碑硫竜紀
2019-02-05 12:01:53
981文字
Public 🔥ノ丸
 

【ダニリオ】梅の花


「リオンチャン、アノ花ハ何デスカ?」

 ダニエルが上のほうを指してそう言うから、その方向を見てみると小さなピンクの花が咲いていた。
 部活も大会が一通り終わって練習量が減ってきている時期だった。今日も放課後の稽古は中休みとして練習はなく、自主練習のみとなっていた。土日の部活に出るからと日課の基礎練だけにして、俺とダニエルは勉強会をしようとまだ明るい時間に学校を離れたところだった。
 ダニエルはまだこっちに来て初めての冬で、案の定勉強もようやく追い付いてきたというところ。自分の復習も兼ねてと勉強まで見るようになってもうそろそろ一年かと、吐いた息の白さで実感する。

「あれは梅だな」
「ウメ?」
「冬から春にかけて咲く花なんだよ。桜よりちょっと早い時期にな」
「桜ハ日本二来タトキ二見マシタ!ウメハ初メテデス。カワイラシイデスネー」

 ニコニコとダニエルはその咲き始めていた梅を見ていた。すっと伸ばされる手はあっさりと梅の高さに届き、太くてでかい手に似つかわしくない優しさで花弁を撫でた。

「寒イノニ綺麗二咲イテ健気デスネ」
「折るなよ、怒られるからな」
「折リマセンヨー」

 本当ハリオンチャン二プレゼントシタイトコロデスガ、と続けられ、突拍子のなさに思わず身体が固まった。

「プレゼントってなんだよ……ほら行くぞ、俺の家で勉強するんだろ」
「ハイ!」

 歩きだした俺の後ろについてきたと思ったら、そっと手を握られた。慌てて振り返るとダニエルは相変わらずニコニコと笑っている。

「寒イノニトッテモ健気ナ梅ノ花ハ、リオンチャンミタイデス」
……はぁ、意味わかんねえこと言ってんじゃねえよ、ったく」
「僕ノタメニ頑張ッテクレテルリオンチャント同ジデス」

 ダニエルがしたいならと手を繋いだままにしたのが間違いだった。
 何が言いたいのかわからねえけど、とにかく恥ずかしいことを言われてることはわかった。あんな可愛らしい花と一緒にされたらたまったものじゃない。

「フフ、リオンチャン、可愛イデス、オ耳ガ真ッ赤デスヨ」
「うるせえ! さっさと行くぞ!」

 ぎゅ、と握った手を強く引っ張って、早イデスヨー、と訴えるダニエルを無視して勢いに任せて歩いていく。
 息が白くなる寒さのはずなのに、どうしてか寒くもないし、指先はとても温かかった。