望月 鏡翠
2026-01-04 21:54:33
970文字
Public 日課
 

#1955 泥の味を知るものたち5

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作


 文字の読み書きが終わったのなら次にやるべきことがあると、エリセオは追い出されていった。他に人がいたら話せないことがあるのだろうと察して、今度はトルガもここでやっていけばいいだろうとは言わなかった。
「彼と見比べると、あなたが幾分ましに見えますね」
「そうだろう。我ながらよくやっていると思うぜ」
 書き終わった書状をジョアンに任せる。
 皮肉なのだろうが、トルガは言葉のままに受け取った。
「お前の思う中で最も信頼できるものを警護につけてくれ。俺のせいで女が死ぬのは耐えられん」
「言われなくとも。このタイミングで戦いの火蓋を切るのがリュネストになるのは得策ではない。それがあなたの判断でしょう」
「その通りだ。他が勝手に潰しあって疲弊してくれればそれでいいんだけどな」
 他家の策謀に巻き込まれないようにするためにも、特に本国から来た客人の警護には最新の注意を払わなくてはならない。
「しかし他家がそのような弱腰とは限らないし、都合よく彼らばかりで戦をするとは限らないでしょう?」
「そうだな。攻めのときは必ずくるし、俺たち自身が真っ先に潰される可能性も否定できない」
 バンデイアに古くからいる貴族連中からすれば、アンタイアーとリュネストあたりが殺し合ってくれれば、都合がいいだろう。ディルストーンに取り入ったリュネストを憎しと思って先に潰しにくるかも知れない。
 しかし何より、最も望まない展開は、このままディルストーンが幼き王の後見人としての立場を確固たるものにしたまま、玉座に収まることだ。
 ディルストーンに阿り、リュネストは今そちらの方向に舵を切っている。このまま進むがそれで構わないのかと、諸侯に圧力をかけている状態だ。
 もし他の家もそれに続くなら、どこかのタイミングで剣を取らなければ、再び家同士の力関係は硬直する。
「それについて、一つ興味深い話を見つけました。オーキが近頃、サンドリエイルと親しくしているようです」
「へぇ、面白いな」
 オーキ家はサンドリエイルに長らく使える騎士の家柄。王とその剣である。五名家の内二つが同盟を結ぶことで玉座を盤石にしていたと言っても過言ではない。
 それがここに来て揺らいだというのだ。
「やはり、それがリュネストを取り込もうとした理由か」
 トルガは喉の奥で笑った。