かずきち
2025-12-31 08:16:02
3428文字
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放課後ドロップバイ

アオハル捏造 ツキフレの無料配布でした🌸

今日は好きな漫画の新しいやつの発売日!朝から、いや一昨日ぐらいから楽しみにしてた俺は部活が終わってすぐ学校を飛び出して、いつもの通学路から道を外れて家からはちょっと遠い本屋へ寄った。お目当てのコミックは目立つところに平積みにされていて、それを手に取ってレジへと急いだ。ちょういいシーンで切れてたから続き楽しみにしてたんだよな。ピピっとお会計を済ませてほくほくしながら本屋の自動ドアを通る。
「あ」
外に出てすぐ目に入ってきたのは、うちの学生服を着た人が、コンビニのレジ横にあるホットスナックのあの、揚げたチキン的なやつに齧り付いてる姿だった。隣がコンビニだから、まあそれは良く見る光景なんだけど俺が足を止めたのは、それが見覚えのある人だったからだ。柔らかい茶色の、特徴的な双葉が生えてる髪の毛。駆のクラスメイトで(入学式の時に駆に会いに行ったら一緒にいた)最近知ったんだけどバスケ部の部長やってる人。確か、えーと。
「神無月先輩だ」
「!!」
名前を思い出すのに必死で向こうの状態なんか見てなかった俺は、もう一口いったばかりの先輩に話しかけてしまい、驚いた先輩の手元に、溢れ出てきた油が伝う。
「あっつ!」
「わー!ごめんなさい最悪のタイミングで話しかけちゃいました!」
俺は慌てて鞄からハンカチを出して……出し、あれ、どこやったっけ。持ってきてる筈なんだけど、ポケットじゃないし〜〜さっき使って鞄にしまって……あ。あった!
ごほん。俺は慌てて鞄からハンカチを出して!それを先輩に渡そうとしたけど、「流石に人のハンカチで油拭けないよ」と笑いを堪えながら既に自分のハンカチで手を拭いていた。俺が渡すの遅かったからじゃない。決して。
「恋くん……だったよね。駆の」
「え!そうです!駆さんのご近所さんです!よく覚えてましたね」
「なぜだか名前を思い出してる時間があったから、かな?」
「あ、あはは……
誤魔化し笑いをする俺に先輩も笑いかけてくれるけど、その目は愉快そうに細められてて、なんか、好奇の目で見られている気がする!いやだから俺のせいではないから!ちょっと鞄の中がこちゃこちゃしてただけで!
「駆のご近所さんなら確か帰り道こっちじゃないんじゃない?俺は……ご覧の通り、部活終わりの空腹を紛らわせに寄り道してたんだけど、君は?どしたん?」
うぐぐと目を逸らすと先輩は出したハンカチをそのままに、片目を瞑る。
「あはは。運動部は特にお腹空きますよね。俺も寄り道です!お腹も空いてるんですけど、そっちよりも心の栄養を摂る為に、本屋に!」
別に下校中の買い物が校則違反という訳でもないのに悪い事してるのが見つかったみたいに言う先輩に、それなら俺も同罪ですと買ったばかりの漫画をじゃじゃんと見せつける。
「なるほど、だからこっち側まで来てたんだ?何買ったの?……あ、その漫画懐かしいな〜、まだ続いてたんだ!」
「先輩わかる人です!?」
表紙のタイトルを見るなり見覚えのあるような反応をした先輩に俺は途端に前のめりになって鼻先まで近付く。これ、別にマイナーじゃないけど新入生で友達作り中の俺としては話せる人がいるのは嬉しい。
「う、うん、でも前に麗奈ちゃんちで一回読んだ事あるくらいだから、あんまり内容覚えてないかも、ごめん」
…………れいなちゃん。
急に知らない人の名前が出てきて、熱く語ろうとした俺に急ブレーキがかかって、構えていた漫画と一緒に手を下ろす。多分間違いなく女子のお名前!なんだけど、でもその名前に覚えがある。れいな……麗奈……。いちさき、れいな。あっ、麗奈先輩?
ピースがぱちりとハマったそのお名前は、俺が入ったばかりの漫画研究部の、溌剌とした部長さんだった。学年が同じだからお知り合いなのはわかるとして、それとは別に気になるワードがあった。
「部長の家で読んだんですか?これを?」
「部長?……あ、恋くん漫研入ったんだ。漫研も賑やかで良いよね!楽しくやれてる?」
質問に質問で返されてそうじゃなくって!とつっこんでしまいたくなった。俺が言いたいのは先輩が部長の家に遊びに行ってるってほう。お知り合いどころかそんなに仲が良いんだ。と、そこで俺は大事なことに気が付いた。学校の外に知ってる人がいたと思ってついつい突撃しちゃったけど、先輩この後用事があったりとかしたんじゃない?空気読めてなかった!?
言葉が出ずに先輩の顔を見て口をぱくぱくとさせていると、最後のひと欠片を口に入れて首をかしげて俺が何か言い出すのを待ってくれている。
「神無月先輩、麗奈先輩と付き合ってるんですか?」
えっと、つまり。部活後に誰かと会う約束とか、あったのでは、という訳で。誰かっていうか、麗奈先輩とか。
申し訳なさがありつつ、興味もあったせいでそれとなく聞こうとしたのにうっかりどストレートに聞いてしまうと、驚いたのかあんまり咀嚼してなかったぽいチキンがごくりと飲み込まれていったのが分かった。そして、先輩はちょっと視線を彷徨わせた後にやわらかーく言葉を吐く。
「ごめん、漫画読んだのは結構前の話で……麗奈ちゃんはね」
「はい」
……恋くんと駆と一緒だよ」
……いや俺たちは別に付き合ってないですけど!?」
…………っぐ」
至って真面目に否定したのに先輩は吹き出しそうになって、それを堪えようとして失敗して喉から変な息が漏れていた。え?だってそういう事じゃん?じゃないの?と思っているとお腹を抱えて苦しそうにしていた。
「一緒なのはご近所さん、の方な!小学校の頃とかよく遊びに行ってたんだよ」
…………あ!ああ〜〜!」
「ていうか気になるところそこ?漫画の方は?」
「いや……俺だって高校生なので……
「なんだそれ」
目尻に涙を滲ませた先輩にぽんぽんと頭を撫でられる。とんでも勘違いに気分を悪くするでもなく優しく訂正してくれる先輩は見た目通りに爽やかな人だ。「良い人」って、こういう人なんだろうな。俺は頭を下げる。
「勘違いしてごめんなさい。先輩も、麗奈先輩も」
「ううん、俺が急に名前出したのも悪かったから。あ、でももし良かったらさ」
「?はい」
頭に乗せられていた手が俺の手元を指差す。
「麗奈ちゃんとそれの話してあげてよ。多分今日、同じの買ってると思うから」
……!は、はい!俺も語れる人探してて!」
「うん!じゃあお願い」
なんかすっっごい、先輩って感じがする。いや駆さんも今は先輩なんだけど、ずっと一緒だったし先輩って言うよりもっと身近な人だからまた別枠なんだよな。今日一番の晴れ渡るような笑顔をもらって無性に眩しく見えて目を細める。
「なんか俺も久し振りに読み返したくなっちゃった!今買ってこようかな?」
「ちょちょ、待ってください!売り上げ貢献はファンとして大変嬉しいんですけど、それなら一旦俺が貸しますよ! 読み終わって楽しかったら、そしたら買ってください!」
颯爽とさっき俺が出てきた本屋へ飛び込もうとする先輩を慌てて呼び止めて、最初に見せびらかした時とおんなじように漫画をずいと押し付ける。読んだのが随分前なら間の話とか抜けてるじゃん!面白展開すっ飛ばしちゃうのは勿体なさ過ぎる!なんなら俺の家で読んでも良いですし、と付け加えると先輩は振り向いて嬉しそうに俺を見た。
「ほんと?ちょうど勉強の息抜きになりそうなの探してたんだよ。ならお言葉に甘えたいな!」
そうだった、神無月先輩受験生なんだった。去年の自分が大変だったのを思い出して尚更漫画を持つ手に力が入った。
「じゃあ、それで!早速明日持ってきますよ」
「ありがとう!あはは、別に寄り道初めてじゃないけど、今日は俺の空腹が家までもたなくて良かったな」
「そう言ってもらえて嬉しいです!それじゃあまた明日!」
俺も駆さんのクラスメイト、くらいしか知らなかった神無月先輩と話せてラッキーな放課後を過ごせたとほくほくして、今日のところはもう帰ろうと深くお辞儀をすると先輩はそうだ、とスマホを取り出した。
「連絡先交換しよ!他学年の教室来にくいだろうし、メールで呼び出してくれれば行くから」
……は、はい!」

とまあこんな感じで、奇遇から生まれた、駆が間にいない一年生と三年生の不思議な交流が、ここから始まった訳なのです。
つづく!……なんちゃって。本当に続いちゃったんだよな。