森林羊羹
2025-12-29 18:32:57
683文字
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英雄たちにはなむけを②

英雄たちにはなむけを
のその後の話 殴り書き

ザワザワとした木の葉の音。風に吹かれた髪が肌に触れて邪魔くさい。
それなのに嫌味なほどに日が長い。
街路樹の中を歩いていくと注連縄の紙重が揺れる音が聞こえる。
もはや惰性で向かっている場所だ。
あいつらが死んでから鬱陶しいほど人が溢れかえっていたが今は違う。
あの時がまるで嘘みたいにひっそりとしている。
人ではなく枯れかけの献花がそこらじゅうに散らばっている。それを囲うように生い茂った秋桜が靡いている。
その中に見慣れないものがひとつ。いや、見慣れていた。見慣れていたからこそ違和感があった。救われたはずの世界から希望が死んでゆく心地になった。そもそもそんなもの元からありもしない。
永遠に覚えていられるというのも、こんなに呪いになるというのか。
忌々しいそれを受け入れられず、踵を返そうとした。
「こんばんは」
女性と少年が立っていた。母子だろう。声をかけてきたのは少年の方だ。片手に一輪の花を持っている。
……こんばんは」
そう返すと少年は笑った。見覚えがあった。
母親と手は繋いでいないし、顔立ちは変わっているが面影がある。
「あの時の……またお邪魔しちゃったかしら」
母親が気まずそうにしている。
「いえ、もう帰るところだったのでお気になさらず」
そのまま通り過ぎようとしたとき、少年が口を開いた。
「お兄ちゃんや志献官さんのおかげで安心して暮らせるようになったよ、ありがとう!」
残酷なほど真っ直ぐな言葉にいてもたってもいられなくなった。
世界を救ったのは俺じゃない。

背後の鉛像が眩しく光っていた。
世界を救った英雄たちを象ったものだった。