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剣 隼兎(つるぎ はやと)
2025-12-28 09:46:00
3546文字
Public
ルカトレ
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献上品(冬蝉)×帰還者 ルカトレネタ帳5
高塔の国に君臨する姫宰相と彼女に捧げられた氷原の国の氷の蝉の話。私には珍しいシリアス系で一途なルカ。↓の話の途中までを公開。
S25真髄2「帰還者」の設定を引用。「冬蝉」はS22真髄3。
高塔の王国。そこは太陽を神として崇め、王は神の神託を聞く者とされている。
城の代わりに天まで届く高い塔があり、その最上階に神に近い王が君臨する。
周囲の国を征服し、住民たちを奴隷として連れ帰り作られた塔には多くの人々の恨みつらみが募っている。
そこに新たな神託を聞く者である「黒点」の出現により、反乱が起きる。亡国の王族や今の制度に不満を抱える貴族、抵抗する力を秘めていた戦士達が手を組み「日を蝕む者」と名乗り革命を起こした。
現在は「輝くもの」であった元国王は地下の牢獄に繋がれ、反乱の首謀者であった「黒点」が玉座についている。
神託を聞く彼は人前には姿を現すことはなく、実質この国に君臨しているのは革命の際に策士を務め、姫宰相と呼ばれるナンバー2の「白月」になる。高塔に滅ぼされた亡国の元王女なので傲慢で冷酷で人を従えるのに慣れている。
「白月」の元には毎日のように王や彼女にあてての献上品が届く。大抵が金銀や宝石、奴隷などだが、それらに彼らは興味を示さないので事前に処理されることが殆ど。
北の貴族から贈られた献上品は大きな鳥籠で、中には氷原の国にしか現れないとされる冬蝉が入っている。氷原の生物は美しく珍しいので「白月」の為に贈られたもの。彼女は生き物を蒐集したがる。「白月」の元に集められた生き物がどうなったかは不明。
安全性を確認された後は、「白月」の蒐集部屋に冬蝉の鳥籠は運び込まれる。そこには剥製になった生き物や毛皮、石灰像などが置いてある。
そこで冬蝉のルカが初めて見た「白月」は噂で聞くような冷徹で高慢な姫宰相ではなく、化粧でも誤魔化せない幼なげな表情で笑う、ただの少女だった。
氷原の国での反乱に失敗し、捕虜として捕まったルカは冬蝉として献上品にされた時点で死を覚悟していた。現にこの部屋の中には動物の成れの果てがあちらこちらにある。しかし姫宰相は「氷の蝉、羽がキラキラでとっても綺麗!」と喜び、ルカに何かしようとする事はない。ただただご機嫌に鳥籠の外から冬蝉の姿を眺めて微笑んでいる。
人型に変化したルカは、「私をどうする気だ」と問う。氷原の住民は感情が凍りついていると言われるほど、表情が変わらない。無表情で首を傾げるルカに「どうなるのかな。それは蝉さん次第かな」とにんまりと笑う姫宰相。
「白月」は自身の名をトレイシーと告げ、人懐こくルカの名を聞きたがる。世間の評判とは正反対の人物であるトレイシーに困惑しつつ、名乗りはしないルカ。
氷原はその美しさから、宝石と同等の扱いをされる。小型の生物はピンやチェーンで繋いでアクセサリーの様に身につける者が多い。しかしトレイシーは冬蝉を装飾品扱いはせず、鳥籠から出すことはない。
捧げた貴族にも「お気に召しませんでしたか」とトレイシーは聞かれるけれど「気に入ったから他の者の目に触れさせたくない」と答えている。
女宰相としてのトレイシーは高い位置から人々を見下ろして高慢な態度で命令を下す。しかし蒐集部屋にいる間は少女らしい天真爛漫さを見せる。トレイシーは鳥籠の内部の冬蝉を眺めたり、異国の氷原での話を聞きたがる。
蝉のルカに近づく為に地位の高い女性が地面に直に寝転んでいるのを見て「わざわざ閉じ込めなくともこんな塔の中、逃げる事など出来はしないのに」とルカが溢せば「蝉さんが盗まれちゃうかもしれないでしょう?」と笑うトレイシー。
「こんな蝉に興味を示す変わり者は君くらいだ」とルカが返せば「だからだよ」とトレイシーは呟く。不思議そうにしているルカに「だめだめ。何を言っても出してはあげないんだから。蝉さんは私のだもん」と答える。
蒐集部屋には決まった召使しか入れない。彼らは部屋の管理とルカの世話を担当している。ルカをただの蝉と思っている彼らの会話を聞くと、わかった事がある。
この部屋は蒐集部屋ではなく、姫宰相の大事なものを仕舞う部屋である事。ここにある剥製や像達は彼女の集めた生き物の成れの果てなのではなく、大事に可愛がっていたペットだった事。
人間を信用できない姫宰相は身近に動物達を置いて自身の慰めとしていたが、彼らは逃げ出そうとして死んでしまったり、トレイシーの食事に盛られた毒を喰らってしまったり、忍び込んできた暗殺者の制圧中に巻き添えで死んでしまったりしていた。
生き物は死んでしまうからと姫宰相は機械人形を製作し、相棒として側に置いている。しかし死んでしまったもの達への愛情は尽きておらず、死体や体の一部も大事に保管している。
ルカを私室ではなくこちらの部屋に置いているのは、安全性と太陽の信仰のある塔は温度が高いがこの部屋は冷えているため。氷の蝉の体調の為に彼女はこの部屋に通っている。居心地の良い家具など何一つないのに、体が冷えてしまうのに、ただただルカと過ごしたいからとトレイシーはこの部屋で長い時間を過ごしている。
高慢な高塔のナンバー2が、子供が大事に大事に宝箱に宝物を仕舞う様な幼い行動をしている。そのチグハグな事実がルカの凍っている感情を揺らがせる。
部屋にやってきたトレイシーは言う。「蝉さんは死んじゃったら、綺麗な硝子の瓶に入れてここに飾ってあげる」「ずっとずっと大事にするよ」
自身が死んだ後の事を楽しい計画の様に語る少女は、喪失することに慣れすぎて悲しむ感情が麻痺しているようにルカには見えた。どこか狂っているが物悲しいトレイシーを一人にしたくないとルカは思う様になる。
他国を攻める為に王と軍が、市外で起きた反乱を抑えるために将軍と騎士団が出払い、高塔が手薄になった隙に「輝くもの」の残党達が攻めてくる。狙いは先王の解放と復権。
しかし手薄に見せかけた姫宰相の罠で残党達は次々と捕縛されていく。しかし内部に詳しい者も多いので罠を掻い潜った一部の残党に上階にまで入り込まれてしまう。残党らは先王から目的を変え、当人は非力な「白月」の身柄を捕らえようとする。
「白月」の私室、蒐集部屋にまで入り込んできた残党は火薬を使った為にルカの鳥籠も壊されてしまう。不意に自由を得たルカは逃げ出すこともできたが、人型を取り残党に抵抗する方を選ぶ。トレイシーが大事にしている蒐集部屋の「彼ら」を守らなければと体が動いてしまう。
捕虜となる前は罪人を相手に看守を務めていたルカは弱くはない。手にした武器と手枷で相手を無力化していく。
最上階の王の間で采配をとっていたトレイシーは、内部の被害状況を確認している最中に蒐集部屋を破壊されたことを知り、急いで駆けつける。
そこで偶然、破壊された塔の割れ目から外を眺めているルカを見つける。それが今にも飛び立とうとしているように見えてしまい、「だめえ!」と叫んでしがみつく。
「だめ!どこに行くの!ここにいて!逃げるなら殺すんだから!死んだらやだ!だからここにいて!」
めちゃくちゃな事を言いながら必死に自分を引き止めようとするトレイシーに驚き、ルカはその時になんの隔たりもなく彼女と相対するのが初めてな事に気付く。そして初めて触れるトレイシーが本当は小さくか弱い存在である事を知る。
何を言って宥めようとしても自分の主張を続けてルカの言葉が耳に入らないトレイシー。ルカは落ち着かせようと膝に抱え上げて子供にする様に抱きしめる。「逃げないよ、君の『友達』の無事を確かめていただけだ。あの美しい蝶でも蜻蛉でもない、ただの蝉の私を大事にするのは君くらいだよ」とトレイシーの背中を撫でてやる。
その後、高塔の修繕と鳥籠が直るまでルカは蝉の姿でトレイシーの私室に移される。綺麗な虫籠に蝉の姿でいるルカ。わざと人型になれないように閉じ込められている気がする。なりふり構わずルカに縋り付いてしまったのがトレイシーは恥ずかしい模様。しかしルカが心配なのか頻繁に様子を見にくる。
距離は縮まった様に思う。ルカから話を聞くだけでなく、ぽつぽつとトレイシー自身も故郷の話をする事がある。春をそのまま固定したような平和な国。それを先王に破壊されたと。話を聞いている間に僅かに湧く違和感がルカにはあったが、分からない。
やがて高塔を攻めてくる反乱軍と先王の支持者達。
塔から召使に命じて眠らせた冬蝉を逃すトレイシー。殺したい程愛してるけど、愛しているから巻き込めない。
残った「白月」と「黒点」は民衆を見下ろす。「終幕だ」という二人。
目覚めたルカはトレイシーの真意を知るために、自身の凍った感情の答えを出すために蝉の姿で高塔の最上階を目指す。
という内容。
萌よりもストーリー展開に力を入れてしまった
……
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