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でがらし
2025-12-29 11:15:22
1792文字
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【吸死】みっぴき・他CPなど
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【ジョン+ドラルク】虹色ケーキは幸せの味
7月16日の虹の日にあやかって書いたジョンとドラルクのSS。こんな思い出がルーマニア時代にあるといいな……という妄想。
初出:2025年7月16日
あれは確か、ヌンがドラルク様の使い魔になってから初めての夏の日。
ドラルクさまと過ごせる毎日はとても楽しくて、季節が過ぎるのがあっと言う間。ここルーマニアの冬は想像以上に寒かったけれど、夏は南米よりも涼しくてお散歩が楽しい。今日は昼からふわふわした雨が降っていて、草木もしっとりと温かかった。でもお散歩よりも楽しみなのが、ドラルク様の膝に座って絵本を読んでもらうこの時間。
「さあ、橋は橋でも渡れない橋はなーんだ?」
カラフルなアーチがページいっぱいに描かれているから、答えは簡単。「
ヌヌ
にじ
!」とドラルクさまを見上げて胸を張る。
「正解! ジョンは天才だねぇ、流石私の使い魔だ」
そう言って、ドラルクさまはヌンの頭を撫でてくれる。ヌヒヒとしていたヌンは、何となく「ドラルクさまは虹を見たことがあるの?」と訊いてみた。
「うーん、ないねぇ。私は見れないものだから」
ヌ?と首を傾げていると、ドラルクさまはヌンをテーブルに置いて、本棚から分厚い本を取り出して広げてみせる。まだヌンには読めない単語もいっぱいある文章を、ドラルクさまの指がゆっくりとなぞる。
「ほら、御覧ジョン。ここに、『虹は日光が雨の雫に反射して出来たもの』と書いてあるだろう。我々吸血鬼にとって陽の光は天敵。そもそも縁のない代物なのさ」
蝋燭の光に浮かび上がるドラルクさまは、寂しそうには見えなかった。けれども、ヌンはちょっぴり寂しくて。
「ヌーン
……
」
そんなことがあった後の昼下がり。ヌンは一玉でお散歩に出かけた。ドラルクさまも他の一族の皆も眠っているお城を抜け出し、サクサクと芝がまだらに生えた道を進む。だけど途中からザァと雨が強く降ってきてしまったので、今は大きな木の下で一休み。雨粒の音を聴きながら思い出すのは、お城を目指して旅をしていた時のこと。土砂降りで灰色の空の下、誰もいない軒先で濡れたお城の絵を抱きしめて、ヌンは少し心が折れそうになっていた。どのお城も絵とは違ってて、次に行くべき場所も分からない。もしかしたら、もうドラルクさまには会えないんじゃないか。でもそんなときに、ヌンは見たんだ。雨が止んで晴れた空にかかる、大きな虹を。あの向こう側にドラルクさまがいたらいいな。そう思ったヌンは、また歩き出すことができた。
──だから、ドラルクさまにも虹を見てほしいヌ。
「
ムームムム
どうしたの
?」
「ヌッ⁉」
いつの間にか先輩マジロの二玉がヌンの隣にいた。ドラルクさまのおじいさんの使い魔は、ヌンよりも大きくてほっそりしている。ヌンを見つめる目は、ニュンだったヌンを拾ってくれた時のおじいさんのように優しい。ヌンが事情を話すと、先輩2人は微笑んだ。
「
ムイム ムムム、ムムムムイムムム
にじのたねは、すぐそこにあるよ
」
虹に種なんてあるヌ?と訊こうとしたけど、答えはすぐに分かった。いつの間にか止んでいた雨、お日様に照らされた原っぱに、色とりどりの花が咲いている。赤に黄色、青に紫。それはまるで、ヌンが見た虹のようだった。
「ヌヌイヌー!」
「ジョン、長いお散歩だったじゃないか! 何かあったのかい?」
「ヌヌヌンヌ!」
日が沈んで藍色に染まるお城の前に、ドラルクさまが立っている。ヌンの帰りが遅くなったから心配で外に出てきてくれたみたい。転がって駆け寄ることができないくらいにたくさん摘んだ花々を見せると、ドラルクさまはにっこりと笑ってヌンごと花束を抱きしめてくれた。
「もしかして昨日私が言ったこと、気にしていたのかい?
……
ありがとう、ジョン。私のために、虹を作ってきてくれて」
手袋越しの指が頭を撫でてくれるのがくすぐったくて照れ臭い。ヌンが花の匂いを嗅いでいると、ドラルクさまは「たまには虹のように派手なケーキを作ってみるのもいいかもしれないねぇ」と呟く。
「
ヌヌヌヌヌイ
たべてみたい
!」
「ようし、では早速準備に取り掛かろう。ジョンに負けないくらいの綺麗な虹を、私も作ってみせようじゃないか!」
雨上がりのシンヨコの空にかかる大きな虹。レインコートの水滴を払って、ヌンはお散歩から帰ろうと事務所へ走り出す。あれから何年も経ったけれど、ヌンはあの時の甘くてふわふわの味を覚えてる。だから虹を見ると、お腹が空いてくるんだヌ!
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