サイボーグの声というものはどうしてもノイズが入る。その度合いはひとえに性能によるが、音声として聞き取れなければ意味がないので、大抵の場合はどんなに安価でもそれなりに明瞭だ。
「カートさっきやってたステージクリア出来た?」
「……ダメだからマックス今度付き合って。」
マックスの声はノイズが酷い。それは彼の機体、スピーカーや出力そのものに問題があるわけではない。
「今でも良いけど?」
そう言うマックスが、自分の顔に掛けている手を、指の一つ一つから順に剥がさせる。
無意識なのか、さっきからどうしてゲームを一緒にやっていないのか今思い出したらしい。本当ならゲームに添えられていた筈の両手が自身に掛かり、音声出力機の辺りにがりがりとダメージを与えている。
ガジェット担当のくせに物理的に自己破壊を行っている。けれどそうでなければ止められなかったかもしれない。そんなことはあっては堪らない。
「今はゲームよりマックスの手握らせて。」
こうしてノイズ混じりに話して来る時は良かった。暗い部屋にひとりでこつこつと自分の顔を掻きむしっている時がつらい。
「ええ?俺の手ゲームみたいにボタン押したり出来ないし面白くないよ。」
「そりゃそうだろ。マックスは人間なんだし。」
マックスは握られた自分の手を見て、じっとしてしまった。
本当ならマックスの声はもっと明瞭だったし、顔の傷もなかったし、目の光ももっと明るかった筈だ。けれどだからといって、別に新品同然のサイボーグや機械が良いと言いたいわけではない。マックスだから。
マックスにマックスでいてほしいだけだ。
だからマックスが少しくらい自分を我儘に扱って、それを止める役をただ自分一人だけに任せてくれて、それでマックスがマックスでいてくれるんなら、それで良い。
マックスの手を握りながらマックスの顔を見る。細かい傷が幾つも走っている。こちらと違って、マックスは繋がった手を見下ろしているため、俯いた顔はこちらとは目が合わない。そのせいで傾いたマックスの顔を、銀河の星々がその傷を更に上から引っ掻くようになぞるので、きらきらと輝いていた。
マックスにやめろと言いたいんじゃない。好きにさせてやりたい。
ただ、こんな抉るような光は要らないから、マックスに自分を傷付けさせるような宇宙、全部ぶっ飛ばしてやりてえよ。
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