shiba48
2025-12-30 22:24:45
2903文字
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ありえぬほどの深さに ネタバレあり げんみ❌ 日記


今鎌倉発、藤沢行きの電車のドアが閉まりました。
ここから20分近く揺られるというわけですね。
電車が来るまで寒いホームで待ち、電車が到着してからも発車まで更に時間がかかる。走るより遅いかもしれない。車両の本数も1時間に4本と多くはない。土日の昼間に満員電車さながらの混雑具合になるのも納得です。

上條梓はこんなふうに揺られながら船渡更紗の作業場へ通ったんだ、と第1章の描写を振り返っています。それにしてもこの電車、揺れすぎである。連結部分を挟んだ向こう側の列車は線路のカーブに合わせて振り子時計よろしく揺れている。こんなに江ノ電って揺れてたんだ。

次は極楽寺だ。成就院がある場所ですね。KPと鎌倉に来た時に知らぬ間に連れて来られていた寺です。寺の名前を覚えていなかったので、シナリオで登場した時は一瞬わかりませんでした。そこそこ急な階段を登った先にあるお寺です。高いところにあるため、その分景色は美しく、七里ヶ浜を木々の開けた場所から望める好立地。

その次は稲村ヶ崎。私が先日、長谷で降りたかったのに満員電車に恐れをなして降りれなかったために降りた駅。長谷の2駅くらい先にある。
その日、稲村ヶ崎から長谷へ向かう国道を歩いていたら温泉があった。テラスに足湯があり大変良さそうだったのでいつか行きたい。

そしてその次が目的地の七里ヶ浜になる。なんだ20分なんてあっという間だ。なんだか緊張。あれ、随分稲村ヶ崎に長く停車するんですね。年末の夜なので他のお客さんも周囲に全然いないし、せっかくだから空いている江ノ電車内を写真に収めておこう。あまり見れない光景ですね。


そんなこんなで稲村ヶ崎を発車。改めて次が七里ヶ浜だ。KPCが住まうマンション……に近しい建物は未だに見つけられた試しはないが、とにかくここに来たかった。
一車両のみが乗り入れできる狭いホームを通り、乗車券を箱に入れて駅を出る。
暗ッ。暗すぎる。駅前に全然あかりが無い。いや、あるにはあるが鎌倉駅のそれを思うと暗すぎる。
時刻は21時を回ったところ。潮の香りがする方に進んでいきましょう。海へ向かう道に沿うように、川が伸びている。見下ろすと意外と流れが早く、落ちたら全然死ぬんだろうなと思って怖かった。
この辺りに8階建てのマンションなんてあるんだろうか。カフェが併設されているホテルなら目の前にあるが。

なんとなしに空を見上げて見たらとっても星が綺麗。とりあえずカメラを構えてみたけどこれ、ちゃんと写るんだろうか。

(全然写って無かったので、画像を加工した)

海側は真っ暗で、ほとんど何も見えない。
いや、江ノ島で煌々と光り輝くシーキャンドルが見える。

(この奥でピンク色に光っているのがシーキャンドル。江ノ島にある灯台。)

住宅地へ足を向けかけて、目の前がそこそこ急な登り坂になっているのを見て引き返している。第一、迷子の常習犯なので彷徨くにしてもこの辺りにしておいたほうがいい。


知らない階段がある。どこに続いているんだろう?


あれだ、ポケモンのちかつうろみたいだ。その辺にタウリンとか落ちてるんじゃないだろうか。


めっちゃ短かった。本当にポケモンみたい。


うわ〜、真っ暗な海が目の前にある。
夜の海って全然怖い。波が大きい。でもこの白波が無かったら海って黒一色に見えて余計に怖かったと思う。
なるほど、地下通路の先は車道を跨いだ海側に繋がっていたんですね。

なるべく明るい方角に歩いて行きたいから、シーキャンドルを左手に見据えて進んでいく。カップル御用達の江ノ島有数の観光地をまるで誘蛾灯のような扱いをしてしまい申し訳がない。

指先が凍えるように冷たいですね。上着の左ポケットに手を突っ込めばあたたかいカイロが用意されているのが幸いしました。朝から使ってるのに未だにぬくもりを失わないらしい。

あ、砂浜に降りる階段がある。いっちょ降りてみようかなあ、と階段前まで来ましたが思ったよりも階段が急だ。真っ暗だし。やめとくか。
ひとまず寒いは寒いけど、ブロック壁に座ってゆっくりしてみようかな。空を見上げれば変わらずそこに星空がある。オリオン座だ、もう完全に冬ですね。
スタバで冷たいフラペチーノを頼んだのは客観的に見たら失敗かもしれないけれど、ちょっとした空腹を埋めるのにはうってつけだった。寒いけれど。

波の音ってこんなにも大きく聞こえるものだっただろうか。

ぼーっとしてたら飲み物も空になっていた。
灯台の灯りが海を照らすとき、縦に明るく線がはいるみたいで綺麗。
空になった容器をもって、あたたかさの足りないカイロを摩って、道を譲ってくれた車に礼をして七里ヶ浜の駅の改札を通る。
次の電車ってあと10分以上先なんだ。って思ってたら電車が来た。誰だこいつは。極楽寺までしか止まらないのか。極楽寺で10分待たされるのとここで10分待つならこっちで待つよ私は。
私にはたかがこの程度の待ち時間で根をあげないで欲しい。

上條もこうやってぼーっと駅のホームに座っていたことがあるんだろうか。時には原稿を抱えていた日もあったかもしれない。
あの日、というのは最後に本編をセーブしたあの日のことを指すが、あの日の帰りは何を考えていたんだろう。船渡更紗に吐き捨てるみたいに家を出て、駅まで戻ってきた。正直なところ「幻滅したかい?」という彼女の言葉は完全には否定が出来なくて、落胆や失望という感情を抱いたことは確かだ。
前までの船渡更紗はこんな人じゃなかった。悪魔に唆されているのではないか、とすら思ってしまう。何が彼女を変えてしまったのか。文字が書けないから?物語が認められないから?物書きというのはその実、頭のおかしいやつらばかりで、頭がおかしいから悪魔にさえ願ってしまったのか?
創作をする人間の考えることなんてわからない。ゼロからイチを生み出すなんて、気が狂ってなきゃやってられないのかもしれない。

ふとした時、思考の隙間に横入りする嫌な想像がある。
船渡更紗は他の男と寝たのかもしれない……。全然嫌だ。五十嵐にもワンチャンなんて起こらないで欲しい。お願いだ。
はやいところ、編集者とその担当作家なんて関係だからと怯えずに上條は自分の気持ちを伝えておいた方が良かったのかもしれない。だってこんな噂すら流れているのに五十嵐の話に呆れ顔で返すだけ、船渡更紗を前にしても追求できずにいる。
「俺と船渡さんって、何なんでしょうね」
恋人ではない、友人と言われても違う気がする。ただの編集と担当。仕事仲間。だから、プライベートで何をしていても眉こそ顰めようが首を突っ込む理由はないはずだった。
それなのに、考えずにはいられずにいる。銀食器のような手の温度が、エナメル質の白い歯が、深い赤の目が脳裏に焼き付いている。いっそのこと、あの場で彼女を押し倒して全てを暴いてしまえるほどの愚か者だったら良かったのに。

終点、藤沢。
明るくて広いホームに降りる。今日の日記はここでおしまい。続きはまたこんど。