ふじしろ
2026-01-02 21:53:52
1687文字
Public マイ狂
 

輪っか

あらきくんお誕生日おめでとう!のマイ狂。タスはこういうプレゼントしてドヤ顔してそうという妄想。

元日は大好きだ。
初詣に行ったり、雑煮を食ったり、そして何より俺の誕生日だ。
マッドガイで過ごす二回目の正月はエージェントが差し入れてくれたお節を味わうことから始まった。
五期生のクラスであるジャスティスライドとマッドガイには執事特製お節が支給された(他のクラスは不要と断っているらしい)
重箱三段のお節には伝統的な料理も入っているが、俺たちが好んで食べそうな肉料理なんかも多く詰められている。
阿形の兄貴が作ってくれた簡単な吸い物に餅を沈めた雑煮を食べながら、三人でお節を突いた。
そして昼過ぎに初詣に出掛ける。
虹顔神社は人で溢れかえっているが、これも元日の醍醐味だ。
人並みに揉まれながら、何をお願いするか考える。
「為士、お賽銭」
「ああ、阿形氏。気が利くな」
俺の斜め前で為士と兄貴がそんなやり取りをしている。
「狂介は願い事は決まってるのか?」
「今考え中だ。兄貴は何お願いするんだ?」
「ん? まあ一年平和に過ごせますようにかな」
俺を気に掛けて話を振ってきた兄貴と他愛ないことを話す。
兄貴の願い事は面白くはないけど兄貴らしいな、そう思った。
時間を掛けてゆっくりと進み、ようやくお参りを済まして今度は帰りの人混みに混ざる。
お参りのための列よりも進みが早いから、そんなに時間は掛からず抜けられそうだ。
そう思っていたところで突然右腕を強く引っ張られた。
人混みから引っ張り出され、そのまま腕を引かれ続ける。
大柄な男に手を掴まれていたが、よく見るとそれはマイタスだった。
いつものあの格好じゃないから直ぐには気付けなかった。
「おい、何だよ、急に」
「デカい声出すな」
そう言うと彼は人気のない場所まで俺を引っ張って行った。
ようやく手首を離したマイタスの顔を見上げて睨む。
突然やって来て何も言わずにこんな所に連れられて来て、文句の一つも言ってやりたい気分だった。
「これ」
「あ? 何だよ」
小さな紙袋を差し出され受け取って中を見る。
中には小箱が入っていた。
「お前、誕生日だろ」
「え、覚えててくれたのか! なあ、開けてもいいか」
「ああ、構わない」
誕生日という言葉に文句を言いたくなっていた気持ちも忘れて途端に嬉しくなる。
手首に袋の紐を掛けて取り出した小箱を開けると何の飾りもない細めのシルバーリングが入っていた。
手にして全体と裏側も見てみるが別に何か刻印が施されているわけでもなく、本当にただの銀の輪っかだ。
こうも飾り気がないと好きだ嫌いだとかすら感想が出てこない。
首を捻りながら右手で持っていたそれをもう片手に嵌めてみると、人差し指にちょうど嵌まるサイズだった。
「あまりゴチャついたものじゃない方がお前が好みそうだと思ったんだが」
「それにしたってよー、これじゃただの輪っかじゃん」
そうは言ったが改めて左手を眺めて悪くないなと思う。
細めではあるがそれなりに主張のある太さはあるし、手によく馴染んですごくしっくりくる。
「これ、思ったよりいいな」
「そうか。なら良かった」
「おう。大事にするな!」
そう言ってマイタスの顔を見上げると彼はドヤ顔っぽい笑顔を見せた。
後で知ったが貰ったリングは何者にでもなれるというコンセプトで敢えてシンプルにデザインされたどこぞのデザイナーズブランドのものだったらしい。
何でもどこかの女性大統領になった人がいつも身に着けているとインタビューで答えたことで秋頃から話題になり、今や人気がすごくて予約すら困難になっているとか。
という話はたまたま着けていたそれを目ざとく見つけた海羽の受け売りだ。
「なあ、荒鬼。それお前にくれた人を紹介してくれないか。俺、どうしても欲しくてさ」
「いや、それが……
当然マイタスから貰ったなんて言えるはずもなく、俺は海羽を誤魔化すのにすごく苦労した。
前もって用意していたのかもしれないがあいつのことだ、カオスイズムの信者に融通してもらったりしていそうだ。
マイタスのドヤ顔を思い出し、なんつーもんを寄越したんだとあいつに文句を言いたい気持ちになった。