マエバ・セイボスキー
2026-01-02 16:57:56
1315文字
Public パーバソ
 

0101

新年を迎えたパーバソのはなし

質素なクリスマスツリーに、暖炉の火が赤い彩りを加えていた。
炎はどこまでもただ温かく穏やかで、まるで赤い柔らかなオーナメントのようだった。
薄暗い部屋の中、暖炉の前でブランケットに包まって、静かに揺れる炎を眺める。時折、ワインを傾けて、特に話題もない。
耳を押しつけた肩は広く、戯れのように絡める指先は優しかった。
眠いわけでもないのに、まぶたがもったりと重たく、あくびをかみ殺しては、その肩に目元を押しつけた。
退屈ではない。
この時間がずっと続けば良い。
彼が頬ずりする度に、頭の上でざりりと髪の擦れる音がする。
幸せを表現するならば、このようになるのだ。
バーソロミューは滲んだ涙をあくびのせいにして、パーシヴァルの首筋に額をこすりつけた。

どさり、と雪の落ちる音で目を覚ました。
天蓋の隙間から、細く白い明かりが差し込んでいる。
昨晩、降る雪を眺めていたいと開けていた隙間からの陽射しだ。
バーソロミューは緩慢に瞬きをしてから、陽射しから目を背けるようにしてごろりと向きを変えた。
目の前で、リネンのパジャマに包まれた胸が穏やかに上下している。
息を吸い吐く、ゆっくりと膨らんだ胸がゆるやかに下がっていく。
すん、と鼻を寄せると、首筋からは体温と毛布に温まった彼のにおいがする。
頬を肩に寄せる。ぐわんぐわんと、規則正しい行進のように、血液が運ばれていく音が響く。
丸みのない頬、きっちりと結ばれた口角、逞しい鼻筋、儚い色の睫、青い血管の透ける瞼。
この男を構成している、すべてのことを美しいと感じる。
否、美しいとはちがうのかもしれない。
ただただ、好ましい。
いとおしい。

年があけ、あらたな日々が始まる今日、一番最初に目にした光景が、バーソロミューの胸をいっぱいにした。

普段なら回転し続け、ありとあらゆる可能性を計算する脳みそが、いまばかりは雪の中から萌え出た新芽のように、そこにある感情を受け止めている。

いとおしい。
大切にしたい。
しあわせにしたい。
ともにありたい。

「バーソロミュー……?」

ふわふわと小鳥のような睫がふるえ、そのしたから宝物の色をした瞳が覗く。

「ああ、どうしたの」

あたたかな指先が冷えた頬に触れる。
パーシヴァルは、ゆっくりと身体を起こし、ぬくもった胸の内にバーソロミューを包み込んだ。
「バーソロミュー、悪い夢でもみたのかい?」
その胸の中で首を振る。
そろりと腕を背中に回し、穏やかな心音に耳を澄ませた。
「パーシヴァル」
「うん?」
「君をあいしている」
そっとその胸から顔をあげると、いとしいおとこが晴れた冬のような瞳で、バーソロミューを見おろしていた。
「結婚してくれないか」
いたいと思ったのだ。
ずっと。
この大きく穏やかで、ただひとりバーソロミューをみつめてくれる優しい男と。
ただそれだけだった。
他のことは、あたまになかった。
目を開けたときにいてほしい、ただ、それだけだった。
「バーソロミュー」
背を抱いていた手が頬に触れ、濡れた目元を撫でる。
「Yesだ、愛しい貴方」
雪になるにはあたたかすぎて、冬空からはやわらかな雨が降っていた。