剣 隼兎(つるぎ はやと)
2023-04-15 19:33:55
3013文字
Public
 

冬蝉×キャンディー少女 ルカトレネタ帳1

パラレルです。静かに豹変する攻が好き……まあ衣装見てたら突然降って湧いたネタです。熱いうちに書き残しておこう……

浮き島のように「国」が漂う世界。国々が浮かぶのは夕日のような空に似た空間で、それが永遠に広がっている。国ごとに暮らす存在は、種族もルールも能力も何もかもが違う。
それぞれの浮き島は特殊な能力や手段がなくては行き来することはできない。旅行のように気楽に他の国にいけるところもあれば、出れば二度と入れない国もあり、事故で違う国に飛ばされてしまうこともあるが、戻れるかどうかも国ごとのルールで違う。
「氷原」の国にいる冬蝉のルカはこの国から出たことはない。この国の者はトップを除き、産まれてから死ぬまでこの国を出ることを許されていない。
変わり映えしない日々だったが、ある時に「客」として外から小さなオレンジの猫がやってくる。本で読んだ情報と違い、雪の上や凍った湖の上を好む猫は「キャンディ」と呼ばれている。最初は衰弱していたキャンディだったが数日で走り回るようになるとあちらこちらで可愛がられるようになる。
ルカは生き物自体があまり得意ではないので近付く事はなかったのだが、何故かキャンディは冬蝉の羽根に執着して飛びかかってくる。何をしていても追い払ってもしつこく飛びついてくるので、最終的にルカもキャンディがいても気にならなくなった。
そうして過ごしているうちに、近くにキャンディがいるのが当然になっていく。
気ままに過ごすキャンディだったが、徐々に現れる頻度が減っていく。そして三日程姿を現さなくなったあと、キャンディと同じ色の目をした少女がやってくる。
凍えた色味しか存在しないこの国で、暖かな色をした彼女は自分がキャンディであることを伝えて何故この国にくることになったかを話し始める。

キャンディことトレイシーは「童話」の世界に住んでいた。ただし純粋なこの国の存在ではなくて、「童話」の「妖精」の系統の父と「お菓子」の「飴」の母との間に産まれた子。母親はすぐに亡くなってしまったとかで、父の世界に住んでいるのだが、トレイシーは猫の耳はあるものの、「童話」の国の人々が持つ不思議な能力を何一つ持っていない。体質もどちらかというと「お菓子」の国のものに近い。
父親も亡くなってしまった後は他の童話の仲間達がトレイシーの面倒を見てくれていたが、「自分はこの国の存在ではない」という気持ちが強かった。
「童話」は自由な国なので、出入りも簡単だ。ただ、トレイシーのもう一つの故郷である「お菓子」はそうではないらしい。入るのも出るのも手続きが大変なのだと聞く。
どうにかして入ろうとするのだが、トレイシーは手違いでお菓子を食べてしまう「動物」の国の住人と間違われて攻撃されてしまう。
なんとか誤解は解けたが、トレイシーは怪我で弱ってしまう。猫と飴の性質を持つトレイシーは衰弱すると猫に変わってしまう。そしてその状態は熱にとても弱い。
「お菓子」の国は工場である為に温度が高い。冷蔵庫的なものはあるが、トレイシーは完全なお菓子ではない為、そんなところに入れたら死んでしまう。
ここにも自分の居場所はないと絶望してしまったトレイシーは益々弱り、薬も水も受け付けない。怪我の原因になってしまったガンジは責任を感じて彼女を「氷原」の国に送ることにする。
「氷原」は全てが氷に閉ざされており、外の国の情報も入らなければ、内部の情報も分からない。ただ、工場に氷が必要なため「お菓子」の国とは多少の交流がある。
「氷原」側に事情を説明し、トレイシーの傷が癒えて体力を取り戻すまでの間はそこで過ごすことになる。
弱ってしまったトレイシーは会話をすることも出来ないので、元気になったら「お菓子」でも「童話」でも別の国でも、彼女の望む世界に行く手助けをするというのが怪我をさせた「お菓子」側の予定だった。

トレイシーが人型に戻れたと言うことは、帰る時期が近づいていると言うこと。
数ヶ月過ごしたこの国にも愛着がある。だが特別な条件で入国したため、今回出ることは叶うけれど、もう2度とトレイシーがここに戻れることはない。住人達も外には出れないので、別れたらトレイシーとは2度と会うことはない。
だからみんなと別れを惜しむ為にも数日時間が欲しいと「お菓子」にトレイシーがお願いしたのだ。
トレイシーが人間だったことに「氷原」の面々は驚いていたが、ルカは特に驚いた様子はない。
実は鏡や窓などに写る姿は人間のままだったので、四六時中一緒にいたルカはその姿を知っていたのだった。
キャンディの時と同じく気ままに過ごすトレイシー。ただ逆転したのは猫の時とは違い、ルカの方がトレイシーを側に置きたがるようになったことだった。
仲が良かったから、別れを惜しんでいるんだと周りも思っているけれど、トレイシーは執着めいたものを見せ始めたルカに少し不安を覚えるようになる。
「氷原」の住人のフィオナやウィラはお茶や軽食にルカとトレイシーを誘うが、「童話」と「お菓子」のトレイシーは飲食を必要としないので、いつも空のカップを抱えておしゃべりに付き合うことにしている。
お菓子を口にできないこともないのだが、まだ住人として「童話」の国のルールを守る必要があるのだそうだ。

そしてトレイシーが帰る前日の夜。
最後にこの国の月見を一緒にしようと誘われて、ルカの部屋を訪ねるトレイシー。機嫌よく迎え入れたルカに促されてテーブルに向かえば、二つのカップが用意されている。それには茉莉花茶が注がれていて、中身に気付いたトレイシーが後退る。
後ろから肩をやんわりと掴んだルカに「好きだろう?露で入れたんだ。ハチミツも入れたほうがいいかな?」と言われて凍りつく。どれも「妖精」の好物だ。そしてトレイシーは自身のもう片方の正体は誰にも教えていない。
ルカは自身も半分は「童話」の者であり、「妖精」の系統であることを告げる。ルカは「氷原」の性質が大きく出てしまったために羽根以外の特徴はないが「童話」の国のルールは知っていることも、最初からトレイシーの正体を知っていたことも告白する。
「童話」のルールは「対価以外の食事をしたらその国の住人になる」というもの。トレイシーが衰弱しながらも「お菓子」の国のものを拒んだ理由はこれだった。
あの時は受け入れてもらえないと思っていたが、トレイシーは「氷原」にいる間に、親身になってくれた「お菓子」の人々を好きになってしまった。だから住人になろうと決めていたので、フィオナ達の茶会で何も口にしなかったのだ。
ルカは「氷原」の人間なので飲食を必要とする。「童話」のルールの力でこの国から出ることはできない。
だが体質と違い、ルカの性質は「妖精」のものだ。欲しいものは強引にでも手に入れたい。トレイシーは逃してしまえば2度と手に入らない。
抵抗するトレイシーを抑え込んでカップを近づければ、好物の香りに力が弱まっていく。それでも必死に本能に抗おうとする少女に、ルカは口移しで無理やりお茶を流し込む。
力の差で逃れられなかったトレイシーがお茶を嚥下してしまえば、猫の耳が落ちて髪色が茶色から金へと変わる。ただの人間に変わったトレイシー。


そんで恐慌状態になって泣き喚くトレイシーを抱え込んでうっとりとするルカさんというエンドです。
しかしトレチは性質が猫ちゃんなのでよしよしされたらすぐ懐いちゃうし、結局最後は絆されるんだろうなと思うております。