傘道
2025-12-31 20:45:05
2125文字
Public ビリイト
 

来年も再来年も焔の舞を

#billighter1w
【お題投稿〈6回目〉】
お題①: 双璧
お題②: 今年も、これからも
から書きました。

焔が揺れる。
くるくる回転するライターから溢れ出た焔が揺れる。
カウントダウンは180秒を切った。
目の前には罵声を飛ばす荒くれ者たち。
さて、無敗のチャンピオン一人で制限時間内に勝つことはできるだろうか?
もちろん、チャンピオンが膝をついて負けるということは前提にない。
勝つことは確定事項だ。
イタズラにライターを回しながら計算した結果は、『一人ではちときついな。』である。
一人では、おそらく大幅に遅刻する。
一人では。
「今日もすげぇな!」
チャンピオンの肩を軽く叩き、口笛を吹く機械人。
野次馬ではない。
無敗のチャンピオンの頼れる先輩兼ダーリンである。
「あとでなんか奢るんで、半分任せていいっすか?」
チャンピオンはサングラスをかけ直しながら、ダーリンに頼む。
くるくると回る二丁のシックな銃。
機械人の愛娘たちが楽しい舞台のメインになれることを喜んでいる。
同時に『パパ』にちょっとお高いオイルマッサージをおねだりしていたが。
「派手にいこうぜ!」
「そうっすね!」
チャンピオンによってライターが天高く投げられる。
高揚した気分に釣られてか、機械人も自身が着ていた赤いジャケットを宙に放り投げた。
無駄のないシックで黒のボディが夜空に曝け出される。
それが決闘の、ショーの始まりの合図だ。
自分たちは舞台に上がってないんじゃないか?
あいつらだけで盛り上がってないか?
そう訝しみ、なんとかチャンピオンの気を引くことに夢中になっていた荒くれ者たちは反応が遅れる。
一人が機械人の蹴りで吹き飛ばされ。
一人がチャンピオンのアッパーで宙に浮かび。
大勢が機械人の鮮やかな銃さばきでリタイアし。
大勢がチャンピオンの地面を揺らす拳でダウンし。
あれだけ居た敵はどこにやら。
気づけば酔い潰れみたいにみんな伸びていた。
立っているのはチャンピオンと機械人だけ。
娘たちが硝煙を立ち込め、冬の夜空に白い息を吐く。
「よっと!」
チャンピオンは先程天に投げたライターを若干躓きそうになりながら、空中でキャッチした。
ライターが地面に激突する前に二人は多数の敵を一掃した。
双璧。
そう呼ぶに相応しい、どちらも華麗な戦いをする強者だった。
「なんとか間に合ったか?」
機械人がジャケットを拾いに行こうか迷っていると、チャンピオンが自分のスマホを見る。
「あと10秒ですね。」
「ジャケット取りに行ってる暇ねぇじゃねーか!」
「76
「わかった!わかった!」
先程までの緊張感が一瞬抜けた。
だが、一瞬だ。
機械人が銃をチャンピオンに向ける。
チャンピオンもガントレットを銃に重ねて交差させた。
「3、2、1
ゼロになり、日付が変わった瞬間。
新年を告げる花火が郊外の空を飾る。
色とりどりの大輪が咲き誇った。
「新年、おめでとうございます。パイセン。」
「ハッピーニューイヤーだな、ライト。」
二人はニヤリと笑みを浮かべる。
新年。
現在、1月1日の0時00分。
ホロウ災害などの恐怖はあるが、無事生き抜いて大切な人と迎えることができためでたい新年である。
「今年もよろしくお願いします。」
「そうだな、来年も一緒に新年迎えようぜ。」
「もう来年のこと、考えてるんですか?」
ライトが花火に目を向けて、恋人のビリーから目を逸らす。
来年まで生きているかわからないのに。
……自分なんかと付き合いが続いているかわからないのに。
花火を見る。
明るく夜空を照らす花火はビリー・キッドのようだ。
暗闇を照らす人気者。
手を伸ばしても届かない光に恥ずべき過去を持つ自分なんて釣り合わない。
「去年はライトと楽しいことも辛いこともいっぱい経験して戦った。」
ビリーがホルスターに銃をしまい、ライトの手を握る。
「俺、思うんだ。今年もライトのこといっぱい知って、色んなこと経験して、新年迎える頃にはライトのこともっと好きなっちまうんじゃないかって!」
「え
自分のことを知れば知るほど嫌になるのでは?
そう思っていたライトの翡翠色の瞳が大きく見開く。
「今年も来年もずっとライトを愛してるぜ!」
ビリーは大好きな恋人に抱きついた。
「お前はどうなんだよ?パイセンともっと過ごしたくないのか?知りたくないのか?」
「パイセンってたまに嫌な質問しますね。」
そんなの答えは決まってる。
「俺だってパイセンと一緒に居たいっすよ。こんな生意気な後輩でよければ
「生意気だけじゃないだろ?俺の大好きな恋人で、可愛いイテッ!」
ライトはビリーの脛に当たる部分を蹴った。
そこまで言わなくていい。
もう十分理解している。
だからこれは照れ隠しで甘えているだけだ。
「パイセン、早速お互いのこと知りましょうよ。拠点に戻って。」
「そうだな。」
これから双璧は愛の巣に帰る。
そこでお互いの新たな一面を知って、もっと好きになる。
今年もドタバタした波乱の一年になりそうだが、双璧は焔を纏い華麗に戦う。




来年も再来年もその先も、さらに貴方が好きになる。
今年もよろしくお願いします。
末永くお願いします。
貴方と踊る日々がずっと続きますように。