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あつき
2026-01-05 20:15:42
1519文字
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春まではまだ遠く
付き合ってるドラロナ。真冬のピクニック話。
「ピクニックしよルド君!!」
「今真冬だけど?」
私は人の子の食べ物を見たところで、当然ながら美味しそうとは思わない。だが彩り豊かなおかずたちが、調和のとれた絶妙なバランスで詰められている箱は、美しいと素直に思う。
小耳に挟んだ話では、ロナルド君は恋人にマッハで振られた男だ。家族以外から弁当なんて作ってもらった経験はないだろう。
だから、作ってやったら喜ぶかなと思いついた軽い気持ちは、次第に名案じゃないかと膨らんだ。
目の前に理想のお弁当を拵え、それに喜ぶ顔があれば畏怖欲が満たされる。思い立ったが吉日とワクワクしながら取りかかった。なのにさほど迷わずに作ったおかず達は、彩りとは懸け離れてしまった。からかってキャラ弁にしたりなんてこともしなかった。まだ初回だからな。
本当は、若造がまず間違いなく名前を覚えないであろうキャロットラペを花の形にしたり、少しでも華やかさをと紫キャベツのマリネを隙間にねじ込もうとしたが、やめた。
唐揚げ、海老フライ、卵焼き、ウインナー、ポテト、ミートボールにミニグラタン。おにぎりは王道にさけ、シーチキン、こんぶ。今回はもちろんロシアンルーレットもなし。今回は、な。
キャラ弁ではないが、完全に幼児向けのラインナップ。
だって宝石みたいなキレイな色合いより、こっちのほうが断然喜ぶと知っているのだから。どんなお弁当を作らせたって美味しさは保証出来るが、おこちゃま五歳児の舌と目が喜ぶのは絶対にこっちだと確信がある。
代わりに栄養バランスと彩りを担ったのは、ジャーに入れられた具沢山のコンソメスープ。暖を取ることも強いられ、少々荷が重そうだ。
「うまい」
いつも通りのシンプルな感想だが、おかず達はするすると行儀よく胃に収まり、空になっていくお弁当箱。
「また作ってくれよ」
それは彼の最大級の褒め言葉だ。
「なあ
……
お前の分は?」
「ホットミルクを君の目の前で飲んでいるけど?」
おかしなことを言う。私が食べないことなど、分かってるだろうに。お揃いのジャーに入れてきたのは、たっぷりの熱すぎない適温の特選牛乳。
ロナルド君は何故か眉を寄せて、むっつりとしばし黙ったが、目を逸らしたまま重そうな口を開いた。
「
……
俺がお前の弁当箱になってやろうって言ってんだよ。常に保温されていて最高だろ」
作ってくれた弁当のお礼分だけな、とゴニョゴニョ呟く。
あら珍しく素直なこと! 嬉しいけど、自身をモノ扱いみたいに言うのはちょっと面白くない。
「うーん審議」
「なんだよ! 飲みたくねぇのかよ」
「飲みたいけど」
「じゃあさっさと
……
」
「ここじゃ君の体が冷えちゃうだろ。帰ってからな」
「お前のほうが雑魚で寒さに弱いんだから、温めてやろうってんのに。血を飲めば少しはマシになんだろ」
「じゃあこうすれば良い」
するりと彼のマフラーを解いて、ふたりぶんの首に巻きつける。
「温めてくれるんだろダーリン。もっとひっつけ。ほら腰に手を回せ」
鼻だけじゃなくて頬も首筋も真っ赤にして、出会ってからいつまで経っても初心な反応。
油の差していない機械のように、ギギギギ音が聞こえてきそうなぎこちなさで抱き寄せられた。私が死なないくらいの力加減が保てれば及第点だ。
欲しいのも本音、血を貰うことを不健全、とまでは言いたくないが、なるべくなら傷付けたくないのだ。真似事に過ぎなくても、こうしていればただの人間同士のカップルのようだろう。
帰れば誘い文句を躱すことも、疼く牙を止めることも叶わない。だからひたりと身を寄せ合い、ひとときの穏やかな時間にまだもう少し、浸っていたかった。
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