身長が高いフリンズさんと出会う話


第一印象は『私よりも背の高い紳士』でした。

 以前ナシャタウンで、待ち合わせしていた友達を見つけたので声をかけようとしたところ、とある男性と会話中のようだった。彼女はライトキーパーに所属しており、彼は同僚なのだという。
「初めまして、僕はキリル・チュードミロヴィッチ・フリンズと申します。フリンズ、の方が呼びやすいので、そう呼んでくださいね」
 彼はそのように名乗り、片手を胸元に置いて軽い会釈をした。なんとまぁ……ナシャタウンにある意味似つかない『紳士』だな、と思った。それと同時に、彼と目線の高さがあまり変わらない、なんなら少し上であることに気がついた。私も簡単に名前だけ名乗っておいた気がする。友達の彼女は平均的な身長なので、高身長二人に囲まれたことに少し困った顔で「この空間は首が疲れる」と言うので、三人で笑った。
「お約束されていたのですよね?お邪魔してしまい、すみませんでした。それでは、僕はこれで」
 去り際に見せたニコっと笑う顔が――綺麗だな、というのが第二印象になった。
 

 ***


 ――それからしばらく経った、ある日。
 ヤフォダちゃんが「手が届かなくて困ってるんだっ」と言うので見に行ったら、依頼人の子猫が高いところから降りられずに助けられない、とのこと。まぁそれぐらいなら、と手伝ったのが運の尽き。結局、怯えた子猫は捕まえられたが、暴れた子猫が蹴った葉っぱの山が私に降り注いだのだ。渋い顔をしながら子猫をヤフォダちゃんに引き渡して、落ち葉は彼女が風元素で吹き飛ばしてくれた。神の目って便利なんだね。そして彼女は、私の周りをぐるっと一周して落ち葉が残っていないことは確認してくれた。
 その後は気晴らしに、ヤフォダちゃんから受け取ったカクテル1杯分ほどの臨時収入を片手にフラッグシップへ向かおうか――というところで、後ろから名前を呼ばれた。
 
 呼ばれた方向に振り返ったところ、フリンズさんが居た。
「あぁフリンズさん。お久しぶりですね」
「覚えてくださってたのですか?ありがとうございます」
「えぇ、まぁ」
 この『私よりも背の高い顔が綺麗な紳士』は、なかなか居ないからね。そりゃ覚えましたとも。
「貴女はこれからどちらへ?」
「ちょっと臨時収入があったので、フラッグシップにでも行こうかと思って」
「おや奇遇ですね、僕もちょうど向かうところでした。お店までご一緒しても?」
「どうぞ、構いませんよ」
 腕一本分ほどの距離感を保ったまま「今日は天気がいいですね」とか、ありふれた世間話をしていたところ、フリンズさんが立ち止まった。
――あの、何か……?」
振り返ると、彼は目を丸くして驚いた顔をした後、口元に手を添えてクスクス笑っている。……本当になんなの?
「すみません、少し――触れても構いませんか?」
「え?はい……
 そう返事をしたところ、フリンズさんは一歩距離を詰めてから、私の頭の上に触れてきた。
「はいどうぞ」
……落ち葉、付いてましたか」
「えぇ、しっかり刺さってまして。ふふすみません、笑ってしまいました」
 彼はまたクスクス笑っていた。私の方はヤフォダちゃんへの恨み言を10個ぐらい思いつきながら、今は飲み込むことにした。
「ヤフォダちゃんに、後で文句言っておくことにします」
「おやおや、ヤフォダさんが原因でしたか。しかし彼女では、この高さが見えなかったのかもしれませんね」
……それは確かに」
 ヤフォダちゃん、小さくて可愛いからね。仕方ないので、次会った時の文句は半分に減らしておきましょう。
 ――それはそうと、どさくさに紛れて頭撫でるのはやめて欲しい。

「貴女にひとつお聞きしたいことがありますが、よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「お酒は呑まれますか?」
 ん?と思ったけど「まぁ、人並みには」と答えておいた。
「そうですか、それはよかったです」
……何が?」
「これからフラッグシップで、珍しいお酒を引き取る予定なのです。先程笑ってしまったお詫びに、一杯奢らせてくださいね」
……んん?」
「では参りましょうね」
 そう言って彼は、私の手を強引に掴み引っ張る。ち、力が強いっ!フリンズさんの距離感バグってないか……?というか、私の拒否権はどこに行ったの?!



『実は第一印象から、もう気に入っていましたので』