二ノ宮てとら
2026-01-05 08:25:51
3662文字
Public
 

シーソー、プレゼント、年末年始 (嫉妬 / クリスマス) 城海

城海 高校生 交際中
遊戯王 城之内克也 海馬瀬人

シーソー

 師走の深夜、日付が変わる少し前に城之内は海馬邸を訪れた。
「こんばんは。寒いっすね」

   + +

 プレゼントの箱や手紙は居間のツリーの下に置くように指示していた。そこに逃げてきたパーティからの貰い物も加わることになる。
 海馬は自室へと階段を上った。


「年末は訳がわからん」
 バトルコートのままソファに倒れようとする海馬を、慌てて止める人影があった。それは背後から間に立つ形になった。
「凡骨?」
「どうどう」
 白いコートを脱がせるために近付くと、海馬から普段とは違う香りが漂った。
 酒臭いぞ、未成年って断れ! と言いたくなったが城之内はぐっと我慢した。

 煩わしいと、好きにさせていた海馬だがメイドや執事に指示は出していなかった。城之内がコートを掛けに行く先のドアを開けているのは誰だろうか。
「下がってくれ」
 海馬と城之内に会釈をすると使用人は退出した。

 周囲はこの男に甘いのだ。人懐っこい笑顔のせいか。世話を焼く姿が楽しそうだとでもいうのだろうか。
(目線だけを合わせ会話をしているようで、気に入らないが……


 ソファに腰を下ろした海馬は、立ったままの城之内に苛立ちを感じていた。肩に置かれた指先は冷たく、暖房の効いたこの部屋で待っていたのではないのだと知らせてくる。城之内はジャケットにジーンズ、腕に掛けたジャンパーと軽装だった。バイト帰りといった風情だ。
「貴様も忙しいと言っていた。何故ここにいる」
「会いたかったからじゃ、ダメか」
 城之内は思いを率直に口にしてくるが、それには慣れずにいる。
「クリスマスまで忙しくて、年明けまでまた山場で、そんなのオレの毎年だけど、今年は海馬がいるじゃん」
……いるじゃん、とは?」
 対して説明はまどろっこしいと感じていた。
「そう、いるからシフトを無理無理調整してきたんです!!
 全然普通の日だけどさ、お疲れ様ぐらい言いたい訳ですよ。
 おつかれ、海馬!」
 満面の笑みを浮かべられ、おかしな言葉遣いは軽やかで。この相手に悩むことすら馬鹿らしいと思え、海馬は重い頭で思考することを放棄した。
「そうか」
「そうそう」
 学校もっと来いよとか、構えなどと要求はしないけれど、同じ町内にいるのならば顔ぐらいは見たいのだ。海馬の行動をSNSで知るのは寂しいものがある。

「適当に帰るから、海馬は寝てていい……

 海馬は背もたれに深く寄りかかり、城之内を見上げていた。大きな手が広い座面をトントンと叩いている。
 城之内は観念して隣に腰を下ろした。


「この時間が空くとどうやって知った?」
 腕を組み憤慨だと肩をいからせていた。じとっとした目線と非難のこもった声音を、城之内は内心で笑っていた。
(キツいのは変わらずでも、少し鼻声じゃんか)
 目元はとろんとしているし、本人は気付いていないようだが言葉が普段よりゆっくりとしていた。
(酔ってる海馬はかわいいと思う)


「非ィ科学的って言われそうだから、話したくない、です」
……で?」
「いや、話してもさ
 信じてもらえない気がするんだよと口の中でもごもごと呟いていると、足の脛をつつかれ始めた。
「貴様に探偵の真似事ができるとも思えん」
 海馬の爪先での攻撃がだんだんと強くなり、城之内は痛いと音を上げそうになった。
 海馬は肩に体重を乗せ、ぐいぐいと城之内をソファの端に押しやった。
「わっ、これ以上は落ちる」
「ふん、馬鹿め」
 海馬のくぐもった声がして、ついにというところで動きは止まった。

…………
 城之内は説明をするかと腹を括ったが、膝の上に急に重いものがドサっと落ちてきた。
「かいば?!」
 海馬は腕と足を組んだ不自然なポーズのまま、城之内の腿の上に顔を伏せ、すーすーと寝息を立てていた。

 頭を撫でてみるが起きる様子はなかった。
「ホント、お疲れ様じゃん」

……何故か。説明、どうするか )
「今晩がイブか。Merry Christmas な、海馬。 
 もう、帰るよ」



プレゼント

 目覚めたときに海馬はソファの上に一人だった。靴は床に揃えて置かれ、毛布が掛けてあった。
「凡骨、帰ったのか」
 少し待ったが返事は無かった。まだ夜明け前だった。


 海馬家はクリスチャンでは無かったが、ツリーは松の内まで飾ってあった。もちろん正月飾りも出ている。和洋折衷な習慣だが、先代からそのまま続けていた。

 数日経ち世間が年始への賑わいに変わろうとしていた頃。
 居間のツリーの下、プレゼントの箱の上にある手紙を見つけたのは弟のモクバだった。
 青色の封筒に『サンタさんへ』と宛名があった。
「青だから兄サマ宛だと思うけど、子供からのファンレターが紛れたのかな。
 チェックは通ってるだろうし、開けていいかな」
 ツリーの下のプレゼントは一度開封されていた。夢が無いとも言えるが、セキュリティ上必要だった。

 モクバが手の中で揺らす文字に、どこか見覚えがある気がした。
「預かる」
 手のひらを差し出すと、封筒は海馬の元へやってきた。
「兄サマが開ける?」
「ああ。あとで読む」
 読みかけの本に封筒を挟むと自室へと向かった。

 海馬はデスクの灯りをつけた。
 封を開けると中にはカードが2枚入っていた。赤い靴下の絵はがきと、淡いブルーのハートモチーフのものだった。青いほうには表書きと同じく、城之内の少しクセのある文字が綴られている。

『サンタさんへ

 サンタさんも自分にお休みをあげてください。
 疲れが取れたら、近くにいる人に優しくしてください。

 良い夢をみたいファンより』

「ファンだと? ……貴様はオレのせいで悪夢をみているとでも?」

 海馬は、あの晩に城之内に訊きたかったのだ。

『何故貴様は、タイミング良くオレの前に現れることができるのか』

   + +

 正月の深夜、予定よりは早く帰宅しシャワーを浴びた。
 部屋にノックの音が響いた。
 そんなふうに、前触れなくここを訪れる相手は、弟の他は一人だけだ。

「入れ」
「よお」
「稼ぎ時ではないのか」
「朝の配達はあるけど、他は終わったぜ」
「ふうん?」
「あけましておめでとう、海馬」
……あけましておめでとう」

   + +

 城之内は海馬に伝えていないことがあった。
 直感というものではないかと思う。
『海馬が呼んでいるような気がする』というあやふやなもので、言い出せないままだった。

 夢を見る。
 何か言いたそうなのにこちらを見ているだけの海馬の夢だ。
 場所も服装も様々で、雑踏の中を歩いている人間に紛れていても海馬だとわかる、そんな感じだ。
 最初は偶然だと思っていた。
 しかし夢を見た日に海馬の居所を探すと、見つかるし会えるのだ。新聞に記事が出ていたり、ニュースの話題になっていたり。
 最終的な判断、待ち伏せるのが会社か屋敷かは運だろうと思う。


 付き合っているはずなのに、ほとんど会えない関係で、会える機会があるなら本当はキスしたりハグしたりそれ以上をしたいところである。

 何故だと詰め寄られ困ったのは、夢のお告げかなと素直に言ったら、下手をすると会ってくれなくなりそうだと思ったからだ。
 更に、夢に現れる姿が疲れて寂しそうに見えるから来たと言ったら、プライドの高い海馬に怒鳴られ、追い返されそうだと悪い未来しか浮かばなかった。

 だから……どう伝えようかと考え、お願いをすることにした。
 夢を見なかった日に海馬邸を訪れ、プレゼントに紛れ手紙を置いてきた。
 海馬が発見するかどうかは賭けだった。

 吉と出るか凶と出るかは、それこそ海馬に委ねようと思う。



 A Happy New Year !!



                    END



     ――――――――




2026年新春おめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


元は2017年の城海ワンドロで「嫉妬 / クリスマス」の連作でした。
こう繋げたかったのではと、合わせ書き足しました(当時は時間の流れを間違えていたと思います)。

現在書く物も、この設定、SF(少し不思議)が変わらないままです。見かけたら同じような物を書いているなと笑ってください。
当時言葉使いがおかしい城之内がブームだったと覚えてます。


転載・使用禁止(生成AI含めて禁止)。
Please do not re-upload or use my work (text or image).(Reprinting and using my work, including generative AI, is prohibited)



---
メモ シーソーとプレゼント03_ワ7-8_260105