望月 鏡翠
2025-12-29 22:54:56
932文字
Public 日課
 

#1947 ディルストーン居城にて12

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作

 実際にディルストーン側の決定を告げられたのは、滞在予定の最終日だった。
 前王の墓に参り、紹介状を携えて石切のギルドに向かい石材と買付と納入の打ち合わせをした。海沿いに建設する砦は絶えず潮風に晒されることになるから、石材の質を選ぶ。政治の話をしていない時間の大半は、ここで過ごしていた。
 リュネストは領地の外になるから、関の人間に声をかけておかなければいけない。トルガの家名が入った通行証を発行し、先に預けておいた。
 そうしてやるべきことを全てやり切って、いよいよ自分の領地に戻ろうとしていたときに、女預言者たちを迎え入れても良いと言われたのである。
 帰り際に飛び込んできた大きな話に、トルガは慌てて旅程を変更することになった。
 提案を飲んでくれるのはありがたいが、思いもよらない早い決定だったので、戸惑わされることになった。
 ともあれこれで傭兵の出入りを禁じたことで職を失った船乗りの一部に仕事を与えて、不満の声を和らげることができる。影響力の強い男を選べば、周囲のものを黙らせてくれるだろう。
 どうしてこんなにすんなりと事が進んだのか。
 トルガは戸惑いを覚えた。
 体が一つしかなく今いる場所しか見えないことが、時折無性に腹立たしい。神の目を得て、全てを見通せたらはたしてそこにどんな一手を打っただろうか。
 易々諾々と周囲の言葉に従って、国を動かしているわけではないはずだ。そうでなければガニメデの動きに説明がつかない。
 連中は何をしている。どこで動いている。
 急ぐようにディルストーンの領地から馬車を思い出す。その行き先を聞いていた。
「オーキか」
 戻ったらオーキの方面に探りを入れ、アンタイアーの動向を確かめる必要がある。
 その訪問は決して不思議なことではない。王家と王家を長く支える騎士の家柄だ。リュネストよりもよほど親交が厚いだろうし、政略結婚で家同士の結びつきを強めてもいる。
 そうでないならみているぞという圧力をかけに行った、とか。
 トルガがジョアンに、どこからかわからないだろうがお前をみているぞ、と示すことで余計な動きを封じたように、お前をみているぞと意識されることは部下の叛意を削ぐのに有効な手段の一つだ。