三毛田
2026-01-06 21:07:57
1084文字
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29 へ. 平気な振りなんて

29日目
簡単には出来ない

 鼻の奥が痛い。
 出会いと別れなど、当たり前と言われたら、そうなのかもしれない。
「うう……
「穹。諦めろ」
「だっでぇ」
 俺が涙声で反論しようとすると、呆れられる。
 一目惚れしたゴミ箱を買おうとしたら、止められた。
「これ以上増やしてどうする。必要なものを置く場所がなくなるぞ」
「でもぉ」
「でもじゃない」
「だってぇ」
「だってでもない。子供じゃないんだ。諦めろ」
「うわぁん」
 丹恒の強情っぱり〜! 叫ばなかったのは、子供じゃないんだと言われたから。ここで叫べば、子供扱いされてしまう。
「デスクの横、ベッドの横、ダイニングテーブルのとこ、それからお風呂場。出入口にだってあってもいいじゃん」
「既に四つはあるだろう」
「足りない!」
「それなら捨てろ」
「捨てたら意味ないじゃん!!」
 分かってないな!!
 また叫びそうになって、我慢。
 本当丹恒はわかってない。俺がゴミ箱にかける情熱を。
「今日は帰るぞ」
「うわ~んっ」
 手を引かれ、本当に必要なものだけを買って店を出る。
「うう……
「また丹恒に怒られたんでしょ」
 ラウンジのソファーでうずくまっていると、なのに背中を撫でられた。
「新しいゴミ箱買おうとしたら、怒られた」
「それはアンタが悪い」
「ふえぇん」
 泣き真似をするけど、相手をしてもらえない。酷い。
「うう……お風呂入る」
「じゃあ、またご飯の時にね」
「は~い」
 ひらっと手を振り、自室へ。
「はぁ……
 ちゃぷん。と、手を持ち上げて落ちた水が音を立て。
 温まった両手で、顔を覆う。じんわりと熱が伝わって、気持ちがいい。
 ああやって人前でも強く叱られて、ショックを受けないわけがない。でも、幼い子のように駄々をこねてしまった俺にも、非はある。
「でもさぁ」
 平気な振りなんて、いつも通りに過ごすなんて。簡単には出来ないから。
「丹恒が謝るまで、俺からは謝らないからな!」
 拳を突き上げると、また手についていた雫がお湯に落ちて。水面に波紋が広がる。
……
 それじゃない雫が、水面に落ち。
「たんこぉ」
 丹恒と喧嘩をしてそのままなのは、辛い。
 あまり声を出さず、一人で泣く。
 泣いたからか、ちょっとくらくらしてきた。
「出よう」
 浴槽を出て、体を拭いてシャツだけで部屋へ。
「出たか。ほら、飲め」
「たんこぉ」
「こ、こらっ」
 グラスを手にしている丹恒へ、飛びつく。合われたような声が聞こえたが、離せない。
「ごめん。俺が悪かったぁ。見捨てないでぇ」
「あれくらいで見捨てない。安心しろ」