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もち屋
2025-12-30 20:51:57
2643文字
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ファイモス
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君って本当に分かりにくい
ファイモス☀️🍷寝起きにいちゃいちゃする話
毎朝、隠匿の刻から門の刻へと移り変わろうという時間にモーディスは起床する。
いつ床に入ろうとも、どれだけ疲れていても。同じ時刻に起き、軽く飲み物を口にしてから鍛錬を開始するのがモーディスのルーティンだった。
だから、今日もそうなのだろう。モーディスが身動ぎをして、身体を起こした気配がした。夜明け前の僅かに冷えた空気が肌を撫で、ファイノンの意識を緩やかに浮上させる。身体にかけていた毛布がずり落ちて、体温が僅かに下がった。まだ覚醒するには至らない脳でぼんやりと彼が起きたことを捉えると、ファイノンはモーディスの身体に巻きつけていた腕に力を込める。
引っ張られると思っていなかったのか、されるがままのモーディスをそのまま寝台に転がして、足先を絡めていく。
「おい」
「
……
もう少し一緒にいてくれてもいいだろ」
昨晩は久しぶりに熱を交わして、互いの境目がわからなくなるほどに睦み合ったばかりだというのに。
モーディスが毎日のルーティンを大切にしていることは知っているけれど、例外の日だってあってもいいと思う。そんなことを口にすれば、呆れたような視線が振ってきたような気がした。まだ眠くて、身体の感覚だけでモーディスに触れているから彼の表情はよくわからないのだけど。
身体をずらして、モーディスに密着する。触れたところから伝わる熱が温かくて心地よい。毛布がずり下がった分甘えるように擦り寄れば、ため息が落ちてきた。
「
……
あと一針だけだ」
「二針」
「別に俺は今すぐ行っても構わない」
「ごめん
……
僕が悪かったよ。君が許してくれる時間を大切にする」
鼻先を首筋に擦りつけて、瞼を開ける。見上げた先の金の瞳が相変わらず綺麗だった。そのまま吸い寄せられるように唇を塞いで、頬、瞼、とキスを落とす。不機嫌そうに歪められていた唇が少しだけ緩んだのを認めて、もう一押しだな、と思った。モーディスがルーティンを崩すことはほとんどないけれど、彼はファイノンのおねだりに弱い。もうちょっとだけ、とお願いすれば三針分くらいは一緒にいてくれるような気がした。
オンパロスに昼夜が巡るようになってから随分と経つけれど、未だに門の刻に差し込んでくる黎明には慣れない。穏やかな日々の象徴であると言えるけれど、一日中黎明が照らしていた頃と比べると、どうしても昼夜の差は気温の変化を生む。
以前は門の刻にモーディスが一人で鍛錬に行ったとしても気にならなかったし、彼が寝台を抜け出して自分一人を残したとしても、それに不満を覚えることはなかった。いや、全くないといえば嘘になるけど、今のように無性に寂しくなることはなかった。そう、たぶん寂しいんだ。
永劫回帰は終わって、オンパロスは平和になって。最初はオクヘイマに残って色々やっていたけど、そのうちにモーディスは両親と共にクレムノスにいることが増えていった。僕もエリュシオンに戻って農作業でもしようかなと思ったものの、アグライアの補佐を続けているうちにすっかり戻るタイミングを見失ってしまって。両親は人手が足りているから別に構わないっていうし、オクヘイマにいればモーディスと会う機会もある。移動要塞であるクレムノスは、いつエリュシオンのそばに立ち寄るかもわからないし、故郷に戻ってしまったらそれこそ彼との接点がなくなってしまうのではないかという気もして。本当は、そんなことないのだろうと、分かっているのだけど。
でもやっぱり、久方ぶりに会って一緒に熱い夜を過ごしたというのに。いつものように寝台から抜け出して鍛錬をしようとするなんて、ちょっと冷たいんじゃないかと思う。どこにいても、どんな時だろうとそれを崩さないのがモーディスらしいといえばそうなのだけど。
本当は、彼についていって、一緒に鍛錬をすればいいというのも分かっている。火を追う旅の最中はよくそうやって朝の鍛錬を共にしていたし、そのまま朝食を囲んでいた。一日中一緒に行動することだって多かった。互いに遠征で顔を合わせない時間だってもちろんあったけれど。でも、次に会えるのがいつになるのかも分からないような状態で、束の間の逢瀬を過ごすなんてことはなかった。半神として世界の果てで戦う時以外、彼がオクヘイマに戻らなかったことはない。
だから、余計になんだろう。こうして寝台で睦み合う時間は有限なのに、彼がそれをすぐに手放そうとするのが、少しだけ嫌で。せめて、門の刻
――
人々が起床する時間くらいまでは一緒にいてくれてもいいんじゃないかと思うのだ。
じ、とこちらを見つめていた黄金が、呆れたように僅かに細められる。モーディスは身体の角度を変えるように身動ぎをすると、ファイノンの髪に手を伸ばした。
「
……
お前は、もっと要望を口にすることだな」
籠手に包まれていない戦士の指が、癖のある白髪に通されていく。地肌をやわく引っ掻いて、整えるように滑らせる指先はとても優しい。
「伝えていると思うけど」
「
……
お前の望みは、俺があと二針ここに留まるだけでいいのか?」
呆れたような、からかうような響きを伴った音が、ふ、と漏れた笑い声とともに落ちてきて、む、と唇を小さく噛む。一針だけと最初に言ったのは君だろう、と口をついて出かけた言葉は、何故か機嫌が良さそうなモーディスによって塞がれる。
「俺を好きにする権利を得ていて、今さら何が不満なんだ?」
「
……
久々に熱い夜を過ごしたっていうのに、君が置いていこうとするからだろ?」
「お前がいつまでも変える気がないからだろう」
覚悟を決めるつもりがないのなら、俺だって今まで通りにする、と返されて、ぼんやりとしていた頭が急速に覚醒していく。思わずモーディスの顔をもう一度見ると、少しだけバツが悪そうに視線を逸らされる。自分で言っておいて照れないでほしい。
「それじゃあ
……
ずっと僕の隣にいてくれって言ったら、君は頷いてくれるのかい?」
「
……
そうやってなんでも確認したがるところは、お前の欠点だ、救世主」
随分と遅いプロポーズだな、とモーディスが笑う。君って本当に分かりにくいよな。と思わず落ちた言葉に、おい、と怒ったような声が返ってきて、ファイノンは破顔した。
今日の朝の鍛錬は、もう数針後にしてもらおう。朝食に彼の好物を作れば許してもらえるだろうか、なんてことを考えながら。
もう一度モーディスの身体に抱きついて、愛している、と囁いた。
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