酔いどれファルカさんへ料理を作る話


 今日の出勤は夜からだったんだけど、これはすごいな……
 
 今日は西風騎士団様の慰労会らしく、フラッグシップは貸切になっていた。調理担当をしている私は、今日は遅番なので今の時間から仕事開始である。とは言っても、貸切なので料理の大半は早番担当が終わらせてくれていた。
 騎士団にゆかりのある方々も少し参加しているみたい。先程は酔っ払い相手に疲れたらしい旅人さんとパイモンちゃんに、簡単なパフェを作ってあげたらすごく喜ばれた。
 店内を見渡すと、やはり彼らの中心にいるのは団長さんであるファルカさんのようだ。相変わらず注がれれば注がれた分だけ楽しそうに飲んでいる。
 
 たまに入る料理の追加注文やお酒を作りつつ忙しくしていたが、次第に帰る人も増えて店内の騒がしさは少し落ち着いてきた。
 カウンターでグラスを磨いていると、ドカッと音がしそうな勢いで目の前の椅子にファルカさんが座ってきた。椅子が折れなくて何より。
 
「今日はまた、随分と呑んでましたね
「まぁな、こういった会では俺が呑まないと始まらないだろう?」
 へへっと笑いながら、まだお酒が入っているグラスを手に、カランっと氷の音がなるように私に見せてくる。随分と楽しそうだ。
「お水でも出しましょうか?」
「んー、そうだなぁ……でも、水を飲みたい気分じゃあないな」
「そうですか……。あ、少しお待たせしますけど、良いものをお出ししましょうか」
「ん?時間ならいくらでもあるぞ。なにが出てくるんだ?」
「秘密です。――では少々お待ちくださいね」
 一応、お水を注いだグラスをファルカさんの前に出して、キッチンに一度下がった。
 
 
 ***
 
 
「お待たせしました」
「これは……?」
「お味噌汁、ですよ。稲妻の友達に聞いたんです、お酒を飲み過ぎた時には貝汁が良いんですって」
 
 ファルカさんは目の前に置かれたお椀を持ち上げて、クンクンと匂いを嗅いだ後、ゴクっと一口飲んでくれた。
「おお、こりゃ美味いな!」
「ふふっ、それは良かったです」
 彼は気に入ってくれたらしく、すぐに飲み終えてしまい「おかわり!」と元気よく告げられる。早速お代わりをお持ちした。彼が持つとお椀が小さくなったような勘違いを起こしそうで、思わず笑ってしまいそうになる。
「なーにが面白いんだ?」
「気づかれてしまいましたか、何でもないですよ」
「へぇ……まぁいいか」
 人の表情を読むのが上手なお方だ。すぐにバレてしまい、ひっそり冷や汗をかく。
「まぁあれだ、嬢ちゃんは……そうだな、良い嫁さんになりそうだなぁ」
「はいはい」
「これはぁ、本心で言ってるんだぞぉ?」
「そうですかぁ」
 たとえファルカさん相手でも、酔っ払いの戯言には有耶無耶に回答するに限るよね。
 
 
 ***
 
 
 閉店時間後、仕事を上がるために片付けをしていると、ファルカさんの『良い嫁さんになりそうだなぁ』という言葉が脳裏をよぎってしまい、今更ながら一人で照れてしまった。
 ――バレていないと、いいな。
 
 
 
『酔いどれさんに対する正しい対応方法について』