一月一日は実家で過ごし、二日に寮へ戻って、三日はバスケ部員全員で初詣に行ったあと、引退したばかりの三年生やOBと試合をする。それがここ三年間の正月だ。
今年の一月三日、浮かれ気分の部員たちのざわめきの中で一之倉に渡されたのは、紺色のビブスだった。
「なんか違和感あるな」
独り言にしてはボリュームの大きい声に振り向くと、すでにビブスに袖を通した松本が自分の胸元を引っ張ってまじまじと見つめている。ビブスは適当に配られたから番号はバラバラで、松本の胸元には「8」とプリントされていた。
ほんの五日前、ウインターカップ決勝まで松本が着ていた白6番のユニフォームは、新たにベンチ入りした二年生が身につけている。ユニフォームの中で誇らしげに胸を張る後輩を頼もしいと思う気持ちは確かにあるのに、どういうわけか、みぞおちのあたりがぐうっと重くなる。
そんな一之倉の腹具合などお構い無しに、松本がこちらへぱっと笑顔を向けた。
「なあ、一之倉は何番だ?」
「まだ見てない」
なんとなく後ろめたくて、手元に視線を落とす。両手で握りしめていた自分のビブスを広げると、そこには紺地に白でプリントされた「6」があった。
「お、俺と交換したみたいだな」
松本の声が弾んでいる。一気に熱くなった頬を隠すため、一之倉はビブスに頭を突っ込んだ。
「そんな焦らなくても、まだ試合まで時間あるぞ」
笑い混じりの声に抗議しようと、ビブスから頭を出す。すぐ目の前に松本の顔があって、一之倉は一瞬、呼吸を忘れた。
「……なあ、さっきあいつに妬いた?」
二人にしか聞こえない声で、松本がささやく。影になった顔の中で、細めた目が意地悪く光っている。松本がちらりと視線で示したのは、6番のユニフォームを着ている「あいつ」だ。
ピピッと鋭い笛が鳴って、松本がかがめていた腰を伸ばす。体育館のライトに照らされた松本は、もういつもの顔をしていた。
「お、集合だ」
そう言い残すと、松本はさっさとマネージャーのほうへ駆けていった。頬が、炙られているみたいに熱い。
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