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アサヒ
2025-12-28 23:20:55
1454文字
Public
忍たま(鉢雷)
お題『宴』
鉢雷ワンライ(#8828_1draw )に2025/12/28に投稿したもの。
「なあ雷蔵、お腹は空いてない?」
さあそろそろ寝ようかといったタイミングで、三郎がちょいちょいと手招いてきた。
こんな時間に唐突だなぁ。
とはいえ、僕だってまだまだ成長期。美味しいもののお裾分けならいつでも歓迎したい所存ではある。
うきうきと傍ににじり寄ると、三郎はどこからか取り出してきた布包みを得意げに掲げてみせた。
「また学園長先生のおやつをいただいてきたのかい?」
「いや、違うよ。ほら、見てごらん」
勿体ぶって開かれた包みの中には、徳利と焼いた魚、それにいくつかの唐菓子までもがちんまりと収まっていた。
「うわあ、すごいな!どうしたの、こんなに沢山」
「ふふん、ちょっとしたツテがあってね。たまには君と宴でも、と思ったのさ」
「僕とお前の二人でかい? いいのかなぁ、こんなご馳走」
「君と二人がいいんだよ。
……
それにほら、あいつらを呼ぶと、豆腐地獄が始まりそうだろう」
眉を顰める三郎に、確かにそうだなと納得する。
こんな時間に腹一杯まで豆腐を詰め込むことになったら、夢の中まで苦しむことになりそうだもの。
「ほら、甘酒だよ。干した生姜を少し入れたから、温まると思う」
「ありがとう」
お言葉に甘えてお猪口に注がれた甘酒をひとくち含む。うん、美味しい。
口の中で味わうと、とろりとした甘さの中に、微かにぴりっとした風味を感じた。
そして確かに体がぽかぽかしてきたような気がする。これが生姜の効能なんだろうか?
「どうだい?」
「うん、美味しいね。お腹の中からあったまる気がするよ」
「それは良かった。ほら、これも食べるといいよ」
「いいのかい? じゃあ、遠慮なく!」
こんな時間だということも忘れて、勧められるままに箸を伸ばす。
どれもこれもちょうどいい塩梅の、僕好みの味付けだ。
すっかり好みが把握されてしまっているという事実に、内心むず痒さを覚える。
いつの間にか、なんだか胃袋を掴まれてしまった感じだよなぁ、なんてね。えへへ。
そうこうしているうちにすっかりお腹も満ちて、体が温まったのも相まってか急激に眠くなってくる。
傍目にもそれと分かってしまったのだろうか。箸を取り上げられ、仕舞いにはいつの間にか三郎が敷いていた布団へと丁寧に転がされる始末。
「うーん
……
ごめんよ、三郎」
「気にしないで。後は私が片付けてしまうから、先に寝ていていいよ」
いいのかなぁ。なんだか悪いなぁ。
「いいんだよ。おやすみ、雷蔵」
おやすみ、さぶろう。
***
――
さて、雷蔵は眠ったな。計画通り、上手く眠り薬が効いて何よりだ。
このまま一晩中寝顔を眺めていたいのは山々なんだが、残念なことにそういう訳にもいかない訳で。
しっかり包んだ布団の中から穏やかな寝息が聞こえるのを確認して、音を立てずに長屋を出る。
しんしんと冷えた夜の中、足音を殺しながら向かった先は忍術学園の正門。
「雷蔵か
……
?」
「
――
すみません。お待たせしました、中在家先輩。忍務の詳細について聞かせてください」
「
……
分かった」
このところずっと風邪気味だった雷蔵。
本人はあまり気にしていないようだけど、こんな寒い夜に外出させるなんてとんでもない。
――
私が勝手に雷蔵のふりをして忍務を引き取ったことを知ったら、君は過保護だと怒るだろうか?
まあ、そこは私が手塩にかけた馳走に免じて許して欲しいところだ。
雷蔵が元気でいてくれないと、私もすっかり駄目になってしまうのだから
……
なーんて、ね。
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