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篠
2026-01-03 16:57:36
1587文字
Public
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be toast
出来てない黒ファイのラッキースケベ
原因はいくつもあった。
借り家に備え付けられた随分と立派なオーブンを目にしたファイが目を輝かせ、頭上のモコナが調子良く自身の知るありったけの焼き菓子の名前を歌い始めたこと。
そこからあまり馴染みがない様式の未だ慣れない厨に、ファイや小狼だけでなくなぜか黒鋼まで立つ流れになったこと。
そして今まさに焼きあがったパンを乗せた天板をテーブルに運ぶ小狼の動きが、あまりにぎこちなく、思わず気を取られていたこと。
「ひぎゃっ」
様々な要因が交わり、かくして黒鋼は下段のオーブンの扉を掴むつもりで、思い切りファイの尻を揉んだ。
形容しがたい悲鳴に思わずびくりと身体が揺れる。その結果想定外の接触は解消され、大人二人が棒立ちしている状態になった。ただただ困惑だけを映した蒼い瞳がこちらを見上げている。見返す黒鋼もおそらく同じような目をしていた。
「ファイ!?」
「大丈夫か」
目を丸くして後方に振り返っていたファイは、はっと我に返るとすぐに小狼たちに笑いかけた。
「黒みんとぶつかっちゃっただけ! 驚かせてごめんねぇ」
「いや、ケガがないならいいんだ」
「ありがとー、黒様ってば気づいたら忍者みたいに後ろにいるんだもん」
「黒鋼忍者みた~い」
「忍者みた~い」
「テメェら
……
」
一度止まった空気が、いつも通りの会話と共に元に戻っていく。
「ゆっくりでいいから、小狼君も火傷しないようにね」
「ああ、気をつける」
ファイの言葉に改めて小狼が背筋を伸ばした。助言は逆効果だった気もするが、これ以上はあえて言うまい。
部屋の中には食欲をそそる香ばしい匂いが広がっている。黒鋼は当初の目的通りオーブンを開けると天板を取り出し、ファイに指示されていた重みのある耐熱皿を並べ、再びオーブンの中へ戻した。
「200度で20分」
上から聞こえた声に従い目盛りを動かす。ブォン、と音をさせて動き始めるのを見届けてから、黒鋼は顔を上げた。屈みこむ黒鋼の隣に立ったファイは、物言いたげにこちらを見下ろしている。
「ちょっと黒ぷー? 痛かったんですけどぉ」
完全な事故である。疚しい気持ちは微塵もなく、ファイの顔からもそういった非難は見当たらない。
加減もなく掴んだ肉は、柔らかくはあった。ただ一瞬の接触でも脂肪の薄さが感じ取れたし、何より小さく、黒鋼の手が余った。手に余ったのではなく、指先が余ったのだ。それがかえって対象を力強く握りこむことになってしまったのだが。
「もっと肉つけろ」
「
…………
それオレ以外に言っちゃダメだよ」
心底哀れみを込めた声を掛けられて、眉間に皺が寄る。
「誰がおまえ以外に言うか」
「本当はオレにも言っちゃダメなんですー」
子どもたちに気づかれないよう小声でやりとりをしながら、どちらともなく小さく笑った。くだらないにもほどがある。
「もぅ、跡が残ったらどうしてくれるの」
ぎゅむ、と黒鋼のつむじを押しながら捨て台詞を吐いたファイが、流し台へと向かった。
奥からモコナの歓声が聞こえる。声の先を目で追うと、小狼が無事全てのパンを型から外し終わり、見るからにほっと肩の力を抜いていた。
先の言葉を思い返す。あの白い肌に跡が付こうものなら、大層目を引くだろう。小さい尻に自分の手形がくっきりと残っているさまを想像しそうになって、やや乱暴に黒鋼は思考を止めた。
屈みこんだ体勢のまま何とはなしにオーブンを覗き込む。扉の向こうに閉じ込められた耐熱皿は、まだ何の変化も見せていない。
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be toast:一度焼いたパン、転じて元には戻らない破滅や大変なトラブルなど
この後黒様はことあるごとに(こいつ尻小せぇな
……
)って思うし、関係が進んでいざヤるってなった時も「尻小せぇな
……
」って言う
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