ortensia
2026-01-03 18:29:15
1163文字
Public 傭リ
 

傭リがけっこんしてりこんするまでの話、ではない。

調停のこととか何も知りません。

 野花を括って指輪を作って、嵌めて、それが腐って外れるまでの話。
「わたしとおまえが結婚するとするじゃないですか?」
「え……あ、ウン。」
 おめでとうございます、ぱちぱちぱち。そう言いながらリッパーは拍手した。だもんでまるで他人の結婚式に参列したゲストのようだ。傭兵は喜びの前に驚いて目玉が外れそうなくらい見開いている。
「それで離婚するじゃないですか。」
「なんで!?」
 結婚して、そして離婚した。なんで。
「おれに悪いところがあったなら言ってくれ!」
「落ち着いてください?全部例え話ですよ?」
 狼狽える傭兵にリッパーは不思議そうに首を傾げる。全部全然着いて行けていない傭兵は振り回されっぱなしだ。それでも決して離そうとしないのがしぶとい傭兵である。寧ろ結婚するところまでは例え話でなくても良いんじゃないかとさえ調子に乗っている。
「それで離婚調停する時に、自分達の行い、それが証拠として提出出来るものの場合、全部出すんですよね。と言うか、提出出来るものにするんです、お互い録音したりして、それをなんでもかんでも。」
「盗聴とか……?」
「え?いいえ?だってお互いそれを承知なんですから、盗聴じゃないでしょう。」
 それにしたって穏やかじゃないだろう。裁判沙汰だなんて。
「口座とか金の出納とか、全部。だから相手が何処に何に、誰のためにお金を使ったか丸分かりなんですよ。」
「はあ。」
「わたしがおまえを描いた絵が何点幾らで出品されて幾らで購入されたかも資料のうちだし、わたしのほうの付き合いで見に行った競馬でおまえと幾ら使ったかも提出するし、おまえがトチ狂ってわたしに馬鹿デカいぬいぐるみを買ったものもそうだし、おまえがカジノで馬鹿勝ちしてその金全部わたしに薔薇を贈るために使った馬鹿丸出しなことも丸分かりです。」
「え、ええ……。」
 傭兵はリッパーの説明に頭を抱えた。
「それでお互いが相手にどれだけ、無粋な言い方をすると貢献したかによって、まあいわゆる財産分与の割り当てがなされるわけですねえ。」
「まあ、無粋だな。」
「じゃあなんと言い換えます?」
「え、っと。」
 愛、とか。
 リッパーは笑った。
「調停とはどれだけ相手を愛したか証言して競い合うわけですね。」
……でも、」
 もし本当にそれが愛なら、離婚調停にはならないのでは。
 リッパーは更に声を上げて笑った。
「じゃあ、法廷で散々愛を確かめ合ったあと、証言台でキスして。」
……それってめちゃくちゃ怒られるんじゃないか。」
 笑うリッパーに引き寄せられるように流されそうだった傭兵はそう言った。めちゃくちゃ怒られますねえとリッパーはまた笑うのだ。
 作った指輪を捨てて、新しい指輪を嵌めるように、ころころと話題を変える。それだけの話。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。