Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
はくう
2025-12-27 23:38:11
6570文字
Public
Clear cache
日直当番のくだらない話題
日直当番の衣装設定絵のうに、お腹見えてますよね?
CPなしです。軽度の下ネタ?があります。未読ストーリーが多いため口調が違っていたらすみません。キャラクターは全員弊ロドスに雇用済みです。
「えっ。インナーシャツ着ていないんですか?」
日直当番の仕事の一つ、日誌の最後の一文を書き終えたズオ・ラウは、同じく日直の仕事で黒板を掃除するクラスメイトを何気なく眺めた。彼が黒板の一番高いところを掃除するために腕を上げたタイミングで、シャツの裾から素肌が見えたことに驚いて、思わず本人に問いかけてしまった。声をかけられたソーンズは黒板掃除の手を止めて、ズオ・ラウを見返す。
襟もとのボタンを大きく開け、シャツの裾もズボンから飛び出している。制服を大きく気崩しているうえ表情の変化が乏しく簡潔な言葉選びを好む彼は、話かけづらい印象を抱く。しかし一緒に日直当番の仕事をするうちに、彼の人となりがわかってきた。彼は他人に対して愛想よく振る舞うことに重きを置いていないが、交流を拒んでいるわけではない。出席番号やくじ引きで適当に決められる日直当番は、普段関わる機会のないクラスメイトとの交流のきっかけになる。まだ学生のズオ・ラウには、教師が語る「大人になったらいろいろな人と関わるのだから、学生のうちに訓練しておいた方がいい」という言葉の重みを完全に理解できていないが、苦手に思えたクラスメイトに気兼ねなく声を掛けられるようになったのは、素直に嬉しい。一見話しかけづらいクラスメイトは、首を横に振った。
「着ていない。そんなに驚くことか?」
「着ている人の方が多いと思いますけど。今の時期は特に。寒くないんですか?」
「別に」
簡潔な返事に、へえ、と感嘆の声が漏れる。暑い時期ならインナーシャツを煩わしく思うのも理解できる。しかし今は冬だ。生徒のほとんどは学校指定のニットベストを着用しており、その上からジャケットやパーカーを羽織る者もちらほらいる。かくいうズオ・ラウも、ベストの上にパーカーを羽織っている。冬の寒さに弱く、毎朝二度寝の誘惑と戦っているズオ・ラウからすると、寒さに強い体質の人はうらやましい。
ズオ・ラウは時計に目をやり、針が示す時刻に焦る。生産性のないおしゃべりはこの辺りで切り上げて、日直の仕事を片付けなければならない。今日は会議があるから日誌とプリントの提出は早めにしてくれと、担任から頼まれている。提出物は教科ごと、番号順に並べて提出する手はずなので本来は時間がかかるものではないのだが、今日は運悪く風が強かった。掃除のときに換気のために開けた窓から入り込んだ強風がプリントを景気よく吹き飛ばしたせいで、提出物を教科ごとにわけつつ全員分のプリントがあるかを確認する作業が増えてしまったのだ。日誌を書き終えたズオ・ラウはプリントの山を睨みつける。気合を入れていると、教室のドアが開いて長身の男子生徒が二名入ってきた。彼らもズオ・ラウとソーンズと同じ日直当番だ。
「イグゼキュターさん、ロゴスさん。ごみ捨てありがとうございました」
「いえ。これも日直の仕事なので」
「そちらは大事なかったか」
イグゼキュターは生真面目に返事をし、ロゴスはソーンズに視線をやって含み笑いをする。ソーンズは実はアイデアマンだ。彼が考案した効率よく日直の仕事を終わらせる方法は画期的で、ロゴスはソーンズのアイデアをいたく気に入っている。ちなみに、ソーンズのアイデアの七割ほどは上手くいかず、そのうち一割は教師に叱られる。
ロゴスに話を振られたソーンズが仕事を終えた黒板消しを置いて、三人のところに寄ってくる。
「こいつが、この時期にシャツ一枚は変だと」
「変だとは言ってないですよ。ただ、インナーシャツを着ないのは寒くないのかと思っただけです」
「同じだろう」
「全然違いますよ」
提出物をそれぞれの目の前に割り振ったイグゼキュターが、珍しく雑談に口を出す。
「ソーンズさんはインナーシャツを着ないのですか? 何故」
「服の中に服を着るのが気持ち悪いから」
「なるほど」
イグゼキュターとソーンズの会話は無駄がなさ過ぎて、見ていると不仲なのではないかと錯覚しそうになる。しかし二人とも自分のペースで話しているだけなので、心配する必要はない。各々が自分の目の前のプリントに取り掛かる。単純作業のため、開始数秒でソーンズが口を開いた。
「お前たちは着ているのか。インナーシャツ」
「着ています。姉が問答無用で用意するので、着ない選択肢が存在しません」
「我も似たようなものだな。着ないと母親に怒られる」
「そういうものか?」
「言われてみれば確かに。私の家でも、インナーシャツを用意してもらうのでそういうものだと思って着ていました」
ソーンズはまだピンとこないようで首を傾げている。もしかするとインナーシャツを着るという常識は、母親や姉に世話を焼かれて身につくものなのかもしれない。いつだったか、ソーンズは女性の親戚がいないと言っていたことを思い出しながら、ズオ・ラウは自分の常識が相手に通じるとは限らないのだと学んだ。
「私もシャツの下にシャツを着る行為に疑問を持ったため、姉に目的を聞いたことがあります。主な目的は体温調節、汗対策、透け対策だと」
「透け?」
「女性の場合は下着、男性の場合は乳首です」
「あっ、いたっ」
イグゼキュターのあけすけな言い方に動揺し、うっかり紙で指を切ってしまった。声を出してしまったズオ・ラウに、ロゴスがおや、とおっとりとまばたきをする。
「絆創膏なら常備しておるぞ」
「ああ、いえ、大丈夫です。血は出てないので。ありがとうございます」
気恥ずかしい気持ちを誤魔化すように、ズオ・ラウは礼を言ってからそそくさと作業に戻る。それを見た他のメンバーも、各々作業を再開し、ついでに雑談も再開した。
「透けるか?」
「突起状なので、形が浮き出ることはあるかと」
「ベストを着ていれば隠せようが、そなたは着ていないからな」
「シャツ一枚なのは担任も同じだろう」
「ムリナール先生の乳首が透けていた記憶はありません。対策をしているのか、制服のシャツよりも厚い生地のものを着用していると考えられます」
(大真面目に何の話をしているんだ、この人たちは
……
)
センシティブな話題を大真面目に話すこの人たちがおかしいのか、それともこんなことで照れてしまう自分がおかしいのか。どうしても居心地が悪くてそわついてしまうので話しかけられないように作業に集中していると、イグゼキュターにおもむろに名前を呼ばれ、背筋を伸ばして返事をした。
「先ほどから発言していませんが。意見はありますか」
「え、いや、私は
……
」
「このような話題に慣れておらず、照れているのだろう。愛いやつだ」
「発端はお前なのに、何故照れる?」
「二人とも、からかってませんか」
イグゼキュターはともかく、ロゴスとソーンズは悪ノリしている。真面目そうな顔をして変なことをするのがこの二人だと、日直当番を通して学んできた。このまま発言を拒み続けてもからかわれるだけなので、ズオ・ラウは咳ばらいをして発言する。
「体温調整が必要なくても、透け対策はした方が良いと思いますよ。気づいても、指摘しづらいですし
――
」
「お前たち、会議があるから提出物は早めに持ってくるようにと伝えたはずだが」
ぬっと教室に入ってきたのは、担任のムリナールだ。いつもどこか疲れた様子のこの教師の催促の言葉は、怒っているというよりは困っているという印象が強い。誰が対応するか、と四人が目配せをする。ここは日誌担当のズオ・ラウが説明するのがスムーズだろうと小さく頷いてから口を開いた。
「日誌は書き終えたのですが、提出物のプリントが風で飛ばされてしまって、教科が混じったり並びがばらばらになったりしてしまったので、整理中です。まだ時間がかかるので、会議後に提出してもいいですか」
ムリナールは机の上の紙の束を見てから腕時計に目をやり、首を横に振った。
「会議がいつ終わるかわからないから、そのまま提出しなさい。並びがばらばらになってしまったことと他の教科が混じっているかもしれないことは、私から他の先生方に伝えておく。日誌だけここで確認する。提出物は職員室へ」
「はい。確認お願いします」
ズオ・ラウは日誌をムリナールに渡す。ムリナールは内容を確認し、担任確認欄にサインをして日誌をズオ・ラウへと返した。
「では、あまり遅くまで残らないように。さようなら」
「さようなら」
別れの挨拶をして去っていく担任の背中を見送って、生徒たちは今日の仕事は終わったと晴れやかに帰宅の準備をし始める。そんななか、ズオ・ラウだけが落ち込んでいた。
「
……
先生に聞かれたかもしれない」
「乳首談義のことか」
「ロゴスさん、その言い方は語弊を生みかねないのでやめてください」
「聞かれていたとしても、ズオ・ラウさんがが乳首が透ける話をしていたと特定できる要素はなかったと推測されます」
「そうだといいんですけど」
「お前たちの言う通り、シャツ一枚でも透けていなかったな。会議の予定がなければ、対策について聞きたいところだったが、惜しかったな」
「あの状況で観察していたんですか
……
?」
生徒に乳首の透け対策について質問されるなんて、ムリナールの心労を考えるとやめてほしいが、ソーンズなら本当にやりかねない。ズオ・ラウは心の中でムリナールの胃痛が酷くならないことを祈った。さっさと荷物をまとめて鞄を担いだソーンズが、事情はわかったと言い出す。
「周囲の配慮として透け対策をしろという話だな」
「うん
……
うーん? まあ、そういうことになります、かね?」
発端はズオ・ラウがソーンズがインナーシャツを着ていないことに驚いたことだったが、別にインナーシャツを着ることを強要するつもりはない。ただ、マナーとしての透け対策は必要だと思うので、首を傾げながらも、頷くはめになった。
*
一日限りの日直当番といえど、四人一組で作業しているため、おおよそ月に二回の頻度で日直当番が回ってくることになる。ズオ・ラウとロゴスがごみ捨てから帰ってくると、日誌担当のソーンズがちょうど書き終えたところらしく、盛大に伸びをしていた。シャツの裾からへそが見えている。ズオ・ラウはそれを見て、またインナーシャツを着ていないんだな、と思ったが、口には出さなかった。不用意な発言はしない方がいい。
「ソーンズ。前回の日直のときに話した、透け対策の進捗はどうだ?」
ズオ・ラウが発言しなくても、他の人が蒸し返すことはある。ロゴスは上品で育ちのよさそうな振る舞いとは裏腹に、こういうくだらない話題ではしゃぐのが、かなり好きな方らしい。それはソーンズも同じで、得意げに笑って嬉々として雑談をし始める。
「ちゃんとしてきたぞ」
話に積極的に混ざるつもりはないが聞き耳を立てていたズオ・ラウは怪訝に思った。先ほどソーンズが伸びをしていたときに、彼の腹が見えたばかりだ。実はインナーシャツを着ているが、伸びをしたときに一緒に裾が上に引っ張られて素肌が見えてしまったのだろうか。ズオ・ラウと同じ疑問を抱いたのか、イグゼキュターが端的な疑問をぶつける。
「先ほど裾から素肌が見えましたが、本当に対策しているのですか?」
そう突っ込まれることを待っていたように、ソーンズは笑みを深くした。
「透けを対策する方法は、何もインナーシャツだけではない。要は隠したい部分を隠したらいいんだろう」
ソーンズはとっておきの発明を発表するようにもったいつけて、得意げに言い放った。
「絆創膏で乳首を隠している。見るか?」
「やめてください」
「見なくても想像できるから見せなくてよい」
「それを見ることで、何かメリットがあるのですか?」
「ノリの悪いやつらだ」
すでに大きく開けている襟もとに手をかけたソーンズだったが、満場一致で否定されたため不服そうにため息を吐きながら手のひらを開いて「お手上げ」のポーズをした。脱がないことの意思表示らしい。
「見たくはないが、その結論に至った経緯には興味がある。何があったのだ?」
嬉々として掘り下げるロゴスに、ソーンズの瞳が生き生きとする。この二人がこの表情をしているとき、巻き込まれると厄介なアイデアを出し始めることがある。残る日直の仕事は日誌を担任に確認してもらうことのみなので、いざとなったら先に帰ろう。ズオ・ラウは自分の鞄を手元に引き寄せて、さりげなく教室の扉の方向へ移動した。その様子を気にした様子もなく、ソーンズは生き生きと自分がいかにしてこの結論にたどり着いたかを語り始めた。
「まず、『乳首が透ける』と現象だが、下着のようにシャツの下に着用している衣類の色が透けるのではなく、形が透けることが原因だ。つまり、乳首部分の凸を覆い隠せば対策になる。そう考えて真っ先に思いついたのはニップレスだった」
ソーンズの口から出た単語に、ズオ・ラウは思わず教室の外に誰もいないことを確認した。この時間に校舎に残っている者はほとんど部活動に専念しており、教室の周囲に生徒はいなかった。遠くから吹奏楽部が吹いているだろう、金管楽器の音が聞こえる。そんなのどかな放課後の教室で、猥談じみた単語が出ることは、ズオ・ラウにとっては大事件だった。年頃の男子だから、健全にそういうことに興味はあるし、まったくの無知でもない。しかしそれを堂々と発言するのはどうしても慌ててしまう。そんなズオ・ラウとは対照的に、真面目な顔をした三人は焦る様子もない。ニップレス、という単語で慌てるズオ・ラウの方が逆に意識しすぎている気がして、余計に恥ずかしい気がしてくるから不思議だ。
「ただ、ニップレスで検索すると、演出なのか、派手な色が多い。入れ歯の歯茎みたいな色のものをシャツの下に着けると、さすがに色が透ける」
「うむ。形が透けてなくても色が透けているのは少々面白すぎるな」
「あとは、ネタのために買うには高いからな。手に入りやすく、安価で、色も透けにくいものを考えてたどり着いたのが、絆創膏だ」
「インナーシャツを着た方が早いのでは?」
ズオ・ラウもイグゼキュターの言葉に同意だ。しかしソーンズは納得しないようで、ゆるりと首を横に振った。
「それは普通過ぎておもしろくないだろう」
誰しもが日常のすべてに面白さを求めているわけではないと思う。話のオチまで聞いたので、そろそろ帰ろうかと声をかけようとしたタイミングで、教室の扉が開く。全員が扉に注目すると、いつかと同じように、担任のムリナールが入ってきた。どう見てもだべっているだけの日直当番を見て軽くため息を吐くと、苦労人気質の教師は「日誌が書き終わったなら見せに来なさい」と言うだけにとどめた。彼はそのまま教壇へと向かい、引き出しを覗き込み、ペンケースを取り出した。教壇に置き去りにされていた忘れものだ。どうやらこの担任はなかなか日誌を見せに来ない日直当番の様子を見に来たのではなく、忘れ物を取りに来ただけのようだ。
ソーンズが書き終えた日誌を担任に差し出す。ムリナールはペンケースからペンを取り出してサインをする。教師から返された日誌を受け取ったソーンズが、質問があるんだが、と切り出す。
「敬語を使いなさい。何だ」
「先生はシャツ一枚を着るときに、どうやって乳首が透けないようにしていますか」
「
……
、
……
?」
ムリナールの眉間のしわが深くなる。真面目な顔をした生徒にとんちきな質問をされて、意図を受け取り損ねたのだろう。ソーンズがムリナールの戸惑いを感じ取り、背景情報を補足する。
「インナーシャツを着ていないことを指摘されて、乳首が透けると他の人も指摘しづらいから対策した方がいいと言われた。他の人はどうやって対策しているのか興味がある」
「敬語」
「あります」
とってつけたような敬語を返すソーンズに対して、ムリナールは言葉を探すように数秒宙を眺めた。そして視線をソーンズに戻す。四人の学生の視線がムリナールに注目する。
「普通に、インナーシャツを着なさい」
教師による当たり前の意見によって、男子学生のくだらない話題に決着がついた。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内