こあらん
2026-01-05 23:28:08
4664文字
Public ロベシエ
 

温もりを確かめて (ロベシエ)

グラフェス2025のスペシャルムービーの後の話かもしれない。個人的妄想なロベシエ
注意
ロベリアがなんだか元気ない&アナシエの事よくわかっていない設定なので“何者”発言
フェスの内容の個人的解釈がかなり入っている。

フェニックスの騒動が一段落した後のグランサイファーの艦内は、非常にバタバタしていた。団長こと、グランは本調子とは程遠く、今は療養期間としてこの騎空団は一次休止中だ。だが、それぞれの団員はグランのお見舞いや看病に忙しかった。
 そのような中、ロベリアは自室にいた。自分の恩人であるグランの元へ行きたいのは山々だが、いかんせんグランの部屋に訪れる団員が多すぎる。グランの部屋はルリア、ビィ以外にも常に誰かがいて、ゆっくり話せる隙などない。せっかくなら、他の誰にも邪魔されない時に会いたい。だから、今はほとぼりが冷めるのを待っている段階だ。それ以上に、今は部屋を空けるわけにはいかなかった。なぜなら今、自室にロベリアの恋人のシエテが部屋に来ているからだ。団員、特に十天衆の仲間達にこっぴどく怒られたらしく、「ちょっとロベリア、聞いてよーー!」と泣きそうな声でロベリアの部屋に駆け込んできたのだ。
 とはいえロベリアは、シエテと二人っきりでいる状況を本心では避けたがっていた。フェニックスと対峙していた際、その場にいなかったせいで、あの時沸き上がった怒りを中途半端に持て余していたのだ。大切な恩人の縁を切らされただけでも許しがたい。なのに、シエテが自力で解決出来たとは言え、己の恋人の身体も何者かにいいように使われ、おまけに駒として扱われていたなんて考えるだけで吐き気がする。次に対峙した時は容赦はしない。オレとタワーで何回でも破壊の限りを尽くしてやる。不死身だそうだから、最高じゃないか。そんな怒りが常に頭をよぎる。

 そして、久々の恋人と二人っきり。離れていた時間の長さが、再会した瞬間の独占欲を倍増させている。シエテをめちゃくちゃに抱き潰したい衝動が、下腹の奥から湧き上がってくるのを必死に抑えていた。今触れたら、シエテが嫌がっても止められず激しく抱いてしまうかもしれない。
 そんなロベリアの心中を知ってか知らずが、シエテはロベリアのベッドで横たわっている。ロベリアと話している途中で、仲間に怒られていた時の事を思い出したらしく、急に落ち込んでしまった。今は枕を抱きしめて、ロベリアに背を向けて丸くなっている。首筋が露わになった無防備な後姿。薄いシャツ越しに浮かぶ肩のライン、細い腰の曲線そんな姿を見せられたら、煽られないはずがない。ロベリアはサイドテーブルの傍で座ったまま、息を潜めて視線を逸らした。

「エッセルもカトルも、怒ってて全然口をきいてくれないんだよねぇ〜。前も似たようなことがあったけど。はぁ、今回はどれくらいかかるかなぁ
 ロベリアに背を向けながら、シエテはぼそぼそと呟く。枕をぎゅっと抱きしめ、膝を抱えて小さく丸くなっている。精神的にも、相当こたえているようだ。

「ロベリアは
「え

「ロベリアも、怒ってる?」 
 ロベリアは一瞬言葉につまり、静かに答えた。
「いや、キミにはないな。キミの事だ、それが最善だったんだろう?」
 そう、ロベリアの恋人、シエテは強い。ロベリアとタワーが協力して全力を出しても、恐らくは勝ち目はない相手だ。そんなシエテがあっけなく敵側に堕ちたとは思えなかった。それに、仲間に伝えないで一人で動いたほうがやりやすい事だってある。やり方は違えど、ロベリアも似たようなことを以前した。だから、シエテを咎める気は全く無かった。
そっか、信頼してくれるね〜」
 心なしか、嬉しそうだ。声のトーンも少しだけ上がった。頭の特徴的な髪も嬉しそうにピョコンと跳ねた気がした。

 そっと、視線をシエテに向ける。心音は上々、息遣いは落ち着いているが、いつもと比べて元気がない。声も落ち込んでいるとはいえ、覇気がない。やはりいくらシエテとはいえ、今回の件は相当疲れているようだ。

………なに?」
「いや……
 ロベリアの視線に気付いたのか、シエテが拗ねた声で振り返る。上目遣いにこちらを見て、唇を少し尖らせている。未だに疲労が見え隠れし、落ち込んでいるのに、その顔を見ただけでシエテを抱きたい欲が疼くーーシエテを抱いたとしても、エレガンスに振る舞えるのかと考えていたら答える言葉を失ってしまった。

「そう……

 言葉は抑揚がなく、どこか低い声で返ってきた。先ほどよりも、さらに落ち込んでいる。シエテの髪が、先程よりも萎んでいるように見える。


あーあ、俺、頑張ったんだけどな〜。皆には怒られるし、誰かさんは傍に来てくれないし
…………!」

ーーああ、そうか。
さっきから、やたらこちらをチラチラ見ていたのは、シエテの傍に来て欲しかったからなのかーーロベリアはようやく理解した。そして、胸が締め付けられる思いで己の怒りや、欲に蓋をしてシエテの傍に寄る。ロベリアがベッドの端に座ると、背を向けていたシエテはゆっくりと仰向けになり、ロベリアを期待と不安が入り交じったような瞳で、まっすぐ見つめてきた。

デゾレ、シエテ
 シエテの髪にそっと触れながら、言葉を続ける。
「傍に来ないつもりだったんだ。久しぶりだからね、今、キミに触れたら抑えが利かなそうだ
 声が掠れていて、自分でも驚くほど熱を帯びていた。
 そうロベリアが呟くと、シエテは困ったような、照れくさそうな笑みを浮かべ、頬を少し赤らめてロベリアを見つめてくる。
 シエテの髪は相変わらず、ふわふわで触っているだけで心地いい。髪を弄っていた手が自然と動き、シエテの頬へと滑った。ロベリアに触れられ、気持ちがよさそうに目を細め、小さく息を吐きながら口を開けた。
ロベリアたちも大変だったみたいだね大丈夫だった?」
キミほどじゃないさ
 ロベリアの手は、そのまま流れるように首へ、鎖骨へーー胸へ。シャツ越しに伝わるシエテの鼓動が、先ほどよりも速く、高く鳴っている。肌は以前と同じように弾力があって、柔らかく、温かい。以前と変わらない、ロベリアが知るシエテが目の前にいた、ただーー

痩せたな
 筋肉はしっかり残っているのに、全体的に以前よりも心なしか細く感じる。もともとロベリアよりも細い体つきだが、ここまで細くはなかったはずだ。肋骨の輪郭が指先に伝い、肩の骨が少し浮いている。今回の件は、いくらシエテとは言え、壮絶な状況だったのだろう。
……今のキミなら簡単に壊せそうだ」
「えぇ〜、それは聞き捨てならないなぁ〜。手合わせなら受けて立つよ?」
 思いもよらない発言に、シエテはくすっと笑う。
 いつもの調子で言葉を返してくるその顔に、先ほどまで煙っていた怒りが、ふっと煙のように消えていくのを感じた。
「くはっ、冗談さ
 こんなやりとりも久々に感じる。笑いながら応えたシエテの表情を見て、ロベリアはようやく気付いた。今、ロベリアに必要だったのは、恋人との触れ合いと語らいだったらしい。

 ずっとシエテの身体を撫でていた手は徐々に下がり、腹の辺りで止まる。そこから先へ、動こうとしない。その様子を見てシエテは、じっとロベリアを見つめる。その瞳は、何かを期待するように、揺れている。息が少し速くなっているのが、触れている手からも伝わってくる。
……しないの?」
「キミも、まだ本調子じゃないだろ?この前、オレの部屋で疲れて倒れたじゃないか
 シエテが戻ってきた日、シエテは自室に戻らず、ロベリアと共にロベリアの部屋へ戻った。そして部屋に入るやいなや、今まで張り詰めていた緊張が緩んだのか、膝から崩れ落るように疲労で倒れてしまったのだ。
 ロベリアにしても、このようなシエテを見るのは初めてで、酷く動揺した。でも同時に、ロベリアにだけこんな弱さを見せてくれるようになったことへの、胸が熱くなるような嬉しさもあった。

 ただ、あの姿を見てしまった後では、流石に抱くのをまだ躊躇してしまう。今のシエテは、未だに疲労が見える。シエテを抱きたいーー痛いほど抱きたいのに、万全の状態の彼を抱きたいと思ってしまう。
「いや、もう大丈夫だって!」
「シエテ……
 反論するシエテに、どう言葉を紡ぐべきか考えあぐねていると、シエテから思いもよらない言葉が漏れた。

………したい……

 非常に細い声で、ほとんど息のように呟いたシエテの言葉を、ロベリアは決して聞き逃さなかった。その瞬間、心臓が締め付けられるような痛みが走った。シエテが、ここまでオレを求めてくれている、胸が熱い。
 シエテはそう呟いた後、「これ以上、言わせるな」と言わんばかりに、ロベリアを睨みつける。でも、顔は耳まで真っ赤に染まった顔と、潤んで揺れる瞳ではまるで迫力がない。ロベリアの理性が音を立てて崩れ始めていた。

……くはっ、はははキミにそんな事を言わせるなんて、オレもまだまだだな
 不貞腐れてそっぽを向いてしまったシエテから、反応がない。耳が赤いまま俯いている。ーーさっき、シエテがさらに落ち込んだのは、オレが何も手を出さなかったからか
 ロベリアは今、ようやく理解した。
 恋人のためを思って労ろうとしていたのに、逆に仇になってしまったようだ。本来なら、もっと早く気づいていたかもしれないのに、ロベリア自身もこの前のゴタゴタで余裕がなく、見落としてしまっていた。

……シエテ
 シエテの顎に指をかけ、そっと自分の方に向かせる。そして、唇を重ねた。ただ、啄むだけの軽いキスーーそれでも久しぶりのシエテの唇の柔らかさと温かさに、ロベリアは我慢できず、何度も何度も角度を変えて深く交わしてしまう。シエテの吐息が少しずつ甘く混じり、キスが離れるたびに小さな音が響く。

……なんか、久しぶりだ、ロベリアとのキス
 唇が離れると、シエテは嬉しそうに呟き、まるで花がほころばせるような笑みを浮かべてロベリアを見つめてきた。頬が桜色に染まり、瞳が潤んで輝いている。こんな嬉しそうにされては、理性があっという間に壊れてしまう。
「あんまり、煽らないでくれ。今日は優しくキミを抱きたい
 そう言いながら、右手をシエテの頬に触れる。そこに、シエテの手がそっと重なってくる。シエテの指が、ロベリアの手を包み込むように絡めて、離さない。澄んだ、綺麗な空色の瞳が、今は欲を孕んで、ロベリアをまっすぐ優しく見つめてくる。

「いいよ、別にロベリアの好きに抱いても……
 そう心に染み入るような甘い声で言葉を奏でた後、シエテの両腕がロベリアの背中に回されぎゅっと抱きついてきた。そして、シエテから軽く触れるキスをした後、耳元でそっと囁いた。その言葉に、ロベリアは思わず目を見開いた。僅かに残っていた理性が音を立てて砕け散るのがわかった。
 両手でシエテの肩を強く掴み、シエテの唇に噛みつくような激しいキスをする。僅かに開いた口からこじ開けるように舌を入れる。シエテの舌が嬉しそうにロベリアに絡みつく。

んっふっ…………
 顔を離してシエテを見ると、キスだけで顔は紅潮し、瞳は潤んで蕩けている。幸福そうな表情でこちらを見つめ、嬉しそうに、恥ずかしそうに微笑んでいた。





ーーもっと、ロベリアを、感じたい……

 そうシエテに囁かれたら、もう抑えられるはずがない。そう思いながら、ロベリアはシエテを強く、痛いほど抱き締めた。