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chuahaaan
2026-01-04 20:31:29
2096文字
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AC6
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獅子の腹の内
年明け早々G1ミシガンの仕事を任されたG3五花海は自らの選択が誤っていたと振り返っていた
Q. なぜ五花海?
A. お年賀が鯉龍だったから
黄色く甘ったるいエナジードリンクの封を切った五花海はやや後悔していた。
なまじ知識と運と努力すればなんとかなる程度の才があったせいでベイラム専属AC部隊の3番手になり、退役まで生き延びれば生活に困らない程度の老後が待っているはずなのだが、手を抜いても積み上がっていく仕事の量にあの日の選択を悔い始めた。
「これは、利子をつけたくなりますね」
ポケットの中の隠しポケットに隠しているとっておきの“漢方薬”をエナジードリンクで飲み下した。舌には香辛料のような辛味と薬臭い粉の匂いと甘苦い後味が残った。
◯⬜︎◯⬜︎◯
「ぐ、ぐぅ
……
何だ、これは」
12月31日の朝に始まり、日暮れまでかかったレッドガンの餅つきが終わり、あわただしく年を越したミシガンは夕日の当たる執務室で痛む腹を抱えていた。
仕事は問題ない。じわじわと強くなる痛みを堪えながら日々の案件を処理し、初詣(封鎖機構の燃料基地襲撃作戦)の下準備に先行している工作部隊への指揮をとり、今し方ベイラムの重役達へ遠距離通信映像で新年の挨拶を済ませたところだ。
片付けた机に突っ伏したミシガンは考えた。どこが痛いのか?腹の上側だ。吐き気もあるのに下から出したい感覚はない。
食あたりの可能性は?
昨日はただの餅三昧だった。朝の正月メニューの雑煮が生煮えだった可能性は低い。おせちが傷んでいたとしたらすでに食中毒の報告が上がっているはずだ。となると疑わしきは昼食だが、香ばしい焼き餅を四切れトッピングした力うどんが原因とは考え難い。
であれば何が原因だ?過去の手術跡とも重ならない痛みが老いぼれた脳の隙間を埋めたせいで何も思いつかない。ただふつふつと湧き出る苛立ちと脂汗は額を横切り、豊かな白い眉に吸い込まれていく。
このままで終わってたまるか!!
震える手で携帯電話の電源を入れた。
◯⬜︎◯⬜︎◯
「G3、そんな急いでどこ行くんすか?
「総長のお部屋です」
「ガンバレー」
戦場の正月は短い。そもそも管理職である五花海にそんなものはあってないようなものだ。とはいえ心は休みたがっているようで仕事でミスをしてしまったようだ。夜も近いというのにミシガンの携帯電話からの着信が何度も来た。
電話で要件を聞こうと折り返しかけたが応答がない。こんなことをされる心当たりはないが、過去の何かが問題になった可能性はある。ルビコンのどこかに逃げる選択肢はないし、隠したところで酷い目にあうことはわかっている。
憂鬱だが仕方ない。ミシガンが詰めている執務室の前に立ち、息を深く吸って心を整える。冷えた手を握りドアを叩く。
部屋のスライドドアが揺れた。叩くたびに左右に揺れた。
いつもであれば鍵をかけているこの扉が動くことはないはずだ。思いもよらぬ手応えに五花海の細い眉が寄った。
立ち位置を変え扉の影に入り、少しずつ開けていく。
「総長ー、お加減いかがですか?」
「
……
う
……
ぁぁい
……
お前
……
か」
所在のわからない侵入者を焦らしつつドアを少しずつ開ける。中の様子はまだ分からないが、耳に覚えのある低いうめき声が聞こえる。
息はまだある。
「総長、お加減は?」
「
……
救護
……
呼べ」
侵入者がいるとしたらミシガンがここまで大人しくしているわけがない。くじ引きとしては割に合わないが、一か八か、扉を開け放った。
「それで、こうなってしまったわけですか」
五花海は点滴に繋がれた獅子が横たわるベッドの傍でため息をついた。
体調不良で倒れたミシガンの不在を埋めることになった多忙なナイルの代わりに発見者である五花海が病状把握のため治療室に派遣されることとなった。素行不良の寄せ集めのレッドガンの統率と士気を維持するにも、この事実があまり大っぴらになっては困るという事情もある。
痛み止めが効いて顔色が良くなり、余裕ぶった表情でミシガンがにやりと笑った。
「変な薬を勧めてこないのか?」
「餅の食べ過ぎで腸閉塞になった貴方にできることはありません」
肩をすくめる五花海を見てミシガンは高らかに笑った。腸に詰まったモチ以外は何も残っていない腹を抱えひとしきり笑った。
「
……
まったくだ、世話をかける」
「本当ですよ」
五花海は立ち上がり、首で小さく謝意を示したミシガンを見下ろした。幸か不幸か非番の日に携帯電話の通信履歴で偶然呼び出されただけで半日近く付き合わされているのだ。だからといって表情に出しても事はうまく運ばない。目を細め、仏のように穏やかな顔と神父のような穏やかな声に整える。
「今すぐ礼を出せとは言いませんよ、当分貴方の仕事の代行で忙しくしますので後ほど、貸しにしておきます」
「一応言っておくが、恩の利子で儲けられると思うな」
「もちろん、貴方の財産はその身一つだけですから得られるものなんて知れています
――
お大事に」
「うむ、口うるさいナイルにお前の手腕を見せつけてやれ」
ミシガンが復帰するまで1週間、部屋を出た五花海はナイルや部下に丸投げして上がる自身の査定の算段を立て始めた。
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