの柔らかく丈夫な革は、武具の素材としても重宝される。それなりの値で売れるだろう。
ももの付根に切り目を入れ、関節を断ち、肉を胴体から引き剥していく。腸骨に沿って筋を切り離すようにナイフを入れていき、引っ張るようにすれば綺麗に胴体から肉がはがれていく。大熊ほどの巨体からとれるもも肉は、これひとつでも五人前にはなるだろう。足の先の関節を折って切り離す。
両側のももを外し終えたら、むね肉の付根の関節から、胴骨に沿ってナイフを入れる。刃元を肩甲骨に当て押さえ、肉を引きはがすようにしながらむね肉を取り外す。首の根元を掴んで、所々ナイフで剥しながら胸骨を引っ張るように取り外すと、内臓が見えてくる。食道と気管を引っ張って肺をつまみだし、そのまま胸椎から内臓を取り出した。
食道と気道を切り外し、内臓が纏う脂を除去しながら腸と肺を取り除く。砂肝は切れ目を入れて開き、内側の薄皮を剥す。胆嚢をつぶさないようにしながら、心臓と肝も取り外した。
内臓の処理を済ませた後は、胸骨についているささみ部分を取り外す。骨と肉の間にナイフを入れて薄い膜を切り、筋を取り出して引っ張れば、骨から綺麗に剥がれていった。
部位ごとに切り分けた肉を、綺麗に包んで保冷袋に詰め、相棒の背に乗せる。
残ってしまった骨や脂は、離れた場所に埋めることになるだろう。そちらも適当な袋に詰めて、相棒の背に括り付けた。時折ドラゴン族は、眷属の遺骸を回収しにやってくるそうだ。それは恐らく、弔いの為だという。このアルケオーニスも眷属だったのかどうかは、わからないけれど。
世話になった露営地の騎士たちに別れを告げる。まばらに降り始めた雪が視界を覆う前に、帰路を急いだ。
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