ひよこ豆
2026-01-01 22:13:00
2098文字
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機械人向けアダルトパーツショップにて 盤アキ

モブ視点の盤アキです。下ネタ。

※モブ視点

俺はアルバイターだ。名前は伏せる。

俺自身はまぁ普通だが、働く店はやや特殊だ。
ルミナスクエアのうらぶれた路地にひっそり居を構え、機械人向けの性交用アタッチメントだとか、ソレ専用の潤滑剤やらを売っている。
これが意外と出るもので、お陰様で今までやってこれている。
俺にはよく分からんが、世の中には好き者が結構いるらしい。

今日も適当に店番をしながら、仕入れのダンボールを開いている。
バックヤードから出て品出ししようとしたら、丁度客が入った。
ここでは入店があっても『いらっしゃいませ』なんて言わない。
下手に話しかけてプライバシーを侵害するのはアングラ商売のタブーだ。

――しかし目ざとい俺は気づいてしまった。
山のような巨体の機械人の脇に、細身の青年がいることを。
青年は恥じらいつつ、それでいて興味深そうに店内を見渡した。
機械人のほうも、表情は分からないが何やらソワソワと落ち着かない。
その場のノリで入った悪友同士なんかでは、決してない。
確実に、デキている。しかも付き合いたて。
そういうなんとも言えない空気が、締め切った店内に充満する。
彼女いない歴=年齢の俺は、それだけでややげんなりした。
……しかし同時に、好奇心をそそられてしまうのもまた事実。
機械人と人間のカップルという時点で既に珍しいが、さらに男同士とは。
悲しいかな出歯亀根性に抗えず、俺は2人の動向にこっそり聞き耳を立てる。
だからモテないんだとか、いつまでも平バイターなのだとか、良心のツッコミは聞かないことにして。

話を聞く限り、どうやら機械人のほうが元々性交用パーツを持っておらず、そのためウチにきて色々見繕うことにしたらしい。

いかにも初心です、みたいな顔をした青年が、性器パーツの箱をあれこれ手に取って「先生の体型に合わせると……、これくらいになるかな」とかなんとか言っている。
若いのに結構肝座ってんな、このニイちゃん。
対して『センセイ』の方は明らかにオロオロしながら青年を止めにかかっている。
「し、しかしそれでは、おぬしの身体に負担が……、やはり、よしておかぬか……?」
「けれど、二人で同意してここに来ただろう」
……それは、そうなのだが……
お、喧嘩か?とやにわにソワソワする。
しかし『センセイ』は、めちゃくちゃしっかりした声でこう言った。
「おぬしに無理をさせたくないのだ。吾輩は、そのような事をせずとも、充分満たされている」
「先生……

……俺の後ろで流れるようにイチャつかないでくれ。
減っている避妊具――機械人は子供が作れないが、まあセーフセックスの一環として、だ――をチェックして黙々とリストアップする。
多分2人の後ろではキラキラとパーティクルが輝いているのだろう。
こんな事言ってるくらいだし、ボチボチお帰りかなと思っていたところ。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……やっぱり、僕がしたいんだ。入るように、僕……頑張るから」

――なんという破壊力か。
思わずエプロンをギュッと握ってしまった。
赤の他人の俺ですらこうなのだから、真隣で直撃を受けた『センセイ』のダメージは計り知れない。
案の定、ばかでかい冷却ファンをごんごん鳴らして、駆動系をギシギシ言わせている。
俺もああいう健気な彼女欲しいよチクショウ爆発しろ!!と内心暴れ回りながら、俺は必死にけばけばしいパッケージのローションを棚に並べた。

「すみません、店員さんですか」
――叫び出さなかった俺を誰か褒めてくれ。
肩越しに声を掛けられて、心臓が裏返るかと思った。しかも声の主はさっきの青年だ。
「あ、ハイ。何ですか」
「あの、お会計お願いします」
「ハイ。少々お待ちください」
レジまで連れ立ち、スキャナーで商品バーコードを読み込む。
男性器型アタッチメント――多分この店で一番でかいヤツ。
避妊具。
機械人と人間の兼用ローション。
『いかにも』な品揃えにも動じず、無心で合計金額を述べる。
払われた札から釣り銭とレシートを出して、「紙袋入れておきますね」と添えた。
ここでようやく羞恥心を自覚したのか、青年は顔を真っ赤にして「あ……、はい、ありがとうございます」と答えた。
――かわいいなこの人、と思った。
途端、射殺すような眼光が突き刺さってきた。
『センセイ』だ。
すごい顔でこちらを見ている。無いはずの眉間に、青筋バキバキ立ってる幻視をする。
邪念を見透かされ、凍える思いでようやく「お買上げありがとうございました」と口に出した。

こうして異質なカップルは店を出た。
あーー怖かった。鬼神がいたらきっとあんな顔をしている。
ほっと一息ついて、ふと思う。
やっぱあの二人、後でパーツ付けてセックスすんだろうな。
……あーあ。俺も彼女欲しー。
人間の彼女じゃなくても、種族性別問わずかわいい恋人。
レジに項垂れ、結局俺は気もそぞろで店番を過ごした。
レジ締めの後合流した店長に「店で一番デカイパーツ売れたんスよ」という土産話をするくらいの役得は、あってもいいだろう。