ぽふむん
2026-01-03 22:34:31
1217文字
Public ワンドロ
 

初夢初化粧

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「初鏡」
氷柱if

新年の初化粧を童磨の為に施すしのぶちゃん。
ちょっと不機嫌です。

当時のメガネは、村長さん級の人の1ヶ月分の収入に匹敵した高級品だったらしいと聞いて

しのぶちゃんの夢を邪魔した爺さんは極度の近眼なんです。


あの爺め。

しのぶは歯噛みする思いを堪え、鏡に向かう。
鏡の前で口角を上に引き上げ作り笑いをした。
だが、それもこめかみの青筋のせいで不自然極まりないもの。


新年早々怒るだなんて馬鹿げている。
しかも、夢のことではないか。

夢の中で、しのぶは氷柱の舞を惚れ惚れと見つめていた。
あの筋肉ダルマが、舞となると本当に優雅で天女のよう。
一対の金扇を優雅にひらひら操って、しのぶのための舞台を見せてくれていた。
氷柱の舞に見惚れていたら、ふと脇に煙草盆があることに気づいた。
好奇心からその煙草盆のキセルを手に取ってみた。
吸ってみようか。
刻み煙草を詰めてみた。
こうして見ると、まるで男芸者を子飼いにしているよう。
専属の芸者。

ヒモ

人聞きは悪いが、それもまたいい。
この後あの男を手篭めにしてやろう。

そう思っていたのに、珍客が舞台に現れた。
時々寺院に現れるあの天狗爺だ。

氷柱の優雅な舞とは裏腹な、滑稽などじょうすくいをしている。
そして欄干にぶつかった。
この爺さん、信者から聞いた話によれば、盲と嘘をついていると村八分にされこの寺院に流れ着いたらしい。

教祖様はお優しいから分け隔てないが、関わるなと皆からくぎを刺されている。
言われた意味がわかった気がする。

あの爺。
ふざけんな。せっかくの座興に水を差すな。

しのぶがそう思ったところで目が覚めた。

ああ、せっかく文字通り夢心地だったのに。

そう思いながら唇に紅を引く。
あの男を新年早々腰砕けにするためだ。
艶やかに彩り色仕掛けだ。
この後姫始めと洒落こもう。
景気づけに氷柱を犯すとしよう。

ふふふ
少しほくそ笑んだ。
その時、肩越しに別の顔が映りこむ。

「しのぶちゃん♡あ、お化粧中かい?そんな事しなくても可愛いのにぃ♡」
氷柱だ。

「あら、新年のご祈祷。存外にはやく終わったんですね」
「いーや、しのぶちゃんが寝坊助なだけ。予定通りだよ」
柱時計を見れば、本当に予定通りの時間だった。

「あら嫌だ。いい夢だったものですからつい寝過ごしてしまいましたね」

しのぶは自分の頭を軽くコツンとこづいた。
「まぁ、邪魔者爺さんという珍客のせいで起こされてしまいましたが」

「へぇ、どんな夢だい?」

現実に氷柱の新年の舞を見たい。
そう思ったしのぶは、素直に夢の内容を話した。

「へぇ、なかなかの吉夢じゃない。初夢って一富士二鷹三茄子っていうけど、続きがあってね」
四扇、五煙草、六座頭

「あの爺さん、座頭なんだよ」
そう氷柱は言った。

世間一般には、盲人と言うと全く目が見えないもののことだと思われている。
だが、中には極端に目が悪いと言うだけで薄らと見えているものもいると言う 。

「あの爺さんも、町生まれとか、豪農なら眼鏡でなんとかなったんだろうけどね」
氷柱はからからと笑うと、しのぶの所望の舞の体勢を取った。