babugaki
2026-01-03 12:22:42
798文字
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会いたい人

放誕生日おめでとうSSです。メールのネタバレがちょっとあります。

「わざわざ会いたい人なんて僕にはいない」
「そんなことない! 目を瞑って、胸に手を当てて考えれば、きっとその人の顔が思い浮かぶよ」
 キラキラとした顔で、ドゥリンが僕を見ている。その顔で見られるのは苦手だ。顔を背ける。すると、ほら、と手を捕まえられて、胸に押し付けられた。空っぽのここが何を教えてくれるというのか。滑稽だ。
「目を閉じて、笠っち」
 彼は意外と強情だ。こうなったら僕が言うことを聞くまで放してくれないだろう。
「わかったから、手を離せ」
「うん!」
 パッと表情を変え、ニコニコと嬉しそうにするドゥリンにため息をついて、僕は言われたとおり胸に手を当て、目を閉じた。
 僕の会いたい人。そもそも知り合いが少ないので、候補が少ない。ドゥリンだってわかっているはずだ。必然的に彼になるって。こんなの、誘導尋問みたいなものだろう。
 目を開ける。さっきと変わらず、ニコニコと僕を見ているドゥリンが、どうだったかと弾んだ声で聞いてくる。
……手紙を書く」
「そっか、じゃあ、思い浮かんだんだね! 言ったでしょ? きっと会いたい人がいるって」
「はいはい」
 素直に認めるのはなんとなく癪で、僕は適当にドゥリンをあしらう。
「僕が会いたいからと言って、相手もそうとは限らないけどね」
 ぽつり、そう呟くと、ドゥリンがうんざりしたような顔をする。珍しい顔だ。
「なんだい、その顔」
「わかってないなぁと思って。とにかく、早く手紙を書こうよ。そうだ、僕が届けてこようか?」
「断る」
 はっきりと言って、僕は宿の部屋に引っ込んだ。ペンと便箋を用意して、手紙を書く。会おう、だけでは少し足りない気がして、贈り物を用意する、と付け足した。これで彼が釣れてくれるといいのだけど。
 ペンを置き、手紙を折る。封筒に入れ、封をする。何をしているんだか、と自嘲して、僕は手紙を出すために立ち上がった。