千代里
2026-01-05 07:20:55
7626文字
Public 君ふれ短編
 

君触れ・クガネ編・3話


「くそ……っ! なんでこうなっちまうんだろうよ!」
 下手の考え休むに似たり、という諺が青年の脳裏によぎる。未熟者があれこれ考えてみても、結局休んでいるのと同じ意味だっただろうか。
 己が未熟者などとは考えたくない。だが、初めて見る魔物の前で、手が震えて得物が抜けない武者など、どう考えても未熟者としか表現できまい。
「あんなノロマそうな魔物のくせに……うわっ!!」
 どん、と青年の背後の地面が爆発する。後ろから迫ってきた、巨大な魔物が地面を叩きつけたのだ。
 爆ぜた土と共に青年は宙を舞う。着地の衝撃と同時に、強かに顎を打ち、一瞬意識が吹き飛ぶ。
 すぐに覚醒し、慌てて飛び起きたものの、その頃には魔物は青年のすぐそばまで来ていた。
 故郷で語られる『塗り壁』という妖怪を思い出させる、四角い姿形。小さな目と細い手足は何やら奇っ怪な置物のようにも見える。
 しかし、見た目がどれだけ風変わりであろうと、興奮状態に陥った魔物は脅威以外の何者でもない。
「く、来るならこい! 返り討ちにし、し、してやるっ!!」
 自分でもへっぴり腰だと分かりつつも、腰にさした護身用の刀を抜いて魔物に対峙する。
 腰は引けているし、足は震えて立っているのがやっとだ。道場の同胞が見たら笑われること間違いなしだろう。そう思うと、まるで魔物までこちらを見下して笑っているように見えてきた。
(くそ……! どいつもこいつも、オレのことを馬鹿にして……!)
 脳裏にちらりとよぎったのは、出立前の父親とのやり取りだった。護衛など、自分がいるのだから必要ないと言ったのに、それでも父親は最後まで傭兵を雇った方がいいと主張していた。
 ただでさえ、家にはお金がない。傭兵ならオレが代わりにできる。
 そんな青年の主張に渋い顔を見せた父親は、それだけで青年の矜持に泥を塗った。
 もっとも、今こうして魔物に追いかけ回された上に、ろくに武器すら振るえていないのだから、父親の予感は当たっていたのだろう。
 塗り壁もどきの魔物は、じろりと青年を見下ろしている。
「な、何もしねえなら、こっちから行くぞ!」
 魔物の視線がもたらす緊張に耐えかねて、掛け声か悲鳴かわからない声と共に青年は刀を振り下ろした。
 だが、乾いた皮膚は存外に固く、少しばかり傷はできたものの致命傷には到底至らない。それどころか、半端な痛みのせいで、魔物の怒りを買ってしまったらしい。
 魔物はどすんと巨体を揺らし、地に着きそうなほどの細長い腕をしならせ、青年に向かって勢いよく振り下ろす。
――――!」
 直撃したら、きっと頭が千切れ飛ぶ。そう確信し、目を瞑った時だった。
「伏せてください!!」
 凛とした、澄みわたった鈴のような声。
 指示をするのに慣れたその声に突き飛ばされるようにして、彼は地べたへと転がる。同時に、空気を焼き尽くすような炎の音が突如彼の『角』に響いた。
(一体、何が起きて――!?)
 恐る恐る頭を持ち上げた男は、目撃する。
 杖から炎を放ち、魔物を焼き払わんとする白き戦乙女の姿を。
 
 ***
 
「よかった、間に合いました!」
 思わず声に出して喜ぶも、ユキハネは簡単には気は緩めない。草原の片隅で、今にも魔物――グゥーブーと呼ばれるものだ――に襲われそうになっている青年を目にして、ユキハネは真っ先に炎の魔法で魔物を攻撃した。あとのことを考えていては、彼が怪我をすると判断してのことだ。
 グゥーブーが、不愉快そうにユキハネを睨みつける。その小さな瞳は目の前の青年から、ユキハネへと標的を移したようだった。
(グゥーブーはもともと大人しい魔物のはずです。それに、調教したら大道芸を覚えるくらい賢い。それでいて、攻撃をされるとその巨体で暴れ回り、大きな被害を出すこともある)
 ユキハネの頭の中では、フェリキシーに叩き込まれた魔物の情報が駆け巡る。
 その中に魔道士一人でグゥーブーを追い払えるような解決策がないかと、必死で情報の海を潜っていく。
「そもそも、グゥーブーはこちらが攻撃しない限りは、人間に攻撃するような真似はしないはず。一体どうして、こんな風に暴れているのでしょう」
 そこまで考えて、ユキハネはグゥーブーの背中に傷跡がいくつか刻まれていることに気がつく。真新しい傷跡は、青年の得物がつけたものではなさそうだ。
 瞬間、ユキハネの脳裏に、ここに来るまでに目にした光景がよぎる。
「なるほど、そういうことなら――
 しかし、ユキハネが次の魔法を唱えるより早く、グゥーブーが大きく身を捻った。人間ならば上半身を捻り、腕を大きく振るう一撃だ。
「いけない!」
 咄嗟に魔力でグゥーブーの目の前に辿り着くための道筋を作る。滑るように魔力になれば、歩くよりも数倍早い速度で移動することが可能だ。
 おかげで、ユキハネは魔物の攻撃の瞬間に間に合った。
「あんた、何してんだ! 逃げろ!!」
 青年が吼える。魔物に襲われかけても、ユキハネの身を案じてくれる優しさは嬉しいが、今は青年の言葉に従うつもりはない。
「動かないでください!」
 男が二の句を継ぐ前に、透明な魔法障壁がグゥーブーの強打を受け止めた。ミィハほど障壁魔法は得意ではないが、グゥーブーは元々戦闘に長けた魔物ではない。おかげで、腕がしびれるほどの衝撃で済ますことができた。
 グゥーブーの一撃を凌ぎ、間髪入れず、ありったけのエーテルを一瞬だけ活性化させ、続く魔法へと繋げる。
「お願い、どうか大人しくなって!」
 杖の宝珠からとびきり大きな水球が生まれ、グゥーブーの体を包む。
 身を大きくのけぞらせるグゥーブーに、屈んでいた青年が「これなら!」と前のめりになった。
 しかし、刀を構えた青年を、ユキハネは片手で制する。
「何をしているんだ! 今なら、トドメを刺せるだろう!」
「そうかもしれません。でも、ほら」
 ユキハネの指さした先で、グゥーブーは体を振って水を振り飛ばした。
 だが、再びユキハネたちを見下ろすグゥーブーの視線に敵意はない。水を被せられて、頭が冷えたといったところだろうか。
 まだ不愉快そうに体を振ってはいたものの、やがて大きな欠伸を一つしてから、ゆっくりと草原の果てへと去って行った。
「もともと、あの魔物はそこまで気性は荒いものではないのです。ただ、ジャッカルに追い立てられていたせいで、気が立っていたようです」
「とてもじゃないが、そんな風には見えないな。あの魔物は、オレと親父の荷車に突撃してきたんだぞ!?」
 青年の説明によると、街道を通っていた青年たちの元に、突如グゥーブーが姿を見せ、大暴れを始めたらしい。
 護衛役を引き受けていた青年は、グゥーブーをどうにか荷車から引き離して、街道から離れたこの場所までやってきたのだ。
「その後、ジャッカルたちがあなたのお父様の荷車を襲ったのです。おそらく、ジャッカルはグゥーブーを駆り立てて混乱させた状態で狩りを進めようと考えたのでしょう」
「そういう理由があったのか……待てよ。じゃあ、親父の荷車は今、ジャッカルに襲われているっていうのか!?」
 すぐさま助けに行こうと、立ち上がる青年を「落ち着いてください」とユキハネは宥める。
「そちらは、私のお師様が引き受けてくれています。お師様はとても強いので、今頃ジャッカルを追い払っている頃だと思いますよ」
 ユキハネの説明を聞いて、青年は漸く安堵の息を漏らした。彼は手に握ったままただった刀を腰の鞘に戻そうとしたが、指が強ばってしまったせいか、なかなか武器を仕舞うこともできずにいた。見るに見かねたユキハネは、杖を持ち替え、彼の手に自分の指をかける。
「あ、あんたはそんなことしなくても」
「気にしないでください。もし気にしてしまうようなら、同族のよしみということにしておいてもらえませんか」
 そう言い、ユキハネは青年――アウラ族の青年を安心させるように微笑みを向ける。
 深い青色の髪を一つにまとめ、白い鱗が目立つ長身の青年は、間違いなくユキハネと同じアウラ族だ。
 ユキハネは慎重に青年の指に力をかけ、刀を引き剥がしていった。その間、青年は何か言いたげに「ああ」だの「その」だの言っていたが、結局どれ一つたりとて言葉の形をとっていなかった。
 ガシャン、と音が響き、刀が地面に落ちる。青年は強ばった指を何度かもう片方の手で揉んでから、
「あり、がとう……。悪いな、手間をかけさせちまって」
「御礼を言われるほどのことでは。とにかく、無事でよかったです。お父様も、大層心配しておられましたから。そうだ、どこか怪我はしていませんか」
「別に、大した怪我はしていな――っつぅ!」
 勢いよく腕を振ってみた青年は、すぐに苦痛に顔をゆがめてしまった。片腕を庇うような仕草から察するに、酷く打って痛む所があるようだ。
「痛む所を見せてください。手当をします」
「いや、これぐらいは本当に大したことがないから」
「怪我は放っておくと、後から大変なことになってしまう場合もあります。遠慮せずに見せてください」
 苦しそうな顔の青年を見ていると、ユキハネにも動揺が走る。だが、毅然とした口調であっても、決して動揺が移るような話し方はするまいと、ユキハネは内心で呼吸を整える。
(相手に心配をかけさせてはいけない。一呼吸を置いてから、傷の様子を確認する。その後に応急手当て、ですよね)
 これまた、フェリキシーが冒険者の基本として教えてくれたことだ。もっとも、あのぶっきらぼうな師匠が、これらのことを逐一教えてくれたわけではない。
 ユキハネは彼の振る舞いを目にして、学ぶべきだと思ったものを身につけてきたのだ。
 最近は、ミィハやケイといった新しい友人もできた。特にミィハは医療の分野に明るく、魔法的な対処以外の治療方法を教えてくれた。
「腕を強く打ったのでしょうか。腫れていますね。動かせますか? 曲げることは?」
「痛いけど、それはできる。なあ、もしかしてオレの腕、折れちまったのか?」
「いいえ。強い打撲だけだと思います。錬金薬の湿布を貼って固定しておきましょう。リムサ・ロミンサに着いたら、治癒術師の方に診てもらってください」
 不安げな青年に笑顔で答え、ユキハネはポーチから手際よく錬金薬と布を取り出す。布に錬金薬を浸して当てるだけでも、打ち身には効果がある。まして、この薬は痛み止めの成分も入ったミィハお手製の錬金薬だ。
(多分、これで大丈夫……のはずです)
 自信満々に手当しているように見えても、ユキハネは今すぐにミィハをここに連れてきて、この手順で正しいか問い掛けたかった。
 もし、治療の手順を間違えていたら。もっと重傷で急いで治す必要がある怪我だったなら。
 そんな不安ばかりが生まれるが、それを今吐露してはいけない。なぜなら、
(私は、冒険者ですから)
 行商のために街道を行く青年に比べれば、経験豊富で頼り甲斐があると示さねばならない。時にはったりも必要なのだと、ユキハネは己を叱咤する。
 手当てが終わる頃には、青年の顔色からはすっかり不安が拭われていた。痛み止めが少しずつ効き始めたのかもしれない。
「それにしても、あんたはしっかりしてるんだな。あんたみたいに小さな女の子があんなに凄い魔法を使えて、手当もできるなんて……正直びっくりしたぜ」
 アウラ族の青年はユキハネに向けて笑顔を見せたが、そこには微かに影が混ざっているように見えた。しかし、その理由を問うていいか分からず、結局ユキハネは沈黙を選んだ。
「そんじゃ、親父の様子を見にいかねえとだな。あんたの師匠って人にも、御礼を言わないとだ」
「怪我をしているのですから、無理をしてはいけませんよ」
 ユキハネの注意に、そうだったと腕を見やる青年。地面に落ちた刀を拾い上げた様子からも、彼もそれなりに戦う力は持っているのだろう。
「大丈夫です。お師様はとても強いですから、お父様のこともきちんと守ってくれていますよ」
 青年を励ますように言ったものの、フェリキシーのあの性格を思うと、かすり傷ひとつついてないとは言えない、とユキハネはこっそり苦笑いをこぼした。
 
 ***
 
「危ない所を助けていただき、ありがとうございました。フェリキシー殿。ユキハネ殿」
 深々と頭を下げる、アウラ族の壮年の男性。ユキハネが連れてきた青年と、どことなく面差しが似ているのは、やはり親子だからだろうか。
「私はムヒョウ。こっちはせがれのヒョウセツといいます。降神祭の使者の方々と共に、西方にて東方の品々を商うため、こちらに滞在しておりました」
 ユキハネが青年――ヒョウセツを連れて街道に戻ってくると、予想通り、既にフェリキシーはジャッカルたちを追い払った後だった。
 ムヒョウはヒョウセツの無事を喜び、危ない所を助けてくれた礼をしたいと、いくらかのギル貨幣をフェリキシーに渡したところだった。
「街道の真ん中でくたばられたら、イエロージャケットに後から文句言われるから手ぇ出しただけだ」
「御礼もいただいていますし、それで十分ですよ」
 結果的に護衛の押し売りのようなことになってしまったが、ムヒョウは義理堅く謝礼を支払ってくれた。これで謝礼を出し渋られたら、一悶着起きるところだったが、今回は問題なさそうだとユキハネが思ったときだった。
「そこで、もう一つ頼みたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「何だよ。冒険者ギルドの仲介も通さずに俺たちに依頼でもする気か?」
 冒険者ギルドを間に挟まない依頼は、仲介手数料が入らない分、値段は安く済む。しかし、依頼を出す側、受ける側双方の安全や人間性の保障はできない。
 依頼をする側が金銭を出し渋る可能性、受ける側が途中で依頼を放棄する可能性。それらの危険を踏まえて依頼をすることになるので、手堅い商人たちは冒険者ギルドの仲介無しの依頼はまずしない。
 東方から来た者は、その流儀を知らないのではないかと、ユキハネは内心はらはらしていた。
「こうして出会えたのも何かの縁でしょう。謝礼は弾みますので、どうか我々が西方に滞在している間、護衛を受け持っていただけないでしょうか」
「親父! 護衛なら、オレがするって言っただろ!」
 ユキハネが何か言う前に、ムヒョウの息子であるヒョウセツが口を挟む。だが、孝行爺然としたムヒョウはヒョウセツに対しては厳しい表情を見せ、
「その怪我をした腕で、一体何を護れるというのか。自分の体調も考えられない者には、大事な荷を任せることはできない」
 静かな語調ではあったが、彼の断固とした物言いはヒョウセツの反論を封殺するのには十分だったようだ。
 親子のやり取りを見守っていたユキハネは、そっと師匠を見やる。
「お師様。どうしますか」
「西方に滞在している間っつったな。そっちは、この後街道を使って他の場所に行く予定はあんのか」
「いいえ。この後は、リムサ・ロミンサという町に滞在する予定です。町の中でも商いを行う予定ですが、用心棒がいた方が何かと面倒ごとは少なく済むでしょう」
「用心深いことだな。他に、何か依頼したいことがあるんじゃねえだろうな?」
 冒険者ギルドの仲介が入らない依頼の場合、先に相手の希望を全部聞き出すのが肝心だ。
 契約書を作る段階で、想定外の事項を無断で追加される例も少なくない。
「それでは、もし、出来るならばで良いのですが。……せがれの怪我が治りましたら、こやつに魔物と戦うための稽古をつけてやれないでしょうか」
「親父! なんでそんなことを……!」
「せがれは魔物と戦ったことがありません。道場での訓練と、魔物との戦いは訳が違います。こいつは、将来用心棒になりたいと言っています。それなら、本番の稽古は早いほうがいいでしょう」
「そいつに関しちゃ、西も東も違いはねえだろうな」
 フェリキシーは、ちらりとユキハネを見やる。
 エオルゼア地方では、街の門を抜ければ魔物が跋扈する世界が待っているのが日常だ。ユキハネも、自分が門を出て初めて魔物と遭遇した瞬間のことを、今でも覚えている。
 東方はやや事情が違うようだが、将来魔物と戦う職業を選ぶのならば、早いうちに魔物と対面するという状況に慣れておくべきという意見には、ユキハネも同意できた。
(そうなると、この方の訓練はお師様が引き受けるのでしょうか。刀を使われるようですし、お師様の方が戦い方が近いでしょう)
 自分は父親の方の護衛か、とユキハネが頭の中で今後の予定を組み立てた時だった。
「ユキハネ。てめえは、このガキに訓練つけてやれ」
「えっ!? ですが、私では戦い方が違いすぎませんか」
 それに、彼も同族の、おそらく同年代と思しき少女に教えを請いたくないだろう。同年代だからこそ、ユキハネもヒョウセツのなけなしのプライドがどんな形をしているか想像できていた。
「別に、こいつに武器の使い方を教えるってわけじゃねえんだろ。魔物と対峙した時の心構えなんざ、俺はもう覚えてねえ。それなら、まだてめえのほうが頭ん中に残ってる。違うか?」
 フェリキシーの発言は、正鵠を得るものだった。ユキハネが冒険者として活動した期間は、フェリキシーのものと比べるとここ最近といえる。彼にとっては当然すぎる心構えも、ユキハネにとっては最近まで何度か復習したものだ。
「そういうことなら……わかりました。よろしくお願いしますね、ヒョウセツさん」
「あ、ああ……。でも、本当にオレは」
「その前に、まずは怪我を治さないとですけどね」
 先ほどの父親への態度から、ヒョウセツが指導を拒む可能性を危惧していたが、存外素直に彼は頷いてくれた。どこか落ち着きがないのは、まだこの話に納得がいってないからだろうか。
「さて、いつまでも街道の真ん中に突っ立っていたら、他の通行者の方々のご迷惑になります。契約については、休憩所についてからでよろしいでしょうか」
「構わねえ。そうと決まれば、さっさと行くぞ」
 フェリキシーに促され、ユキハネは荷台の荷物は脇に寄せ、自分が座れる空間を確保する。商人の護衛の代わりに荷台の空間を一部借りるのは護衛に与えられた権利だ。対面には、怪我人のヒョウセツが座ったが、ユキハネとは目を合わすまいと視線は明後日の方向を向いていた。
(嫌われちゃったでしょうか……。あれ、そういえば、この匂い)
 背もたれがわりにしている樽から漂う匂いに、ユキハネは形の良い鼻をくんと動かす。
 それは、昨日ケイのキッチンで目にした東方の調味料と同じ匂いであった。