ne🌟
2026-01-03 13:09:52
1050文字
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藪を突いて熊を出す

🥷🥚 高父×諸父
# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

「諸泉殿、今日のお前も愛らしいな」
「えぇ、えーっと、ありがとうございます、高坂殿?」

あぁ、また始まった。
食堂の中央で始まった甘い空気に、砂糖菓子を食べたように胃もたれしそうになった。
渦中の人物たちは、未だ飯を食べてる俺らのことなんて眼中にないかのように、自分たちの世界作ってメロドラマのワンシーンを演じている。

月輪の高坂が狼隊の諸泉にお熱であるというのは、タソガレドキ忍軍にとって共通認識だ。
入隊当初から隙あらば諸泉を口説く高坂の様子は、もはや日常で、みんなが生暖かい視線を二人に向けらようになっていた。

(全く毎日飽きないもんだねえ……)

障害のある恋は燃えるとはよく言ったもので、高坂は諸泉殿がつれない返事をしたところでめげることはなかった。
容姿端麗、自他共に厳しいところもあるが、それでも一歩町に降りれば女が振り返り二度見をする男前。
それがなんであんなたぬき顔の優男に心を奪われたのか。

(女なら引く手数多だろうに)

俺だったらつれない男より、言い寄る女の方が大歓迎だと言うのに、全く、世の中って理不尽だな。
そんなことをぼやっと思いながら、俺は残りの飯をかき込んだ。



だが、ある日を境に高坂が諸泉を口説くのをぴたりとやめた。あんなにお熱だったのに高坂はもう意中の相手が変わったのか。
なんとなく気になってしまった俺は、軽い気持ちで、諸泉殿に聞くことにした。

「最近、高坂の口説きが無くなったな」

彼はなんて言うのだろう。
言い寄られなくなってせいせいするとか、静かになっていいとか言うのだろうか。
すると俺の問いを聞くなりみるみる顔が赤くした諸泉は、あーとか、うーとか言いながら終いには蚊の鳴くような声で律義に答えた。

……く、口説かれる必要が、無くなったから」

あぁ、なるほど。熊の執着は無事にこの狼を射止めていたらしい。
どうやらあの男、公衆の面前でも気にせず口説いていたくせして、想いが通じ合うと、人前でいちゃつきはしないらしい。

(釣った魚に餌はやらない奴なのか?)

思わず湧き上がった興味心。
他人の恋愛事情など聞のは下世話だが、今まで散々二人の馴れ初めを見せつけられてきたんだ。
ちょっとくらい聞いたって許してもらえるだろう。

「つまり二人はお付き合いを──」
「ずいぶんと楽しそうに話をしているな」
「ひっ!」

地を這うような低い声に、思わず悲鳴が上がってしまった。恐る恐る背後を振り返ると、高坂が俺を見下ろしていた。