ニャモニ
2020-10-31 23:06:21
3474文字
Public 【FF14】エス光😺
 

守護天節2020(エス光 )

ハロウィンネタ2020のエス光です。何が書きたかったのかはご覧の通りです!

「その格好で行くのか?」
 紫色の胸元が空いたビスチェのミニスカワンピース。チョーカーについているカボチャの飾り位置を鏡で直していると、眉間に皺を寄せたエスティニアンが険しい目つきのまま話しかけてきた。
「うん。守護天節をマネたイベントをセブンスヘブンでもするんだ。その手伝い……って、言ってなかったっけ?」
 大きなトンガリ帽子を被り、長い手袋に指を通していく。これで魔女の仮装は完成だ。
「聞いてはいたが……その服で行くのか?」
「うん」
 立ち上がってエスティニアンの前でくるりと回るって見せる――が、反応がない。眉間一つ動かさず真面目な面持ちだ。
「あれ、……似合わない?」
 恐る恐るエスティニアンの顔を覗き込むと、端正な顔にますます深い皺が刻まれる。
……似合っていないわけ、ないだろ」
 なぜそんなに苦しそうに言うのかは分からないけれど、褒められたのは嬉しくて頬が緩む。
 テーブルの上、お菓子を詰め込んだ大きな籠を手に取る。このお菓子作りや、ラッピングをエスティニアンも手伝ってくれたなんて知ったら、アルフィノは全部言い値で買うかもしれない。
「エスティニアンが似合うって言ってくれたから安心した! じゃあ、行ってくる」
「本当に……、行かなきゃダメなのか」
 玄関へ向かうと腕を優しく掴まれる。こんなに引き止めてくるのは珍しくて、可愛くて。
 捨てられそうな大型犬のようにも見える。こんなエスティニアンの姿は、誰も見たことがないんじゃないか?と思うと、なんだか楽しくなってしまう。
「前からしていた約束だし。エスティニアンはそういう仮装とかは嫌だって言っていただろ?……早く帰ってくるから、ね?」
 腕を掴むエスティニアンの大きな手を外して、めいっぱい背伸びしても届かないから軽くジャンプして彼の頬に口付ける。
「いってきますっ」
 その腕に捕まって甘く溶かされてしまうと、どこにも行けなくなってしまうから。
 驚いているうちにエスティニアンから離れ、後ろ髪引かれる思いのまま部屋から出て行った。

 自由に仮装した人々がセブンスヘブンに集まっている。ご機嫌に酔っ払った冒険者たちや、鬼やお化けの格好をした可愛らしい子どもたち。酒場はいつもより活気付いて、隣でお揃いの魔女の格好をしたアリゼーに話しかけお互いの声を聞き取るのも一苦労なほどだった。
 お菓子を貰いに来た子どもたちへ暁の女性陣と配っていると、頭から足先までをすっぽり包む、お化けのスピリット装備を着た集団が空になった籠を持って帰ってきた。
 呼び込みと盛り上げにと、街中を一回りしてきた暁の男性陣だ。
 ララフェルサイズが足りないとのことで、その中で唯一タタルが紅一点で参加している。
 ホーリーボルダー、ウリエンジェ、サンクレッド、グ・ラハ、アルフィノ、タタル。と、背格好がバラバラなお化けが並ぶのは壮観で、今の客入りからして呼び込みは大成功だったのだろう。
「こっちは終わりだ。着替えて飲むぞ」
「付き合いましょう」
 石の家へとぞろぞろと入っていく姿が妙に面白くて、同じ気持ちなのかアリゼーと目が合うとお互いに笑い合う。
 賑やかな夜はあっという間に過ぎ、子どもたちは寝る時間になったのかいつの間にかいなくなり、店内は守護天節割に乗じて飲み続けている大人たちだけになった。
 籠の中のお菓子も残すところあと一つ。
「トリックオアトリート……その、まだ残っているかな?」
 石の家で男性陣と過ごしていたアルフィノがやってくる。
「呆れた。さっきは子どもたちの物だから私は我慢するよ。とか言っていたくせに」
「もう子どもたちは帰っているだろ。余ったら勿体ないじゃないか」
 アリゼーにからかわれながらも、もらう気持ちは揺るがないようで差し出されたままの手の上にラッピングしたお菓子を置く。
 アルフィノは嬉しそうに破顔してから、一つ咳払いして。
「ルカやアリゼーたちも疲れたろう? お菓子もみななくなったようだし休んでくれ」
「わかった。盛り上がってよかったな!」
「ところで……、エスティニアン殿は?」
「お家で留守番するって。仮装して欲しいなって言ったけど、嫌だ、無理だって断られた」
 洋服を用意しても石の家に着ていくのは拒否されて、それなのにしょんぼりとした顔で見送っていたエスティニアンを思い出す。
「二人とも、中に入らないの? 先に行っているわよ」
 一足先に石の家へと戻るアリゼーに緩く手を振って見送り、よしっと小さく呟く。
「私は帰る! アリゼーやみんなに上手く言っておいて」
「え? 休まなくても平気かい?」
「立っていただけだし平気! お疲れ様!」
 ふかふかなアルフィノの頭を撫でてから、空になった籠を胸に抱きセブンスヘブンの出入りをくぐる。
 外はすっかり真っ暗でもセブンスヘブンでお祭をしているせいか、人通りは多い。リンクシェルを取り出してこの先に続くただ一人を想う。
……あ、エスティニアン? 今から帰る」
 リンクシェルの先が繋がったのを感じ、話しかけてみるものの返事がない。
「エスティニアン? あれ?」
 聞こえてないのか? 人通りのある外ということもあり少し声を張るために建物の裏側へと回る。
「もしもし? もしも――っ!」
 路地裏へと一歩入った直後、物凄い強さと速度で腕を取られて引き込まれ、あっという間に大きな影に背中から羽交い締めされていた。
「『大声出すなよ』」
 叫ぼうと息を吸うタイミングで、リンクシェルと肉声から良く知った声が同時に響いた。
「エスティニアンッ。……びっくり、した……??」
 背後へと振り向く。
そこには乳白色に輝く丸い月を背に銀の髪を靡かせる、まるで本から出てきてしまったかのような美麗な吸血鬼――の、仮装をしたエスティニアンがいた。
 口につけているオモチャの牙に違和感があるのか、いつもより眉間の皺が深くて神経質そうな表情がまた一段とそれっぽくて。
「わあ……
 立てた襟も胸元の豪華なレースにも負けない美しい顔。スラッとした手足に黒いスーツがよく似合う。……似合うと思って私が見立てた仮装なのだから、当然なのだけど。
 想像と現実は破壊力が違う。
 押さえつけられていた身体を離してもらい、しっかり正面に向き直って見上げる。
「なんだよ。着ないなら来るなって言っていただろ……
 じろじろ見られて気まずいのか、不貞腐れたように言って形の良い唇をへの字に曲げていた。
「すごい、かっこいい」
 惚れ惚れするほどかっこいいのはお世辞でもなんでもなくて。
私を迎えに来るために、あれだけ嫌そうにしていた仮装を律儀に守って来てくれたのも嬉しくて。
 ニコニコしながら見つめていると、褒められて満更でもないのか不満げだった表情が和らいでいく。
「菓子配りは終わったのか? 何か絡まれたりはしなかったか?」
 空になった籠が分かるように向けて見せると、エスティニアンに腰を抱き寄せられる。
「うん。最後の一個はアルフィノにあげたし、何もとくにはなかったと落とうけれど……
 いつもと違うゆっくりとした動作で腰のラインを撫でられる。スカートから伸びた尻尾を指で梳かれるとゾワゾワして身震いしてしまう。
 月光に照らされた銀糸のような髪が艶めき、夜の影でいつもより瞳は暗く静かだ。
……お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ? だったか」
「そうそう。今日はいっぱい聞いたぞ」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」
「もうほんと、たくさんお菓子が欲しくて何往復もした子がいたんだ」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」
……
 繰り返される言葉にエスティニアンが何をしようとしているかをやっと察すると、頭上のエスティニアンの相貌は意地悪なものに変わった。
……お菓子はもうないって知ってるのに」
 腰を撫でる手がゆっくりと背骨のラインを滑り、首元を隠すチョーカーを外していく。
 チョーカーのなくなったビスチェのワンピースは、首筋から胸元まで何も飾るものがなく我ながら酷く無防備な姿になった。
「まずは吸血鬼らしい悪戯をしとくか」
 耳元に近付いたエスティニアンの唇から、お腹奥に響いてくるような低い声で囁かれる。これからされることに、自ら差し出すように頭をかしげて首元を晒す。
……痛く、しないでね」
「善処する」
 大きな口が開いて、尖ったオモチャの牙が柔らかく首筋に沈んでいった。