白殊皎(しらよし こう)
2025-12-31 16:30:08
1553文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

いやしけ吉事(よごと)

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
年越しの日に土方を特異点調査に連れて行かれてしまった近藤。
黒の剣士で不貞腐れていたが戻ってきた土方は──

今年は近藤さん実装でハチャメチャでした。
嬉しいことばかりで充実した2ヶ月を送れました!
来年もよろしくお願いいたします!!

姫始めはまた……。

 こたつの温もりがちょうどよく、黒の剣士こと近藤勇は天板に頭を乗せてうつらうつらしていた。
 目の前には籠山盛りのミカン。
 何不自由なく、と言いたいところだが、一つだけ不満があった。
──それは、部屋の主が不在なことだ。
 この部屋は土方の部屋。
 普段からそこに入り浸る近藤のために土方が自分の部屋にもかかわらず彼好みに誂えてくれた空間なのだ。
 なぜ土方が不在なのかというと、いつもの如く微少特異点。
──ごめんなさい、近藤さん。土方さんが必要なんです。年が明けるまでには解決すると思うから……
 少女マスターはそう言っていた。
 土方が頼りにされているのは率直に言って嬉しい。
 でも、本音としては自分も連れて行って欲しい。
 割けるリソースの問題と言われてしまえばそれだけなのだけれど、なんとなくモヤモヤする。
 ちらりと部屋の電子表示のカレンダー兼時計に目をやる。
 十二月三十一日 二十時。
 カレンダーと時計はそう示していた。
 あと四時間ほどで、カルデアでの新年がやってくる。
 果たして本当に、それまでに戻ってくるかどうかわからない。
 部屋の掃除も終わらせ、厨房の守護者達からもらった鏡餅ももう据えた。
 へそを曲げず、浅葱の羽織の姿にでもなって何時になろうとも疲れて帰って来るであろう土方を笑顔で迎えたいという思いと、この姿のままで土方に甘えたいという思いがせめぎあっている。
──とりあえず、土方がちょっと遠慮を見せる着流し姿にはならないことにする。
 どの姿でも土方は受け入れてくれるだろうけれど。
「歳……
 今頃血みどろの戦いを繰り広げているかもしれない恋人に思いを馳せる。
 どうか、無事に無理をせず帰ってきて欲しいと。



 ミカンばかりでは水分でたぷたぷになってしまうので、食堂に赴いた。
 マスター不在では盛り上がりに欠けるが、そこは新年会の準備に余念が無かった。
 つきたての餅、各種オードブル、メインディッシュ、スィーツにアルコールやソフトドリンク。
 色とりどりではあったがどれにもあまり食指が動かなかった。
 少しの焼き菓子を分けてもらって部屋に戻る。
「近藤さん」
 部屋の前には土方が待っていた。
「歳……おかえり……
 間の抜けた対応しか出来なかった。
 見れば大した怪我も、調子が悪そうなところも何もない。
 ほっと息をついて一緒にドアをくぐる。
「すまねぇな。こんな日に」
 ぽつり、と土方は漏らした。
「いや……おまえが頼りにされていて、俺は嬉しい」
 そう答えたところでがば、と土方に抱きつかれた。
「歳!?」
「甘えさせてくれ。正直、今回は疲れた……
 やっぱり浅葱の羽織姿のがよかったかと思ったが、後の祭りだ。
「俺でよければ、いくらでも」
 入り口ではどうにもならないので、しがみつかれたまま寝台に移動する。
 そこに腰をかけて、土方を寝かせると自分の太腿にその頭を乗せた。
 土方は顔を近藤の腹の方に向け、その腰を抱いた。
「あぁ……あんたの匂いがする」
 そしてうっとりとした目をしたかと思うと、頬を近藤の下腹部にすり寄せた。
 近藤はゆっくりとその癖毛を撫でる。
「この姿じゃない方がよかったな」
「何言ってんだ。どの姿でも俺は嬉しい──」
「そう言うのは、おまえだけだ。きっと」
 苦笑して土方の顔を覗き込むと、いつの間にかすぅすぅと寝息を立てていた。
 今回の特異点は、ただ怪我がなかっただけで精神的なものは遙かに負担が大きかったのだろう。
「ゆっくり休めばいい……俺がおまえの癒しになるなら」
 いつもとは逆だな、と思いながらほのぼのとした幸福感が胸にあふれる。
 年越しの夜は、ゆっくりと更けていくのだった。