年末年始のお話を……と思って閃いたメビヤツとロナルド達三兄妹のお話。タイトルで全て伝わると思う昔話パロディ。当時は確かロナルドの本名が確定してなかったorファンブック2巻が出たばっかりだったかでロナルド本名は書かずに書きました。当時のまま出しておきます。
初出:2023年1月4日
あるところに、親のいない三兄妹が身を寄せ合って暮らしていました。一番上の兄、ヒヨシは退治人として忙しく働いていましたが、それでも生活がやっとの毎日。年の瀬が迫ってきましたが、当然お正月のご馳走など用意できていません。そこで、ヒヨシは退治人業務だけでなく昼も働くことにしました。今日は朝早くから山の向こうで仕事です。
「じゃあ、いい子にしているんだぞ!」
「分かった、兄ちゃん!」
「……ん」
一番上の兄を送り出した後、真ん中の兄ロナルドは妹のヒマリにニヤっと笑います。
「……出かけた?」
「……た」
「よっし、俺たちも仕事だ!」
ロナルドとヒマリは押し入れの中から沢山の笠を引っ張り出しました。一生懸命働いている兄のために何かしたいと、自分たちも商売をすることにしたのです。ヒヨシがいない時を見図いながらこの数日で編めた笠は六つ。幼い手で必死に作ったその笠を誇らしげに背負って、ロナルドは町に出かけようとしましたが……。
「ぶえっくしゅん! さむい!!」
日の差さない曇り空と冷たい北風に襲われ、ロナルドは身震いします。町へ向かう道の途中、寒さで動けなくなってしまうかも。そう思いロナルドは宝物である赤い帽子をかぶっていくことにしました。兄の退治人服とおそろいの色です。
「よし、行ってくる! いい子にしてるんだぞ!」
「……おなじ、ことば」
見送る妹に何度も手を振りながら、ロナルドは意気揚々と出かけました。たくさん笠を売って得たお金で、家族と美味しいものを食べるお正月を想像しながら。
……しかし、悲しいことに笠は一個も売れませんでした。人混みの中で大声を上げても、大道芸人の真似事をしても、振り向く人すらほとんどいません。時々ちらりと様子を伺う人もいましたが、売り物の笠を見せると足早に去っていきました。
いつの間にか日が暮れはじめ、周りのお店が閉まっていきます。これ以上は妹を一人にしておけない。そう思ったロナルドは自分も店じまいをし、家に帰ることにしました。しょんぼりと歩く帰り道、空からは大粒の雪が降ってきます。
「……さむい」
涙を流したら凍ってしまいそうです。顔を上げたその時、見たことのない不思議な置物が並んでいるのを見つけました。お地蔵様に似ていますが、何故かどれも一つ目です。丸い頭に降り積もり続ける雪は、時折その大きな目に当たってまるで泣いているかのようでした。
「……寒そう……そうだ!」
ロナルドは背負っていた笠を降ろすと、頭の雪を払ってそれを被せてみます。笠はそのお地蔵様にぴったりと収まり、温かそうに見えました。嬉しくなってどんどんと笠を被せるロナルド。ところが、最後のお地蔵様に被せてやれる笠がありません。しばらく腕組みをして悩んだロナルドでしたが、自分が被っていた赤い帽子を七つめのお地蔵様に被せてあげることにしました。ちょっとぶかぶかですが、こちらもとてもよく似合います。
「この帽子、貸してやるよ!」
そう言って笑うロナルド。お地蔵様からの返事はありませんでしたが、さっきと違って笑っているように見えました。身軽になったロナルドは「じゃあな!」と駆け出します。どんどん強まる雪にもかかわらず、ロナルドの身体は温かいままでした。
それから帰宅したロナルドは、兄にずいぶんと叱られました。勝手に町まで出かけてしかも商売をしようとしたのだから、当然なのかもしれません。しかしヒマリから事情を聞かされると、ヒヨシは弟と妹2人をぎゅっと強く抱きしめ、それ以上は叱りませんでした。
「……それで、笠はどうしたんじゃ」
「……えっと……」
こんどはロナルドが事情を説明する番です。不思議なお地蔵様に笠と帽子を被せたと話すと、ヒヨシはロナルドの銀髪をくしゃくしゃと撫で、「明日お参りでもするか」と言いました。ヒマリも自分が作った笠が役に立ったのだと微笑み、ロナルドはえっへんと胸を張りました。
その夜。すやすやと眠る三兄弟は不思議な音で目を覚ましました。しばらく寝ぼけた顔で顔を見合わせていましたが、不思議な音が気になって眠れません。耳を澄ませて玄関に近づくヒヨシと、その後ろをついて行くロナルドとヒマリ。ビビッ、ビビッという音は段々大きくなっていきます。「誰じゃ!」とヒヨシが勢いよく引き戸を開けると、そこにはなんとロナルドが出会ったあのお地蔵様達がいました。しかもその後ろには山のようなご馳走が積まれた宝船が置かれています。
「……夢か、これは」
「……じゃない」
「お地蔵様! どうしてここに?」
「ビッビービッビッビッ ビービービー ビッビー」
赤い帽子のお地蔵様はそう返事をして、ロナルドに近づきます。ぱちぱちと瞬く一つ目と目を合わせると、ロナルドは自然とその言葉を理解できていました。どうやら笠のお礼だそうです。
「……いいのか? ありがとな! ……なぁ、また会いにいってもいいか?」
ビッ!と返事をした赤い帽子のお地蔵様に、後ろにいた仲間のお地蔵様も共鳴します。こうして三兄弟は温かく幸せなお正月を過ごすことができました。
そのお地蔵様が、「メビヤツ」という名前であることを知るのは、もう少し先のお話です。
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