一紀+壱紀


ポッキーの日だった一紀とヤキモチ壱ちゃん









本日11月11日。まだ誰も居ない対策室に入り何気なくコーヒーのラックを見ると、“みんなで食べてね!”と書かれた付箋と共に見慣れたチョコレート菓子の赤い箱が数個置かれていた。恐らく、というか確実に某姉妹からだろう。
「ポッキーの日だっけ?ま、あいつらそんなの関係なくいつも食べてるけど」
ほぼ同じタイミングで入ってきた紀之が言いながらその中の一つを手に取る。当然のように肩に乗っている管狐も興味を示して紀之と一緒にそれを覗き込んでいた。
「一騎」
すらりとした指で手際よく開封しポッキーを一本取り出す様子を隣で眺めていたら、突如呼び掛けられ。顔を上げると、ポッキーの端を咥えてこちらをじっと見つめる紀之と視線が合う。
「ん」
「おい、紀之
まさか、やれというのか。アレを。戸惑っていると、悪戯っぽい顔で咥えたままのポッキーを俺の口元に近付けてくる。はやくしないと誰か来ちまうぞ、と目で圧をかけられている気がした。
……分かったよ」
観念して向けられている方の端を咥える。紀之は満足そうに微笑んでポッキーを食べ始めた。俺もそれに倣って緩々と食べ進める。
(そういえば諫山達もしてたな)
退魔師の家系ってのはポッキーゲームに何の抵抗もないのか?なんてしょうもない事を思いながら少しずつ顔を近付けていく。
互いの唇が触れ合う距離まで接近しどちらからともなく食べ切ると、紀之がぺろりと俺の下唇を舐めて煽ってきたので素直に応えてやる。誘うように薄く開いた口に舌を入れ紀之の舌を絡め取ってやれば、今しがた味わったチョコレートの味のような甘ったるい声が聞こえてきて。そのまま細く引き締まった腰を抱き寄せ、着崩したシャツの中に手を滑り込ませようとした……ところで冷静になり、唇を離す。なにやってんだ俺達、こんな場所で。
おわり?」
「そんな顔してもダメだからな」
「冗談だって」
小首を傾げて悩ましげな表情をされたがそうはいかない。潔く距離を取ればすぐさま切り替え、先ほどの行為はなんだったのだろうと思うほどの無邪気な顔で笑われた。
「ったく
「ほら、フツーに食おう」
そう言って開けた箱をこちらに差し出す紀之の頬を白く毛並みのいい尻尾がフワフワと撫でる。そうだ、居たんだった。肩に乗ったまま一部始終を見ていた管狐が紀之に甘えるように顔を近付けた。
「どうした、壱……ッ!?」
「あ、」
そりゃあそうだろうな。だいぶ不機嫌に見える管狐は紀之が振り向くのと同時に唇に喰らいつく。反射的に開いた口から覗く舌先を小さな舌で擦ったり時折甘噛みしたり、強引に弄ぶ様はまるで色目を使ったお仕置きだとでも言いたげだ。
最初は驚いていた紀之も嫉妬心を感じ取ったのか、管狐の身体に手を添えて口付けを大人しく受け入れ始めて。管狐からするとご主人の浮気相手である俺はただその光景を見せつけられるという何とも言えない時間を暫し過ごしたのだった。